事前交渉?
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回やっと魔族登場です。
今回もよろしくお願い致します。
翌朝、即席宿舎を解体して目的地へと向かう。
腕輪の力で人力車の様な事を今日もやっている。
幸いな事に魔獣と遭遇する事もなく走り続けられた……
「ジン、もうそろそろ近いから降ろしてもらって私も歩くわ」
確かにこんなに爆走してるのが近付いて来たら警戒されるだろうから言う通りにしておこう。
「あそこに見えるのが目的地よ。
これから先は絶対私から離れないでよ」
しっかりと頷く…何が起こるか想像出来ないし、1人じゃ間違いなく揉め事に巻き込まれる。
見えたのはダークエルフの城と同じくらいの城だったが、雰囲気が違い過ぎる。
若干暗い……そして恐い、色々と今にも動きそうな石像も並んでいる。
誰の趣味かも解らないが気味が悪い……
ライラと2人で門の前にたどり着いた。
「私はダークエルフ領からやって来たライラと申します。
サンドラ殿にお願い事があって参りました」
ライラが大きな声を出した。
なんとか慣れてきたぞ、ライト程の大声でもなかったからそんなにビビらなかったしな。
門の向こうからライラの声を聞いて、門の上からひょっこり顔を出した爺さんが見えた。
直後扉が開いた……さっきの爺さんが走って来てるぞ、脚元大丈夫か?コケるぞ…あっコケた。
「ギリク殿大丈夫ですか?」
ライラが爺さんに手を伸ばし、爺さんは笑いながら手を取り立ち上がった。
「いやぁ、無茶して走ったらいかんですな、足がもたついて転んでしまいましたぞ。
ライラ様が見えたので嬉しくて年甲斐もなく走ってしまいました」
「そんな、こんな私にありがたきお言葉を。
あ…紹介します。私の連れで、ここまでの道のりを助けて下さったジン殿です」
「初めまして、新垣 仁と申します。
護衛としてライラ殿と同行させて頂いてます」
「お主は……人間か?なぜ人間がライラ様と一緒におるのだ?
ライラ様は連れと申されましたが、ワシはこやつを信用出来ませぬぞ」
人間ってこんなに嫌われてるのな……ちょっとがっかりするなぁ、現状を聞いていなければ気分を害しそうだ。
「ギリク殿それは私からもう少し詳しく説明させて頂きます」
ライラはここまでの経緯を話してくれている。
本当に前途多難だなこりゃ……
でも俺は人間敵対する道を選んでるんだよな、まだここの人間と出会っていないけれど、俺自身ここに来てずっと一緒にいるダークエルフに親近感は抱いている。
それに、種族を絶滅させる程の行為をただ見逃す様な人ではいたくないし、正直これを終わらせて帰りたいのも実状だ。
「話しは聞いたぞい、お主は召喚されてここに来た人間で間違いないのかい?」
「そうですね。こことは違う世界に住んでいましたから、それで間違いはありませんよ」
「そう言う事じゃったら先ほど言った事は取り消そう、ワシも人間には怨みがあるから素直にはお主の姿を見て許せぬが元々ヌシには関係ない話じゃろうからな」
「ありがとうございます。お話しをお聞きされたと思いますが、私はこの世界の人間がしている事は許せないと思っているのは本当です。
だからこそライラ殿に協力し、現状をひっくり返したいのです」
「お主の話しを信じてやりたいのは本当じゃが、心が否定するんじゃ。
すまないがワシはお主の動向を見てしか決めきれないかもな」
実際そうだろうな、戦ってる相手と同じ姿の俺を見て信じろって言われても絶対信じないだろう……
逆の立場であったとしたら俺は信じないもんな。
「とりあえずサンドラ様の元に向かいたいのですがよろしいですか?現状差し迫っているのでお願い致します」
「そうじゃな、では一緒に参ろうか。
それとジンと申したな、サンドラ様は大変人間族を嫌われてらっしゃる。
出会ってすぐに何が起きても文句は言うなよ」
冷や汗が止まんない……俺は死にに行くのかこれから…
何があっても良いように腕輪に力を借りれる様にしておこう。
ライラ達と交渉相手の所へ向かうが途中魔族の方々の視線が痛い……
魔族と言っても姿は人間とほぼ同じで肌の色が違ってるくらいかな、赤や青の人もいれば緑の人もいる。
後は角みたいなのも生えてる人もいるかなそれ以外は違いは見つけられない、あくまで肌の色の違う「人」だ。
子供にまで睨まれてる……人間が行った所業は聴いておこう、同情なんかじゃないが同じ人間を相手にするんだ。少し正気を失うくらいじゃないと出来ないかもしれないから……
城の中に通され、部屋の前で止められた。
「ジン殿、これから先サンドラ様が何をするのかはワシにも想像つかぬ、覚悟だけはしておくがいい」
ヤバイな脚が竦む……ここは処刑台か何かか?
ギリクがドアをゆっくり開ける。
中に居たのは…女の子?と思った刹那女の子が消え、目の前に現れる。
ヤバイ感じがする…首に何かが近付いている。
腕輪の力を使い勢いよくバックステップで躱す、離れて見た物はさっきの女の子が扇の様な物で俺の首を刈り取ろうとしていた。
それを確認した後またも女の子が消えてしまう……
どこだ?どこ行った?正面、そして左右にいないという事は上か!!
見上げると上空で風の魔法を放つ間際だった。
反撃する事は許されない、会話出来るとこまで避けるしかないんだ。
力を使い正面に跳ぶ、さっきいた場所は女の子の魔法で床がスライスされ落ちていく……
この戦闘で回避のみって辛くないか?
一瞬の油断も出来ない……またも消え去り次は右側面、扇の先から炎の玉だ4つ放たれる。
それをスライディングし下に避けるが、空中で炎が止まりこっちに向かって来る。
女の子はそのままの位置、つまり挟まれた。
下への回避は悪手だったな……
女の子は更に炎を4つ準備している。
手詰まりか?いや、まだだ……俺にはもう一つの力がある。
迫ってくる8つの炎……これをチェーンの力で「なかった事」にする。
次の瞬間、炎は消え去り女の子は驚いている…が、すぐに表情を戻し魔法の発動の準備をしている。
脚元から寒気を感じその場を離脱、自分が居た所から氷が湧きだしこっちに向かってくる。
これも誘導なのか……だったら…
腕輪の力で相手の視界から消えれば誘導出来まい、走れる場所は何も地面だけとは限らないぞ。
バックステップを行い、着地と同時に壁を蹴り上がる…それも視界で追うことが出来ないスピードで…
そのまま天井まで上がり、その位置から女の子の後方に壁を走って行く。
氷は追って来ない、女の子は同じ位置……後ろをとった。
女の子は見失った俺を探している様子だ。
ここまでの戦闘はものの10秒足らず、攻防自体が速すぎてライラ達は全く追えていなかったみたいだ。
ようやく呆気にとられていたライラが声を発する。
「お待ち下さいサンドラ様、彼がこの場所に居るのは理由があります。
それをまず聞いて下さい。それから彼の処遇をお考え下さい。」
「ワシからもお願いします。
彼は、彼の使命でここに居るようですから」
この女の子がサンドラ?つまり魔族の3番手の実力者だって?12歳位の女の子じゃないか!!
「一応話しは聞こうじゃないかしら、ところでどこに行ったのよ」
「すいません、後ろに居ます。
私からの話では信用出来ないでしょうから、ライラ殿からの説明をお聞き下さい」
サンドラは後ろを振り向きキッと睨みつけた。
「なかなかやるじゃないの…私の攻撃を全くの反撃もせずに避けきるなんて。
解ったわ……では、部屋に入りなさい」
やっと話に入れる……どうなるか解らないの最上級でお出迎えされたな。
後はライラに任せよう、疲れたよ……
お読みいただきありがとうございます。
誤字等で読みにくいところがあればご連絡下さい。
次回もよろしくお願い致します。




