賛否
「そうだと思わないメロ君」
メロ君は俯きながら考えていたが、大体の想像が出来たのか顔を上げて僕を見た……
「……逆に利用するって事だよね?」
「トールを囮にするって言うのか!」
アベルさんは顔を怒りを露わにしながらも声を大にして叫んだ。
今まで守ってきた人からすれば当然の反応だと思える……
「結果的にその言い方が合ってますね……危険かもしれませんが、今の状況を打開する策になると思います。
もしも今回の援軍でメロ君達や、その次の援軍で来ているならって事ですけどね」
この前の援軍で来た人達を全員把握してないけど、多分負けたりはしないと思う……自信がついたからとかいう自惚れじゃなく、メロ君がそう考えている僕に注意しなかったというところでそう思ったんだ。
「キャメロ君の言う通り、もしも来ている者の中に複数いたとしても僕等2人で十分勝てますしね。
相手が気づいているのであれば尚更僕達を追って来るでしょう……人気の少ない場所で襲って来るなら好都合、返り討ちにして全員捕まえて尋問にかけます」
「確かに君ら程の力なら可能だが……わざわざ危険な場所に連れて行くのは……」
「僕は賛成だよ」
今まで聞いていただけのトールが気持ちを声に出す……それに対して婦人は急いで席を立って焦っている。
「トール!
あなた何を言ってるの?」
「だってそうじゃないか、母さん達の身の安全も確保出来るんだよ。
行って損はないじゃない」
「だけど……」
「判断はお任せしますよ。
僕は同行してもらえれば、条件を満たす事になりますから。
護衛をする事を考えても、僕にはそれだけの価値があります」
「僕はキャメロ君の頼みだったら引き受けます」
「解った……十分に話し合っておこう。
結果は明日までに出しておけば良いか?」
「そうしてもらえれば助かります。
じゃあ、また明日の昼頃にでも来ますね」
僕達がこれ以上話しに入り込む事はしなくていいと思った……僕達が最初から最後までは付き合える話じゃない。
今回は自分の都合と合ったから手伝うけど、これ以降はずっとそう出来るかというと無理だと思う……だから、判断を委ねて去る事にした。
店を出る間際に婦人が僕等を引き止めて、一言の謝罪を聞いた後にお互い城に向かって歩き出した……
翌朝……
朝練があるからと思い訓練所を目指す。
これからの為の朝連……これだけは絶対しておかなきゃ小人族を見つけられない。
まだ薄暗い中に訓練所に到達すると、既に2人が待っていた……
「キャメロ君遅いよ」
「お2人が早すぎるんですって……だってお日様上がっていませんし」
「言い訳無用……っとまあ冗談はここまでとして、訓練を始めようか。
じゃあ昨日の訓練の続きからで」
能生の使い方を詳しく復習いておいて、その後の訓練の続きを行っていった。
朝練の時間も終わり、朝食の時間になり食堂へ向かう。
昨日は全く食べれなかったので、食事を十分に確保出来る喜びを噛み締めながら1人でニヤニヤしながら朝食を済ませた。
早朝の訓練が終わり、普通通りの各部隊の訓練が開始される。
僕はなかなか魔法使い部隊の訓練所に顔を出せないでいた……朝食の時間にもタニアさんと会わなかったけど、意識してしまってる自分はまだ顔を直視出来ないでいた。
その所為か向かう先を魔族宿舎に変更していた……
メロ君の部屋まで行こうと思った時に、ケインさんと出会った。
「キャメロ君、訓練の時間にどうしたんだい?」
「ちょっとメロ君の所に行こうかなって思いまして……」
「メロ君?
あぁ、昨日の現場を見た魔族の発見者だったね」
「それで合ってます」
「そう言えば昨日ライトが話していたジンさんの件での事かな?」
「それです。
最初の同行者としてメロ君が一緒に来てくれる手筈になっててですね」
「1人確保ですか……私に1人心当たりがあるけれども行ってみますか?」
「本当ですか!
すぐにでも行って聞いてみたいです」
「そうですか……それなら僕達が住んでいる所に行ってみるといいです。
昨日私から伝えてはいますから、好きな時に行って大丈夫ですから」
「ありがとうございます……今日メロ君に合った後に行ってきます」
メロ君の部屋にたどり着き、ケインさんとの話しをしていた。
メロ君は全然問題はないと言ってくれて、早速2人でケインさん達の宿舎へ移動した。
けど、思い出すと肝心な誰かの名前をケインさんに聞き忘れていたのだ……
「メロ君、名前聞いてなかった……」
「とりあえず入ってから聞いてみようよ。
中から声も伝わるから誰かは居るよ」
「そうだね……ケインさんから話しもあってるから大丈夫だよね」
そう言って戸を叩いて宿舎に入る……
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