虫の追撃
小人達はしばらく離れて話し合いをしていた。
3人が話し合いの結果納得したようで僕の方に近づいて来る……
「僕達がそこに行ったとしてッスね、出来るだけ存在自体を公にしないって約束してもらえるッスか?」
「そうだね……僕から言いふらす様な事は絶対にしない」
「お願いするッス……僕らの所為で、小人族の存在が危ぶまれる様な事態になるのは避けたいッス」
「解った……君らの存在を目にする人にも説明する。
その上で口止めを約束してもらう」
「絶対だからッスね!
族長にバレたらどうなるか解んないッスから……もしかすると最悪殺されるッス」
「わ…解ったって……
じゃあ、残りの2人も相違無しって事で良いかな?」
後ろにいた2人も頷く、合意は得られたようだ……
「そうなら急いで出発しようか、いつここ虫達が襲って来るか……」
そう言っていた最中、周囲にいくつもの魔力反応がする。
またも虫達が集まって来ている。
「猶予はなさそうだ……既に近づいて来ている。
3人とも僕に掴まって、下まで一気に降りてきて移動するから」
「近づいて来てるってどうして判るッスか……って聞いてる暇すら無さそうッスね」
余程僕の顔が強ばっていたのか、表情からそれを読み取ってくれた。
「ごめん、急ぐよ!」
そう言うと一気に3人が僕の背中にしがみつく……
「しっかり掴まったッス!」
言葉を聞いて急いで降下する。
下で待っていたお爺さん……ガドさんに状況を説明、急いでこの場所を離れる。
少し離れたのだが、虫の移動する音が自分達から離れない……どうにかして追跡している。
馬車まで近くなったのかガドさんが何かを伝えようとした時、左右から蜂の魔獣とムカデの魔獣が現れる。
少しは慣れてきたとはいえ、走りながらでは集中出来ず探知は難しく使っていなかった。
ガドさんを助けようと動こうとするが、ガドさんから虫の位置が近すぎて間に合わない。
幸い1匹なら倒せそうだが、両方が毒を有した魔獣であり、片方でも攻撃されてしまえば命に関わる。
考えている時間はないみたい……ガドさんごめん!
キャメロは魔獣を攻撃せずに衝撃波を放ちガドを前方に吹き飛ばした。
これで魔獣との距離が開き、ガドが攻撃される事は無い……そのまま2体を倒してしまえば大丈夫だ。
2体の魔獣に攻撃しようとした時、魔獣は動かなくなっていた。
「危機一髪って感じ?」
虫の後ろからシュートとリターナさんが顔を出す。
「でしたよ……ってガドさん!」
2人に礼を言う前に、吹き飛ばしたガドさんの元へと駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「急に吹き飛ばされて焦ったわい……」
「すいません……急に魔獣が現れたもので、怪我してませんか?」
「吹き飛んだ後の擦り傷くらいじゃ、大した事はないぞ。
そんな事より、まだ虫が追ってきよるぞ!」
「ですね……急ぎましょう!
シュート、リターナさん、急いで馬車で動きましょう」
4人は急いで走り出す……怪我をしているガドさんにシュートが肩を貸している。
「まだ虫がいるのか……さっきも大量に倒したのに」
「馬車の所にも現れたの?」
「気持ち悪いくらいにね……全滅させてたけど2匹逃げられて、追ってきたらさっきの場面だったって感じかな」
「そう……」
予想以上に虫の数が多いみたい……馬車に乗ってすぐ移動は出来ないかもしれない。
「疲れてるだろうけど、馬車まで行ったら安全を確保出来るまで虫を倒そう」
「「了解!」」
少し走った後、馬車にたどり着く。
急いで馬車に4人を乗せて虫の襲来を待つ……
キャメロは急いで回復薬を飲み干し、植物操作で視界を広げる。
「みんな疲れてるだろうけど、力を貸して!」
皆が前方より現れる虫達との戦いに備える。
広げた視界の向こうからウジャウジャと虫達が姿を現す……気色の悪い虫の音が近づいて来ていた。
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「もう無理ーーーーー」
トールが大声を出して、大の字になって地面に転がった。
ようやく全ての虫を倒し終わったのは1時間程経過した頃だった。
「全部終わったよね……急いで移動しようか。
僕も魔力がほとんど残ってないよ」
メロ君も後方から僕と一緒に魔法で援護していた。
数が数なだけに2人の魔力はゼロに近かった……
みんながゾンビの様に馬車に乗り込み、馬車を守る為に下がっていたアガートさんは少しみんなより体力が残っている様で、馬車を動かしてくれた。
これで周囲に脅威は無くなったと思ったが、念の為回復薬を飲みながら探知を行う。
虫が来ていた方向からは何の反応もない……一応前方にもと範囲を向けた瞬間に複数の反応が……
「みんな急いで回復して!
まだ何かいるよ!」
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