行先
城から出発した僕達が最初に向かうのが、ウィリアム様の自宅だ。
ウィリアム様から出発直前に1番に集合場所に着いていたメロが手紙を受け取っていた。
その手紙を見せれば休ませてもらえるって聞いた……ウィリアム様は色々と僕が知らないところで協力してくれていたし、自宅に泊めてもらう事まで手配してくれるなんて……感謝してもしきれない。
それと、そこにはドワーフ達も居るみたいで、着いて休むまでに情報収集もしとかなければならない。
何と言っても小人族の情報がほとんど無い様な状況……最低どこら辺に居るか何か聞ければいいけどなぁ……
しばらくは馬車での移動、真っ暗になる前には最初の目的地まで着く予想だけど現状が現状なだけに色々と警戒しながらの移動となっている。
少し遅くなるかもしれない……最初の約束の通り猶予は5日間、今日の移動を入れて捜索出来るのは約2日程、短い期間だけどやり遂げなきゃいけない事なんだ。
少しでも時間を無駄には出来ない……とりあえずはドワーフ達から居場所を絞り込める様な情報聞き出さなきゃ。
初日の移動は難なく進み、予定通りにウィリアム様の自宅に着いた。
まだ明るかったお陰か魔獣に襲われる事もなく無事に到着。
到着してすぐに執事の方が現れ、手紙を渡すと中に通してくれた。
着替えだけを馬車から下ろし、部屋の中に置いた。
「皆様お疲れ様でした。
早速ですが、ご夕食を用意します……ただ少し準備に時間が掛かりますので、少々お待ちいただければ助かります」
「お構いなく……僕達はドワーフの方々に用事がありますので、ゆっくりで大丈夫です」
「かしこまりました。
それでは用事が終わられましたら食堂の方にお越し下さい。
食堂の場所は……」
「大丈夫だよ……僕が解るから」
「では、メロ様にお任せしてもよろしいですか?」
「以前もお世話になったからね。
みんなを連れてくるぐらい問題ないよ」
「ありがとうございます。
では、私は失礼致しますね」
笑顔で一礼し、執事の方が奥に移動して行った……
「疲れてらっしゃる方もいるでしょうけど、本来の目的である聞き込みを開始しましょうか」
ここに来た本題、小人族の現在を知っている人を見つける事……バズさんのお父さんが知っていそうな話しだったので、その人を最初に探して手掛かりを見つける事だ。
早速移動しドワーフの方々の仮住まいを訪ねた。
到着すると、メロ君の顔見知りのドワーフ達が集まって来る。
特に少年少女が多く集まっていた。
「メロ君囲まれてしまってるね……」
「あの人はドワーフに何かしたの?
みんなに感謝されてる様な感じなんだけど」
リターナさんの意見は全うだ……元々ドワーフはどこの種族に偏らず、中立を保っている。
「この前ウィリアム様のお供で着いて行った時に、捕まっていたドワーフ達を助けたんだ。
とは言っても、主として助けたのはジンさんだったけどね」
この前ジンさんが行った時の事か、メロ君が同行していたのは初めて知った。
「まぁ、僕達は僕達で聞き込みをやろうか」
メロ君と離れて聞き込みを開始する。
みんながそれぞれに別れて話しを聞いて回る……
しばらく聞き込みをしていたが、思った程の情報が出てこない。
知ってはいるみたいなんだけど場所まで知っている人はいなかった……
誰か聞けてるかなぁ……バズさんも詳しく知らないぐらいだから、それ位の年齢の人じゃ同じ様な答えしか返ってこないだろうし……
もう少し高齢の人を見つけて話してみよう。
少し離れた場所に老人の方が座っている。
期待を抱きながら近づいて声を掛ける……
「すいません。
少し聞きたい事があるんですけど大丈夫ですか?」
「あ…あぁ?
すまんが、聞きとれんかった。
もう一度言ってくれんかの」
耳が遠いみたいで少し声を張って話し直す。
「聞きたい事があるんですけどいいですか?」
「おぉ……えぇぞ。
なんじゃい?」
「小人族をご存知ですか?」
「知っとる知っとる。
昔はよう村に来てたもんじゃが、最近は見なくなったなぁ……」
「ちなみに、どこら辺に住んでるとかって判ります?」
「住んどる場所か……大体なら知っとるが、あヤツらは同じ場所に定着して住まんからのぉ」
思っていた通り高齢の人だと知ってるんだ!
良かった……これで進展するぞ。
「大体で構いませんから教えて頂くわけにはいきませんか?」
「……教えれんの」
「え?
どうして……」
「見ず知らずのもんにどうして教えねばならんのじゃ?
それに、あヤツらが居場所を変えて生活しておるのは、誰にも見つかりたくないからなんじゃ。
それを知っておいて教えると言う事は、ワシがヤツらを裏切ったのと同じとは思わんかね」
おじいさんの言う事は間違ってない……だけど、僕達は絶対見つけなきゃいけないんだ!
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