小人族
目が合った小人が、ヨダレを垂れ流しながら何事もなかったかの様に芋をガン見しながらゆっくりと窓を閉める。
それならばともっと風を集中的に送り込む……すると、中からさっきの小人を止めようとする声が聴こえてくる。
我慢しなくていいんだよぉ……出ておいでぇ……
心で悪魔の誘惑に似た声を発する。
意地が悪いのは解ってるけど、会話する為に顔を出させるにはこれが効率良さそうだし……
そんな事を考えていると、中から大きな声が聞こえる。
「自分何なんッスか!
美味そうな臭いさせて誘き出して、僕らをどうするつもりッスか!
美味しい臭いが……臭いがぁあぁ!」
「ごめんね。
こうでもしないと話してくれなさそうだったから……危害を加えるつもりはないんだ。
良かったら窓を開けて話しをさせてくれないかな?」
「そんな甘い言葉には応じ……ない……ッス……甘い……甘い芋の香りがぁ!」
「本当だって、開けてくれたらこの芋をあげるから……」
「いーもーーーーーちょーだいーーーー」
わぁ……すんなり開けてくれたよ。
開けた小人の後ろで、それを静止しようと2人の小人が引っ張っていたが2人も観念したのか、諦めて彼を離した。
「そへで……なむもほうっふか?」
渡した芋を頬張りながら話し始める。
けど、頬張り過ぎて何を言ってるかも解らない……
「食べ終わってからで良いよ……」
「タッタ、お行儀が悪いッスよ。
ちゃんと口の中の物がなくなってから話すッス」
「う……うん…っと、飲み込んだッス。
それで、何の用ッスか?」
「えっとね……」
僕のお願いから話したものか、それとも現状を話した方が良いのかなぁ……
それよりも、ずっと顔を上げて見上げているお爺さんを紹介した方が良さそうだ。
「そこから見えるかな?
下で見上げているお爺さんと一緒にここまで来たんだけど……」
そう言うと、さっきまで芋を頬張っていた彼が下を覗く。
「ガドさんじゃないッスか!
おーーいガドさーーん」
お爺さんの名前を聞いてなかったな……ガドさんって言うんだ。
ってか多分聞こえてないと思う。
小さい体とは思えない程の大きな声を出しているんだけど……
「多分こっからだと声も聞こえずらいかもしれないね」
「そうッスね、ガドさん耳が遠いから」
「それでね、ここに来た理由は2つあってね。
ひとつは僕のお願い事があってガドさんに付いて来たんだけど、現状それをお願いしている場合じゃないかもしれなくなったから……」
「虫の事ッスよね」
「そう……僕は知らなかったんだけど、今の時期に来る筈のない虫がここに来てるんだって、君達に危険が迫ってるかもしれないからって急いで来たんだ」
「そうなんッスよ……僕達もそれで動けないでいるんッスよ」
「ところで、ここに居るのは君達3人だけなの?」
「……取り残されてしまったッス」
タッタと呼ばれた彼の後ろから別の少年が顔を覗かせ説明を続けてくれた。
「私達は食料を集める係で外に出て食料を探してたッス。
そしたら急に森が騒がしくなっていて、何かと思えば虫の大群が見えたッス……
それはもうもの凄い量で、それからしばらくは虫に見つからない様にとずっと隠れて、隙を見計らってここに戻って来たッスけど……
みんな出て行った後だったッス」
「君達がここに居て安全だったんだから、ここに残った方が良かったんじゃないかな?」
「それは無理ッスね……あんな虫が大量にいる場所で、一族の食料を確保する事なんて出来やしないッスから」
「それはそうだね……それで君達はこれからどうする予定なの?」
「今更みんなを追い掛けても虫の餌になるのが関の山ッス。
なんとか食料を探して、みんなが戻って来るまで食つなぐって思ってたッスけど、現実的には不可能ッスね」
「それなら僕と一緒に来ない?」
「行くって言ったって外の虫に襲われてしまうッス!」
「じゃあ、僕はどうやってここに来れたんでしょう?」
「……でも……いやいや、お兄さんはそんなに強そうに見えないッス」
「それでも一応倒して来たんだけどね!
君達の安全は僕が確保する、だからひとつ条件を聞いてもらえないかな?」
「条件ッスか?」
「そう……本来の目的はそっちの方だったんだよ。
君達は治療が得意な種族って言うのは合ってる?」
「そうッスね。
それとの交換条件でドワーフさん達にお世話になってるッスから」
「その腕前を信じて救って欲しい人がいるんだ……診てもらえないかな?」
「その人は近くに居るんッスか?」
「今はダークエルフの城だよ。
足を運んでもらわなきゃいけない、その間は君達僕達の領土で暮らしてもらう事なると思うけど」
「僕達は出来るだけ他の種族と関係は結びたくないんッスけど、そうでもしないと飢え死にしてしまいそうッスから……
少し3人で話し合ってもいいッスか?」
「あんまり時間は無さそうだけど待つよ」
腕前は判らないけど、来ないって言い放たれるのと話し合いをして考慮してもらえるんだったら違う。
とにかく小人族を見つけようって作戦までは上手く進んでる
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