新兵器
出発の為に宿舎に戻り準備を始めた。
探知の技術はまだまだだけど、行きながらでも修行しなきゃ間に合わない。
それと、バズさんにおおよその場所を聞いてこなきゃ解らない。
ひとまず宿舎での準備を終え、ダグさんの元へと急いだ……
バズさん達の部屋に行ったのだが不在……もしかしたらと思い、工房に行ってみると中から大きな声が聞こえてきた。
やっぱり工房に居たんだ……考案している武器の事で行動していたからね。
工房の扉を開き中に入る……バズさんとダグさん、それと知らない女性が居る。
「おぉ、キャメロじゃねぇか!
ちょうどいい時に来たな、今しがた言ってた武器が出来上がってな」
「大砲を元に考えていたってやつですよね?」
「そぉなんだ……いい案が思いつかなくてよぉ、ダグが彼女の事を思い出してくれて、一発解消よぉ!」
「彼女ってそこの方ですか?」
「ミリーちゃんって言うんだ。
こう見えてすげぇ事出来るんだぞ」
「こう見えてってどう言う意味ですか!」
「すまねぇすまねぇ……とりあえずこれ持ってみ」
「これは?」
「噂の新兵器ってやつだ」
握り手があって、その上に丸い物が付いている。
そこから筒が出ていて真ん中に穴が空いている。
「これってどうやって使うんですか?」
「そいつの丸いところに何でもいいから魔法を込めてみろ」
魔法を込めるって……ひとまず言う通りにしてみよう。
水魔法を発動し丸いところに当てると、魔法が吸い取られていく……
そして、丸い場所が光り出す。
「うわっ!
これってどうすれば良いんですか?」
「オイラが盾を構えてるから撃ってみ」
「撃つって言ったってどうやればいいか……」
「もう少し魔力を込めてみてください。
そうすれば吐き出してくれます」
吐き出すってどう言う事なの?
よく解らないまま言われた通りに魔力を込めると、光が増していく……そして次の瞬間、僕の腕に大きな衝撃が起こると同時に壁に穴が空いた。
「盾を狙えって言ったのによぉ……」
「ちゃんと説明してくれなきゃ危ないじゃないですか!
そもそもこれって何なんです?」
「その丸い中にはスライムが入ってんだ」
スライム!?
どうして魔獣が中に入っているんだ?
「それでな、スライムは何でもかんでも食べちまう性質でよぉ、ミリーちゃんが言うには物質と違って魔力は自分に溜め込めないんだとよ。
一定量を超えるとそれ事吐き出しちまうらしいんだ」
「吐き出すって言っても、恐ろしい速さで吐き出されましたよ!」
「ここからは私が説明しましょう。
このスライムの中には魔骨石が入っています」
「魔骨石って魔獣の魔法の元になってるって言うやつ?」
「はい、元々スライムには魔骨石は無いんですが、無理矢理食べさせてしまうとその属性だけを消化してしまい、どの属性にもなっていない魔骨石が出来上がります」
「スライムにそんな事が出来るんだ……」
「そうなんです。
それを利用して素の魔骨石を作ると、込めた魔法によって一旦属性が変わり、時間が経った後に魔力を使わなくても魔法を放つ事が出来ます。
例えば、回復魔法を込めておいて危なくなった時にいちいち回復薬を使わずに、魔骨石を体に当てれば回復魔法を発動する事が可能になるんです」
「画期的な事は解ったけど、魔法をあんな衝撃で吐き出す理由は……」
「それはですね、スライムの習性です。
ある程度の物質は消化出来るんですけど、魔力は別で全く吸収出来ないんです。
それを体内に溜め込み過ぎると破裂しそうになるんです……だから早急に体内から吐き出さなければなりません。
それは感じてもらった通りですね」
「それって、ここに入っているスライムを虐待している様な気がしますけど……」
「そうでもないんですよ。
あなたが送った水魔法ですが、少量ですがスライムの栄養になっています。
火と雷と風属性以外はスライムが栄養として吸収出来るので食事を兼ねているって事です」
「確かにスライムは火と雷に弱いからね、風に至っては物質でもないしって事か……それ以外は撃ち出せるって事なの?」
「可能となりますが、闇属性はお薦めしません。
栄養として吸収した時にスライムが凶暴になってしまいますからね」
「なるほどね……でも、ずっとは使えないよね?
スライムだって限界はあるだろうし」
「栄養を与え続けていれば、半永久的に使えると思います。
元々スライムに寿命がないですし、食べ続ければ生きていけますから」
一生ここに閉じ込められるスライムは可哀想な気もするんだけどなぁ……
「残酷な事をしている気分……」
「そうですね……確かにそうかもしれません。
だけど、それなら飼育している動物も同じかもしれませんね。
人に利用される為に育てられて食べられてしまう……でもその事を誰も非人道的とは思っていません。
それに比べてこの道具はスライムを殺したりする事はありません。
お互いの利益を得る為に利用し合っている……言わば新しい共存関係です」
言ってる事は解るんだけどね……
「まぁ、体裁良くする時様に考えた言い訳です。
ですが、外で出会ったスライムを理由もなく殺してしまうよりは良いと思ってます」
「スライム好きなんだね……」
「はい……でも、みんなからはおかしいって言われます……」
「確かにミリーちゃんの言う通り、これが上手くいけばスライムを無闇に殺す事は少なくなるだろうね」
彼女の顔が綻んだ……
スライムを好きな気持ちは解らないけど、理解してもらえた事を喜んでいた様だった。
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