伺い
ようやくトールの所を出て、約束していた宿舎に向かう……
その途中に、町から出れる事になった経緯を聞いてみた。
「でも、よく出れたね?」
「そうだね、結構説得したけどね。
それに、僕の存在の事やゴタゴタの内容を聞いたら、あそこに居て巻き込みたくないって思ったから必死だったよ」
「それって聞こえ方によっちゃあ僕達なら迷惑掛けても問題ないって聞こえるんだけど?」
「そう言ったつもり!
じゃあ、護衛よろしくぅ」
「逆だって!
僕の同行で、僕が守ってもらわなきゃいけないの!」
「知ってるって……嘘に決まってるだろ。
でも僕で大丈夫なの?」
「だって魔力操作を正確に、それも媒介なく物体を魔力のみで空中操作まで出来るんだから」
「……そんな事ぐらいみんな出来ると思うんだけど」
「いやいや出来ないよ!
そもそも魔法を使うのならまだしも、媒介もなしに物を動かしたりなんか出来ないって」
「でも、俺達はそれを生業としてたんだし……アベルだって出来るんだからさぁ」
「もしかして工房の引越しをしたのって……」
「工房?
もしかしてこの前のやつかな?」
「城の近くにある宿舎に運んだってやつだよ」
「そうそう、あれ重かったんだよ……アベルと必死になって運んだんだ。
あの日はさすがに帰って爆睡したよ……魔力消費が凄かったんでな」
そりゃそうだ……あんなもん運ぶのに2人で、しかも一日で終わらせるなんて……どう考えても以上だ。
「じゃあ、アベルさん以外に使える人はいるの?」
「アベルの息子が使えるけど修行中。
まだまだ運ばさせるのには不安が拭えないって言って、実際に仕事まではしてないけど」
「他にもいるんだ……でも、力としてはアベルさんの方が上なんだよね?」
「もう追い抜いた!
必死で修行したからね」
「アベルさんも驚いてなかったの?」
「いや……驚いてはなかったかな。
元々は俺の親父が使っていたのを教えてもらったらしくて、親父の才能を受け継いだんだって言ってた」
「お父さんかぁ……現魔王さんだよね」
「俺にしてみれば、その事はどうでもいいんだ」
「そっか……ごめんね、妙な話しをしてしまって」
「構わないよ。
最初の話しは僕が言い始めたんだからね」
ようやく宿舎の近くにたどり着くと、3人が外で待っていてくれていた。
「お待たせしてすいませんでした」
こっちに気づいたアガートさんがすぐに返事してくれた。
「良いよ。
3人で色々と話してたから」
「準備も良ければ伺いますか?」
「よろしく頼むよ」
確認もとれたところで城に向かう……
ようやく同行者も揃っていよいよ出発出来る。
城内に入りウィリアム様の元へと向かう。
ここ最近は今後の対策を考えるって事で訓練所には行かずに国王様と話し合いをしていると言う……
所在を聞いたら、今は自室に戻っていると聞いたのでウィリアム様の自室に移動した。
部屋に来て戸を叩いて名前を言った後に、すぐに入室を許可してくれた。
「失礼します。
この前の話しで戦力をと言われた件ですが……集めて来ました」
「そうか……では、その者を入室させるとよい」
戸の外で待っていた5人を呼び寄せる。
メロ君以外は緊張しているらしく、動きがぎこちなかった。
「ダークエルフ以外の者ばかりだな……メロ殿はまだしも、戦力になるのか?」
今日のウィリアム様はどことなく機嫌が悪い……来る時を間違ったのかもしれない。
「そうですね……僕は大丈夫だと思います」
「思う……か、私にもその者の実力を見せてくれないか?
失礼な言い方になるが、種族も違い特に人間が混じっている……私を納得させるのも当然だとは思わないか?」
「どう……やってですか?」
「そうだな……私が指名した者との決闘はどうかな?
複数で戦えば、強者が助ける事も出来るだろうからな」
急に決闘だなんて……
僕が戸惑っていると、シュート君が前に出て答える。
「良いですよ。
自分は彼の手伝いに来たんだけど、その為に実力を見せなくればならないのなら問題ないです」
「君は実力を知っているから問題ない……あの時見ていたからね。
問題は残る3人だ。
人数集めの為に呼ばれたのではない事を見せて欲しいがどうかな?」
「試されるのは嫌だけど、解りました。
僕は大丈夫です」
トールが話す……残る2人の戦いは解らないけど、トールなら十分に戦えると思う。
でも、残る2人はどうんだろう……
「私達もやります。
どれだけ戦えるのかは解らないけど、挑みます」
リターナさんが答えた後にアガートさんも遅れずに首を何度も振っていた。
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