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賭けるもの

ようやく視力も回復し、城へと向かう。

幸い馬車は無事で、みんなで再び乗り込みタニアさんに見えなかった間の説明を聞いた。


「完全に僕は怒られてしまいます……」


「で、でも、そのお陰で皆さん助かった訳ですし、サンドラ様も鬼では……ない……筈」


タニアさんのフォローが、話している内にどんどん自信を無くしていく。


有難いけど、余計に怒られている時を想像して気落ちしましたよ……


そんな事を話しながら、ようやく僕達は城に戻る事が出来た。

何度も危険な目に会い、最後はダメかと思ったけど、無事に戻って来れたんだ。

これで、ジンさんが目を覚ましてくれて、サンドラ様からお叱りもなければ憂鬱になる事もなかったのに……


そのままの足で城に入り、ジンさんの元へ急ぐ……苦労して連れて来た小人達に早く助けて欲しい……その一心で城内を走る。



もうすぐでジンさんの部屋だ!

笑を浮かべ最後の角を曲がった瞬間に、今出会ってはいけない人物がそこに立っている。


「待っておったぞ……」


仁王立ちでサンドラが待ち受けていた。

その後ろにはリレイが苦笑いしながら立っている。

後で怒られる予定だったが、覚悟の決まっていないキャメロの前に現れたのだ。


「いやぁ……そうですかぁ……申し訳ないんですけど、サンドラ様…後でも構いませんかぁ?」


「そうかそうか……妾が待っておったのを(ないがし)ろにする訳か?」


「そう言う訳ではないんですがぁ……少々そこのお部屋に用事が……」


「死にたい訳だな?」


これ以上は逃げれないとは思うが、一生懸命に抵抗を試みるキャメロ……サンドラの魔力が廊下中を支配する。

キャメロの背筋に冷たい汗を感じた時には押し潰されそうな程に至っていた。


「すっ、すいませぇん!」


「妾の言いつけを守らず、妾が待っておった時間を無駄にしようと言うお前を許す?

許すものかこの馬鹿者が!運が悪ければお前達は全滅しておったのだぞ!妾達が戻って来ておったから良かったものの、救援すらなかった場合は、己の魔法で皆を死なせておったかもしれぬのだぞ!」


「だけど、あの時はあれが最善かって思ってまして……」


「まだまだ教え終えておらぬ魔法を使うからああなったのだ!

お前は、ジンが目覚める前に死にたいのか!」


「そんな事はないです……寧ろ生き残る為の手段として……」


「ならば逃げよ……誰も死なせぬ様に逃げるのだ。

意地を張るな、生き残らなければ先は無い……己が死んで哀しませる人の事を考えよ。

ジンだけではない、他の者もお前が死ねば哀しむ……関わってきた者がお前の死で、消えない傷を負う事だってあるのだ」


「はい……」


「生きる為に妾がもっと鍛えてやる……死ぬ様な目に何度も合わせながらの」


「鍛えてもらえるのは良いんですけど、死ぬ目に合うのはちょっと……」


「解ったかい!」


「はぁいぃぃいいぃ!」


「では、お前が行きたい所へ行くとするか」


サンドラはジンの部屋の戸を開き、中へと入る。

ビシッと姿勢を正していたキャメロも後を追って走り出す。


「全く……甘くなったものだ……」


キャメロに聞こえない様に、小さな声で呟くが、後ろにいたリレイには聞こえていた。


「元々お優しいですよ」


リレイもそっと呟くが、サンドラの睨みにより再度苦笑いを浮かべる事になってしまった。




ようやく中に入り、バッグの中に入っていた小人達を連れてジンさんに近づく。


「スッゴい剣幕で怒られてたッスけど、もう大丈夫ッスか?」


「う、うん……」


「しっかし怖かったッス……魔力で押し潰されそうになって、声を出す事すら出来なかったッスから……」


「へぇ……もう一度体験したいのかしら?」


「?って、うおぉおッスぅ!

そんな事はないッス……いや、お気になさらずッス、ただの独り言ッスからぁ」


「独り言にしては、話し相手がいた様だけど?

……まぁ、良いわ。初めて出会う小人族に、魔族の悪い印象を与えたくないから」


「ありがとッス!身長は大きくないッスけど、姐さんの心は広いッス」


「……やっぱり喧嘩を売ってるのかしら?」


「とんでもないッス!

僕らよりも大きいから大丈夫ッスよぉ」


いや……怖い……終わった筈の緊張感がもう一度襲ってくるのが……


「タ…タッタ、そろそろジンさんを診てくれないかな」


これ以上は耐えられんと思い、タッタに本来の目的をお願いする。


「そぉッスね。

姐さん申し訳ないッスけど、話しの続きはまた後でッス〜」


気が削がれたのか、サンドラは溜め息を吐いた後、諦めた表情で腕を組んだ。


ベッドの上に降り立った小人達が、ジンさんの傷を中心に調査している……3人は困った様な表情で顔を見合わせていた。


「どうなの?」


「う〜ん……これって治療とかの範囲ではないかもしれないッスね」


「どういう事……」


「魔力を使って状態を維持しようとしておる……」


「そぉッス……」


「つまり?」


「薬や魔法は弾いてしまうんス……結果治療が出来ないッス」


戸惑いを隠せない……治療が出来ないなんて……あれだけ頑張ったのに……


「妾も帰って来て気づいた……治療は出来ないが、方法はあるぞ」


「方法があるんですね!なら早くやりましょ!」


「簡単じゃないッス……この人の命も危うくなるッスからね」













今回もお読み頂きありがとうございます。

ご意見ご感想お待ちしております。


次回もよろしくお願い致します。

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