休息
「どうしよう……」
さっきまでの魔獣との戦闘で、相手を殺してしまう事に抵抗が無くなってしまっていたのかもしれない……当たり前の様に息の根を止めていた。
「こう言うのはどうかな?」
トールが何かいい案が浮かんだのか、全員に言い聞かせる様に話した。
「さっき僕達は虫に襲われてた……彼等もそれに巻き込まれて死んでしまったって事にすればバレないんじゃない?」
「だけど体の傷を調べられたらバレるよね……」
いい案かもしれないけど、相手の傷は明らかに人の仕業と判る様な傷ばかり。
僕の植物操作で倒した相手に至っては切り傷なんか全く無くて、完全に木で殴られましたと言わんばかりの打痕がハッキリ残っている。
「その点は大丈夫だと思うぞい」
馬車の中にいたガドさんが姿を現していた。
「どう言う事ですか?」
「これから森は虫の最盛期じゃ、好き好んで入る輩は少なかろう。
それに数日あれば綺麗さっぱり死体は片付けられておるじゃろうて」
「虫の胃袋の中って事ですよね……」
ガドさんはしっかし頷いていた。
後続の敵も居ないようだし、もしも帰って来ない彼等を探しに来られても、その時にはしっかり証拠は無くなっている。
死体とはいえ彼等が食べられるのを想像すると気分が悪くなってしまいそうだ……
「心配は無くなったって事でいいのかな?
みんなごめん……僕が急にカッとなって飛び出したから」
「メロ君が気にする事はないよ。
僕だってすぐに攻撃していたし……殺しに来てるなら殺される覚悟ってのがあって当たり前とかの理論だよ」
「キャメロ君……この場合慰められてるのか解らないんだけど、一応ありがとうね」
「さすがにクタクタだね……アガートさん、馬車をお願いしても大丈夫ですか?」
「任せとけぃ!
この中で俺が1番まともに戦ってないからな、それくらいの事はするさ」
「ホントね……じゃあ、アガートはしっかり働いてね」
リターナさんの慣れた扱いでみんなに笑みが戻った。
馬車の中に戻り、全員が死んだかの様に一斉に眠りについた……
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キャメロが起きたのは馬車が止まった時だった。
目を覚ますとウィリアムの自宅に着いていた……周囲は少し暗くなり始めていたのをみると、僕達が振動等で目を覚まさない様に馬車を操っていたのだろう。
「みんなぁ〜着いたぞぉ〜」
馬車の運転席からアガートさんの声が聞こえてきた。
みんな疲れた体をだらしなく動かし一同馬車から降りた。
「アガートさんありがとう……お陰でゆっくり休めたよ」
「気にすんなって、こういう時こそ助け合いの精神さ」
「あなたが言うと、どうしても恩着せがましく聞こえるのよね。
可哀想にねアガート……」
「じゃあ貸1って事で……」
「調子に乗らない!」
やり取りが終わる頃には馬車から全員降りて来ていた。
小人族の3人は僕のバッグの中に入ってもらってる……狭くて揺れは激しかったろうからゆっくり寝ぬれなかったかもしれなかったし、今日は彼等も色々と大変だったろうから、起こさない様にして休ませてあげよう。
かく言う僕も、少しは睡眠をとったとは言え疲労はそこまで回復出来ていない様だしね。
「じゃあこの後は各自自由って事で……僕はボロボロだからもう休ませてもらうよ」
「キャメロ君と同じく僕も休むよ……」
そう言って各自別れた。
僕はガドさんにお礼を言うと、用意された部屋へ真っ直ぐに向かった。
部屋に入り、3人が入ったバッグをそっと下ろし、ベッドに倒れ込むとすぐに意識を失った……
次に目を覚ました時は朝を迎えていた。
起きた理由は空腹……昨日作ってもらった食事以降何も食べていなかったからだ。
ゆっくり起き上がると、何かが動いているのが視界に入った。
「アンちゃん起きたッスね」
「あぁ、おはよう……早いね」
「お腹がペコペコなんッスよ」
「僕も同じだよ……何か食べ物を貰いに行ってこようか」
「お願いッス……ずっとお腹が鳴りっぱなしで餓死しそうッスよ」
「解った。
ちょっと待っててね」
タッタと呼ばれていた彼と僕の為の食料を頂きに食堂に向かう。
食堂に向かう途中、メロ君の後姿が目に入った。
「メロ君おはよう」
「おはようキャメロ君、君も目的地は一緒みたいだね」
「だね……お腹が限界だよね」
「さっきアガートさんとリターナさんと会ったけど、既にご飯を持って行ってたよ。
あの2人もそのまま眠ったらしいから」
「トールは?」
「中に入れば解るよ」
メロ君と食堂に入るとエプロンを着けたトールを見つける。
厨房の中で料理を作っていた。
「トール……何してるの?」
「おはよう2人とも!
ここの飯が美味かったからさぁ、作り方を教えてもらえないだろうかって昨日聞いたら教えてくれるって言ってくれたから、教えてもらってるんだ」
「げ…元気だよね……」
「僕も同意見だね……」
「飯が欲しいんだろ?
待ってろよ、教わった料理を試してみっから」
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