刺客
満身創痍のみんなに急いで何かの存在を伝え、急いで回復する様に促す。
敵とは限らないのだが、念の為だ……
「とりあえず馬車から降りて前方に居る相手を見つけて!」
馬車は止まりみんなは降りて索敵を行う。
僕自身は動いてしまうと探知が使えないから残ったままだ。
「いたよ!」
見つかってしまい奇襲を諦めたのか、森の中から10人程がぞろぞろと姿を現す。
「やっぱ見つかっちまったろ?
元々俺らはコソコソすんの苦手なんだから、堂々と襲えば良かったんじゃね?」
「戦い終わって疲れてるとはいえ手練だ……用心するにこした事はないだろうが」
声を聞いて急いで外に出る。
姿を現したのは魔族の若い連中だ……
「襲うって事は、アンタ達がトールを狙ってるやつだね?」
「あぁ……そうだよ……殺す様に指示されてるからね」
連戦で疲れきっているこんな時を狙って出てくるなんて……最悪だ。
「しっかし、メロが何でそっち側にいんだ?
オヤジから聞いた話しだと、俺らに協力する事になってたんだけどよ」
「お前らみたいに父親の権力振りかざして偉そうにしてるやつとは違うんだよ」
「なんだそりゃ……じゃあ敵って事でいいんだな?」
「当然」
「帰ったらお前のオヤジは失脚させられんなぁ!
お前んとこの家も終わりだ!」
「……帰れると思ってる方が間違いだよ」
メロから恐ろしい程の殺気を感じる……相手は余裕な顔で無防備に立っている。
よっぽど強さに自信があるのかもしれない。
「メロ君……」
「殺るよ……トールを守るのも、ここに来る前に決めた事だからね」
そう言った次の瞬間にはメロ君が視界から消えていた。
そして、余裕ぶって話していた相手を吹き飛ばした……
「そんなに無防備だとすぐに終わるね……」
敵の目の前に立ったメロ君は、先程から放たれる殺気を纏いながら笑みを浮かべて言葉を放つ。
その言葉に怒りを露わにし、メロ君に向かって襲いかかる。
メロは颯爽と攻撃を躱し、敵の背後に回る。
敵の視線が背後に回った瞬間、一斉にこちらも攻撃を開始する。
最初に攻撃したのはシュートだ……メロと同様一瞬で敵に近づき背後から斬りつけた。
意識がこちらから離れた隙を見逃していなかったのだ。
先程の虫との戦闘でも1番多く倒したのも彼だった……さすがに勇者の仲間だった人材だ。
そのままその場で次の敵に斬りかかっていた……
続いて攻撃に移ったのはキャメロ、周囲の木々を利用し足を掴み頭上から頭を叩かせた。
喰らった相手の首はあらぬ方向に折れ曲がり、確実に相手を屠っていた。
少し遅れて攻撃参加したのがリターナだ。
シュートとキャメロの攻撃に意識を取られている間に接近……相手の中で1番巨漢な者の頭に刺突、一瞬で終わらせた。
アガートはトールを守る様な形で前に立ち、相手の攻撃に備える。
その後ろでトールは攻撃する時を待っていた……戦い慣れていない分、3人が攻撃した機を見逃してしまっていた。
シュートとリターナは相手の中に入って交戦、メロは正面から複数の敵と対する状態、キャメロは離れて援護を行う。
「クソッ!
コイツら手負いじゃなかったのかよ!」
メロに向かっていた中の人物が、目の前の現状の見て口を開く。
「手負いでも十分に勝てる程の実力差って事だよ……」
「お前なんか回復系の魔法しか使えなかったじゃねぇかよ!」
「使ってなかったからね……父に利用されるなんて御免だからさ、アンタ達みたいにね」
「ふざける……」
相手が話し終わる前に、風を使い首から切断……向かっていった相手を次々に倒していった。
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「君で最後だけど、何か言いたい事はある?」
戦闘は圧勝……元々そこまでの実力がある相手ではなかったのか、キャメロ達が強かったのか、怪我ひとつ負うことなく終わった。
「お願いだ……俺はオヤジの言いつけで手伝っただけなんだよ。
頼むから助けてくれよ」
「じゃあね……」
メロはそう言うと、表情ひとつ変える事なく最後の相手の息の根を止めた。
「みんなありがとう……」
「礼を言われる事もないよ。
君が一緒に来るって決まった時から、戦う事も引き受けたんだからさ」
「でもメロ君良かったの?
知り合いみたいだったけど……」
「いいんだ……昔から嫌いな連中だったから。
それに顔見知りばかりだったから解った事もある……お偉いさんのほとんどがトールの命を狙ってる」
「もしかして、殺したら不味くない?
終わってから聞いたから、現状はどうしようもないんだけど……」
「……確かに」
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