交渉相手
まだまだ、魔族領移動編です。
今回もよろしくお願い致します。
さっきよりは少しスピードを落として走って行く、ただ速いと風の影響を受けて話しもまともに聞こえないから大変だったからだ。
「ところで、通常徒歩で行ったら何日くらいかかるもんなんだ?」
「だいたい4日くらいかしらね。
戦闘も含んでその位だから、今日はもうすぐ暗くなるし明日の昼ぐらいには着くんじゃないかしら」
だいぶ短縮出来るな、これだけ早く事が伝われば戦争前に戻れるかな?
勢いに任せて走り続けているけど、呼吸が荒くなったりしないな……もしかして、効力のお陰で体力的にはそう使わないのかもな。
通常これだけのスピードで走れば、息なんてすぐに切れてしまいそうなもんだが、体力的には歩いている位の感じしか使っていない。
ライラを抱えているのも腕輪の力で軽く感じるし、便利な力だと再度実感し直す。
「どこら辺で今日は休むんだ?
さっき言われた通り若干暗くなってきたからな」
「そうだね、あの岩の所なんてどうかな?」
ライラが指差した場所は森の近くにある岩を指していた。
確かに森の木々の密度は濃いためその場所から魔獣は出て来ないだろうし岩が大きい為、身を隠すのには最適だろうな。
「じゃああそこの岩まで行くよ。
方向変えるからしっかり掴まってて」
そう言うとゆっくり旋回して行き岩に向かって走り続ける。
少し手前で止まり、周りに魔獣が居ないか確認し岩へと近付く。
岩の背後まで回り何も居ない事を確認するとゆっくり腰を下ろした。
「着いたからってまだ終わりじゃないのよ。
今から土魔法で壁を造るから手伝ってね」
ライラはそう言い放つと魔力を篭めて土を隆起させていく。
なるほどね、これで上下左右を壁で囲うわけだな。
感心してる場合じゃないか、このままだと本当に真っ暗になってしまう。
ライラが造った土壁と同じ高さに壁を造っていく。
全体を囲い終わったら入口にドアを造り、通気口を造り内装にベッドと床を造れば完成だ。
こりゃあ結構しっかりした寝床が出来たな…と言うかもう野宿じゃないよな。
ライラは中を確認し、部屋の四方に小屋に置かれていたのと同じ様な水晶を置いていく。
「これに魔力を通せば周りに結界を造り、外からこの建物が意識から外される仕組みになっているんだ」
「なるほどね、それで小屋も奇襲を受けずに済んだ理由だ。
じゃあ同じ様に魔力を捧げていくよ」
結界も完成し、今から食事に入る。
ライラが手作りで、料理を始めた……
良いなぁこんな後ろ姿見ながらご飯造ってもらってれば、抱きつきたくなりそうだ。
ご飯が完成し頂く……まぁ美味い、安心出来る味だな。
「ところで、明日には到着する予定の魔族の交渉相手ってどんな人なのか教えてくれないか?」
「そうですね……この魔族領の3番手の実力を兼ね備えた方で、魔力量だけで言ったらこの世界で右に出る者はいないでしょうね。
何度かお話しさせてもらったけど、性格は明るい方で楽しかったわよ」
「交渉自体はやり安い相手みたいだな……でも、実際のところどうなんだ、上手くいきそうか?」
「そうね、あの方は大の人間嫌いらしいので協力してもらう事は期待が持てるでしょうけど……」
ライラが言いたい事はなんとなく解った。
俺の自体が危ういと言う事だ……大の人間嫌いの所に人間が行って交渉の場に立たなきゃならない。
交渉自体はライラに任せれば良いが、俺はその時に居れる場所はライラの隣しかない。
元々、魔族と人間は敵対関係にあるのに1人で放っておかれれば何が起こるか解らない……
だからライラに付いて行くしかないが、行く先は大の人間嫌いときたもんだ。
「自分で言い出したんだが、結構危ない事を請け負ったんだな俺って……」
「そうだな、しかしジンが居なかったらここまで来る事自体不可能な状況だったんだよ。
だから、我々は感謝しているしその事も相手方にも伝えて理解してもらう様に努力するよ」
結局成り行きに任せるしかないかな……
ライラも面識のある相手だろうから、よっぽどの無茶はして来ないだろうし
「なんにせよ明日は大事な日になるし早く休もうか、今日は戦闘で疲れたしね」
「そうね、じゃあおやすみなさい……」
どんな人なんだろうな……
魔族か…初めて会うし、恐い風貌じゃなきゃ良いな
次はようやく魔族と交渉になります。
次回もよろしくお願い致します。




