悔い
「はーい」
女性の声が戸の向こう側から聞こえる……足音が近づいて、戸が開かれた。
「すいませんバタバタしてて……どうしたんですか?」
「急にお邪魔してすいません。
ケインさんからお話しを聞いたので」
「そうですか、玄関で立ち話もなんなのでどうぞ中に」
宿舎の中に通され椅子に掛けて待っててと言われた……しばらくして女性は飲み物を持って来てくれて、向かい合わせの席に座った。
「それでお2人が行かれる方なんですね」
「はい、僕はキャメロって言います。
そして彼はメロ君」
「メロと言います」
「私はリターナと言います。
ケインさんからは話しを聞いてます。
ジンさんを助ける為に行動するのに人手が欲しいって事でしたよね?」
「そうです……しかも、部隊に入っていない者だけでと言われて困ってたんです」
「ここに居る者はケインさんとレインを除いて3人は部隊に入っていないわ。
ですが、人間を同行させるのには問題ないんですか?」
「……判りません。
ですが、種族という条件はありませんでした」
確かにウィリアム様は何も言わなかった……そこまでの制限はないと思うけど。
「それなら私達が一緒に行くのは問題ありませんが……」
「キャメロ君、その時はまた考えようよ。
今は彼女達をウィリアム様の所に連れて行った反応でどうするか考えよう」
「そうだね……それで3人って言われましたけど、残りのお2人は?」
「1人は外で修行してる筈です。
もう1人は……」
「どうかしたんですか?」
「部屋で塞ぎ込んじゃって……ここに来てからずっと部屋から出て来ないの」
「何かあったんですか?」
「良ければ実際に会ってみますか?
部屋の中に入るのは問題ありませんから」
部屋から出てこないって……そんな人が一緒に来れるのかなぁ……
そう考えていた時にメロ君が僕の考えている事を声に出してくれる。
「会うのはいいんですけど、そんな人が戦力になるんですか?」
「戦力ですか……私は正確に知りませんけど、3人の中では飛び抜けて強いと思いますよ」
「メロ君、会ってみようよ。
会って確かめてみよう」
「キャメロ君が言うなら……すいません失礼な言い方をしてしまって、案内お願い出来ますか」
「気にしないで下さい。
それでは案内しますね……」
3人とも立ち上がり、リターナさんの後を付いていく……
少し歩いた所で立ち止まり、戸を叩き声を掛けて戸を開いた。
「どうぞ、ベッドに座っている彼がそうです」
中に入るとカーテンも閉まったままの暗い部屋のベッドに座っている人がいた。
僕は彼を見た事がある……確かに戦力としては問題なけど、今までで1番問題のある人物だ。
「彼って勇者の一味じゃないんですか?」
「そうですね……でも、戦の最中にダークエルフと協力して、人間族を撤退させたって聞いてるけど……」
僕が気を失っていた間に戦ってくれた人だ。
功績があるから牢に入らなくて済んでるのかな……
「僕……話して来る。
2人とも外で待っててくれないかな?」
「良いけど……キャメロ君大丈夫?」
「大丈夫だよ……話しをしてみたかったから」
そう言って2人が部屋から出た後に静かに戸を閉めた……
ゆっくりと彼に近寄り、ベッドの横にあった椅子に腰掛ける……
「えぇと……初めましてになるかなぁ、でも一応あの時に会ってるから初めましてじゃないか」
声を掛けてみたが反応がない……眠っている訳ではないから話しは聞こえているだろうけど。
「何で閉じこもってるの?」
全く声を出してくれない……お構い無しで話しを続ける。
「君はどうして勇者達が去った後にダークエルフの味方をしたのかな?
敵対したら危険だって思ったから?
それとも敵対する理由がなくなったから?」
まだ反応無し……もっと話し掛けなきゃ……
「でも捕虜扱いにならなくて良かったね、これも計算しての事?
勇者達が君を置いて去って行ったのも何かの策略なのかな?」
少し体が動いた……
「ジンさんの息子さん……勇者が最後に操られてジンさんを刺したのも計算されての……」
「……違う……」
「え?」
「違う……キョウはそんなやつじゃない……」
「でも実際ジンさんを刺したんだし……」
「それは!……それは自分を庇った所為で……」
「そう見せたんじゃないのかな?」
「絶対に違う!
キョウは親父さんに会いたいってずっと言ってたんだ。
そんな事する訳ないじゃないか!
それをルカが操って……何でそんな事をさせたんだ……」
「君は勇者の事を庇うの?」
「庇ってる訳じゃない、今まで一緒に旅してきてキョウの想いを知ってるんだ!
自分はそんなキョウの力になりたいと思って旅をしてきたのに……」
どうやら彼が塞ぎ込んでる理由は仲間の裏切りらしい……
自分の責任でジンさんを刺させた事を悔いているのかな……
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