理解
「お爺さんの言う事は間違ってませんけど、僕は助けなきゃいけない人がいる!
だから諦める訳にはいかないんだ」
「お前さん……小人族に何を期待しておるんじゃ?」
「僕がお世話になった人が目を覚まさないんだ……ダークエルフではこれ以上の手立てが無くて、バズさんに聞いたらもしかするとって言ってたから」
「バズの知り合いなのか?」
「知ってらっしゃるとは思いますけど、現在バズさんとダグさんは城の近くの宿舎に住んでらっしゃいます。
意識が戻らないジンさんの見舞いに行ってる時に会いまして」
「そうか、バズの知り合いなのか……」
「キャメロ君」
急に背後からメロ君が声を掛けてきた。
子供達に囲まれていたのに、今は1人の年配の男性と一緒にいる。
「メロ君何かあったの?」
「ようやく動ける様になったからさ、まずはザガさんに話しを聞こうと思って探してね。
見つかって話しを聞いたらそこの方が詳しいって聞いたんだ。
それで話しを通してもらう為に付いてきてもらったんだよ」
「ザガ……教えるのか?」
「ワシらの恩人である方の為らしい……恩人の為ならワシらだって協力せねばなるまい」
「お爺さんお願いします!
教えて下さい」
「ふむ……ワシらの村の代表であるザガが言うのであれば教えねばなるまいな。
話してやるのは良いが、ここでは人が多過ぎる。
場所を変えて話しをするとしようかの」
「ありがとうございます」
「だが、付いて来るのはお前さんだけじゃ」
お爺さんは僕を指差ししている……
「僕だけですか?」
「そうじゃ、小人族の情報はワシらドワーフの中でも公にするものではない。
ザガですら知らぬ事なんじゃ……それを他種族に教えるんじゃぞ、1人だけにしてくれ」
「解りました。
メロ君行ってくる」
「僕から事情は説明しておくから、終わったら食堂に来なよ」
軽く頷きお爺さんの後ろを付いて行った……
しばらく壁沿いに進み、敷地の1番奥まで進んだところで立ち止まった。
「ここでいいじゃろ……ワシが今から話す内容は仲間にすら話してはならぬぞ、良いか?」
「はい……」
「それでは最初に彼等の事について話しておこう。
小人族は人と関わるのを好かん……だが、ワシらドワーフとは交流をもっておった」
「ドワーフとだけってどうしてですか?」
「彼等が唯一困る事があったんじゃ」
「それって、バズさんが言ってた金属を加工する事が出来ないって事ですか?」
小人族の話しの中で、バズさんが鍛冶を頼みに来ていたって事を思い出した。
「その通りじゃ……彼等は名前の通り小さい、彼等が安定した火力で金属を加工しようものなら金属ごと体が入ってしまう。
それでワシらに協力して欲しいとなったのじゃ……そして、見返りとして彼等の得意である治療を施してもらうと言う事でまとまった」
「でも、どうして他種族と関わるのが嫌いなんです?」
「嫌いと言うより、生活する上で邪魔なのじゃ……本来、森の中で生活しておる小人族なんじゃが、人が生活の為に森を破壊していく。
すると、今まで生活しておった場所がどんどん狭まってしまうじゃろ」
「生活する場所を僕達が奪っているって事ですね……」
「その通りじゃ……人が増え続ければ仕方のない事かもしれんが、小人族の存在を知らぬ者にとっては森の木を薙ぎ倒し、森を狭める事など気にも留まい」
知らない間に相手の生活する場所を奪っているなんて……それならどうして姿を現して、自分達種族を認知してもらわないんだろう?
「お前さんの言いたい事は解る……どうして姿を現さないのかじゃろ?
そう出来ればしておるさ、小さき種族故にどの種族よりも弱い……人間族が他種族を攻めて占領しておる今、姿を現したらどうなる?」
「真っ先に狙われてしまうって事ですか……」
「そうじゃ、間違いなくそうなるじゃろう。
だから種族が存在しておる事すら明るみにせぬ」
彼等も人間族の被害者と言う事か……
「僕達が行って会ってもらえるんですか?」
「お前さん達だけじゃ無理じゃな、だからワシも同行させてもらう」
「え!?」
「なんじゃ……不満なのか?」
「不満とか何もないですけど、小人族の住んでいる場所まで馬車で行けるんですか?」
馬車で行ければ良いけど、森で生活しているって事を聞けば、もちろん歩きが確定だろうと思ってた。
そうなった場合にお爺さんを担いで行く事になると思ったのだ。
「馬車で進めない場所にあるぞ、それがどうした?」
担いで行く事が確定した瞬間だった……
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