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朝食

トールが厨房で朝食を用意してくれている。

食堂に入ってからずっと美味しそうな香りがしているのはその為だろう……


「お待たせっ!」


「早かったね」


「スープはもう作ってあったからさ、それに複雑な料理は覚えて帰るのも大変だろうと思って、割と簡単なのを教えてもらってるから。

じゃあ、ゆっくり食べて」


そう言われてテーブルの上に置かれたのは3品、茶色で透明度の高いスープと生野菜とチーズの香ばしい香り漂うパンだ。


「美味そぉ……」


空腹が限界だった……だけど、ひとつ忘れている事があった。


「トール、悪いけど少食の3人の為の朝食も用意してくれないかな?」


「少食?……あぁ、解った。

用意しとくから食ってしまいな」


通じてくれたみたいだ。

食堂には他に厨房の中に人がいる為、堂々と小人達とは言いずらかった。

公にする事は禁じられていたからね……


「じゃあ、メロ君頂こうか」


目を見ると、まだなのかという表情で僕を見ていた。

しかも、顔を見るなり何度も首を縦に振っていたのだ……


「ご…ごめんね、いただきます」


最初はスープから口にする……水も何も飲んでいなかったので、口を潤したかったからだ。

口にスープを含んだ瞬間……澄んだスープとは思えない程の濃厚な味わいが広がる。


「スープうまっ!!

メロ君、スープ美味しい……」


話し掛けようとしたのだが、がっついている……これは邪魔したら機嫌を損ねてしまいそうだから、これ以上話し掛けるのを諦めた。


「スープ美味しいだろ?」


厨房で用意していたトールが話し掛ける。


「美味いよ……色んな香りが口の中で広がるんだ」


「茸とリザードからしっかりと出汁をとったスープなんだ。

こだわってるのが、リザードの肉の使い方だな」


「リザードってトカゲの様な魔獣の事なの?」


「そうだ……元々低単価で手に入る肉なんだけど、肉質が硬くて蛋白なんだけどな、その中でも調理では捨ててしまう程の部分を上手く使ってあるのさ」


教わってるのは節約料理なのかな……店の為には一番良いだろうけど。


「捨ててしまう部分?」


「リザードの表皮に近い部分は特に硬い。

その部分の肉を炙るのさ、そうする事によって茸だけでは出せない香ばしさと濃厚な味わいを出してくれるんだ」


トールが遂に手を止めて熱弁し始めた……興奮している理由は解らないが、美味しいものが出来上がってる事は感謝しよう。


「か…解説ありがとう。

他のも食べてみるよ」


手を止められたままだと小人達の朝食が終わらない気がしたので、とりあえず会話を一旦打ち切った。


次に生野菜に手を伸ばす。

フォークを使い口に近づけると柑橘系の香りがした。

そのまま口に入れると、生野菜から酸味のある香りが鼻に抜ける。


「これも美味いよ」


「だろ!

生野菜に酸味の強いレモンと甘みの強い種のオレンジの果汁を混ぜてかけてあるんだ。

野菜の味と併せて三重の楽しさを届けてくれる」


「う…うん、教えてくれてありがとう」


これは一個一個説明されそうな感じかな……黙って味わいながら食べようかな。


最後にパンだ……これはチーズをパンの上に乗せて焦がしてあるだけの様だ。

パンを手に取り頬張ると、チーズとパンの間にトマトの様なものが挟まっており、口の中に潤いを足してくれる。

なかなかトマトを温かい状態で食べる事はなく、新鮮に感じるよ……


何も言わずに口に頬張っていると、厨房の方から視線を感じる……

トールがこっちを見ながら説明したさそうにしている。


気づいてしまったけど、ここは黙って食べよう……これの説明は口の中で感じたから必要ないしね。


しばらく黙って食べていたら諦めて作業を再開してくれた。

少し悪い気もしたけど、説明を聞いてばかりだとなかなか食べ終わらない気がした……今日中に帰らなきゃいけないし、3人を待たせてるんだから時間かける訳にはいかない。

ゴメンねトール……






「お腹いっぱい……美味しかったねメロ君」


「……一気に食べたから胃がビックリしてるけどね」


「がっついてたもんね……お腹もいっぱいになったし戻ろうか?」


「僕はもう少し落ち着いてから戻るよ。

準備が出来たら部屋に行くよ」


「解った。

じゃあ後でね」


先に戻る前に厨房に近づく……3人の分を貰いに行った。


「トール美味しかったよ。

ありがとうね、少食さんの分は出来てる?」


「出来てるよ。

俺も準備が出来次第キャメロの部屋に行ったら良いかな?」


「それで良いよ。

なるべく早い方が助かるけど、片付けなんかもあるだろうから、終わってしまってからで良いよ。

少食さん達も今からな訳だし」


「了解、じゃあ後で行く」


トールとメロ君と別れて自室に向かう。

お腹いっぱいになり満足気な表情で部屋に入ると、死にそうな顔の3人が待っていた。


「遅くなってゴメン!」


「もぉ……死ぬッス……餓死するッスぅ……」


「ちゃんと持って来たからさ、落ち着いて食べな……」


手に持っていた食事が一瞬で消えると、小人達は既に食べ始めていた。


それだけの速さで動けるなら飢え死にしそうとは程遠いんじゃないかな……









今回もお読みいただきありがとうございます。

ご意見ご感想お待ちしております。


次回もよろしくお願い致します。

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