友達
「ねぇ……それが理由ならどうしてそんなに塞ぎ込んでるの?」
「君には判らないよ!
友達の為に頑張ってきたのに、最終的にその友達の邪魔になり父親を刺させてしまったなんて事」
「解らない……でも、君がそうやって何もしないのも解らない。
後悔しているならどうして行動しないんだ!」
「何をどうしろって言うんだ!
起こった事は戻せない、キョウはまた親父さんと引き離されてしまった。
それに、親父さんは目を覚まさないままじゃないか!」
「だからだよ……ジンさんを助けて、もう一度彼に会わせれば良いじゃない」
「方法も解らないのに?
キョウは操られたままなのに?」
「じゃあ、そうやってれば何か解決するの?」
「しないよ……出来ないからこのままなんじゃないか」
「そうだね……君がそうしているんだったらそうだよ。
僕は違う!
ジンさんを目覚めさせてみせるんだ。
その為に起きてからずっと行動してる!」
「……偉いね……君は偉いよ……僕には出来そうもない」
「そうかもね、友達って呼んだ人を簡単に見捨てるんだから」
今まで話しをしてもベッドから動かなかった彼が立ち上がり、一瞬で僕の胸ぐらを掴み上げていた。
「もう一回言ってみろ……」
「友達を……見捨てたって事かい?」
「見捨ててなんていない!」
「じゃあ、さっきまで座っていた君はなんだ!
誰が見てもそうにしか見えないよ。
諦めたんだろ?」
「諦めてなんか……諦めて……」
「そろそろ苦しくなってきたんだけど……」
我に返ったのか、両腕に込められていた力が抜けて僕の両足が地面に着く……
「すまなかった……」
「僕の言い方も悪かったんだろうからいいよ……でも、そう思ったのは確かだよ」
「そうだね……僕は諦めていたよ。
キョウを元に戻す事も、親父さんを助ける事も……」
「まだ遅くないよ……2人を助けない?」
「自分は……」
「方法は解らないなら考えようよ。
僕もジンさんを助けたいんだ。
その為には出来る限りやってみる……しないで後悔するよりマシさ」
「でも、どうすれば……」
「一緒に考えようよ!
僕はジンさんの為、君はキョウ君の為に。
ジンさんお得意の利害関係ってやつでさ!」
「……前向きだね。
自分も見習うべきかなぁ……
その利害関係ってやつに乗っかるとして、何か策はあるの?」
「情報も不確かで、どうなるか判んないけどあるよ」
「不確かって……でも、君が言う通り何もしないよりは良いかな」
「じゃあ、関係成立って事で」
彼に手を伸ばす……
「そうだね、成立」
彼は手を掴んでくれた。
お互いが笑を浮かべ、握った手に一層力が入った。
「自己紹介すらまだだったね、僕はキャメロ」
「自分はシュート、よろしくね」
シュートが加わり部屋から一緒に出て行くと、リターナさんは驚いた様子で僕達を見ていた。
メロ君は大声が聞こえたりしていたのを心配してくれていて、出てくるなり「大丈夫?」と尋ねてくれた。
シュート君も「迷惑を掛けました」とリターナさんに謝っていた。
残りの1人を待つ事になり、先程の椅子にみんなで座って待った。
リターナさんはもう一度飲み物を用意してくれて、飲みながら待っていたが一向に現れない。
「キャメロ君、時間大丈夫かな?」
メロ君から話し掛けられる。
お昼頃にはトールの所に行かなきゃいけなかった事を心配してくれていたのだ。
「まだ大丈夫だと思うけど……」
多分お昼まではまだまだ時間はある筈、それに食堂だからお昼はお客さんで忙しいからと思うし……
「ごめんね、何時もは帰って来ている筈の時間なのに……何かあったのかしら」
「見に行きましょうか……」
「そうね……でも、行き違いになっても困るから2人残って、2人探しに行きましょうか」
話し合いの結果、顔を知っているリターナさんと確定しているとして、僕も何かあった際に探知を使えるからと自ら探しに行くと言った。
そしてメロ君とシュート君が残る事になった。
「じゃあ行ってくるわね。
もし彼が戻って来たら3人で待ってて下さい。
思い当たる場所を行っても見なかったら私達も戻りますから」
2人に手を振り宿舎から移動を開始する……早く見つかってくれる事を願いながら歩いて行った……
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