騒動
「どういう事なの?」
ただ一人現状を理解出来ない僕はただ焦るばかり……何がどうなってこうなったんだ?
「彼はハーフだね?」
「ハーフ?」
「解っているのでしょう!
今更何を言ってるの?」
「気付いたのは本当にさっきなんだ。
元々そう言う予定でここに来た理由じゃないし」
「それを信じる根拠はないな……どの道無事に帰らせる事はないんだ」
「はぁ……キャメロ君が話していた彼は、元王族なんだ」
「王族?」
「そう……魔族の王族の血を引く人って事だよ」
「それでどうして……」
話している途中に6人の男が一気に突っ込んで来る……
「ちょっと待ってって……」
現状を理解出来ないままで殴り掛かられてしまう……
だけど、先程の訓練のお陰で簡単に攻撃全てを避ける事が出来た。
「何…するん……ですか!」
「見ての通りの口封じだが」
武器は持たず素手での攻撃だが、当たればそれなりに痛い思いをする。
目を開いたままの状態で探知すれば、当たる気がしない。
「だからそれの意味が解んないって!」
「そうだったとしても、彼は気づいてるわ!」
容赦なく男達が攻撃を仕掛けてくる……
いい加減我慢の限界だ……訳も判らないまま攻撃されるなんて……
「メロ君……やるよ……」
「僕もそう言おうとしてたとこさ……気が合うね」
水弾を浮かべ、攻撃を避けながら当てていく……メロ君も同じ様に水弾で攻撃している。
気を失う程度の威力で放ち、数秒の後に指示を出していた男性以外を倒す。
「まだやります?」
「……やるさ、その程度の腕前で勝てると思うなよ」
男性は僕に向かって一直線に突っ込んで来る……浮かせている水弾を全て放つが、男性に届く前に消え去ってしまう。
よく見ると男性も魔力を操作している……どうやら水弾は魔力によって弾かれたみたいだった。
「あなたも魔力操作出来るんですね……」
「それがどうした!」
声を張り上げ更に距離が詰まる。
男性は腕を手刀の状態にしたかと思うと、魔力を腕に巻き付けて巨大な刃を形成させる。
あれで切られたら死んじゃうぞ!
相当な魔力の密度だというのが解る……こっちの魔力操作で解除出来るような代物じゃないな……だけど!
切りつけてくる腕に僕の魔力を上から更に巻き付ける。
そして、腕を魔力で押し返す……
「何をした?」
「使えるのに見えてないの?」
「くっ……無駄な抵抗をぉーーー!」
腕に力が込められる……だけど、魔力を腕力で簡単には凌駕するには力が足りない……僕だってその程度の力はあるさ。
「どっちが無駄な抵抗かな?
僕はまだまだ力を込める事が出来るよ。
あなたが本気でなければ、もっと力を込めるといいよ」
言い放った後に更に魔力を込める……
男性は体ごと押されていっている。
そして遂にドアを突き破って飛び出した……
「アベルさん?
どうしたんですか、何でドアから飛んできたんです!」
どうやら彼が戻って来たみたいだ……この状況どう説明したものか……
「母さん何があったんだ!」
彼が店内に入り婦人に叫ぶ、それと同時に中の様子を見回し倒れている男達と僕達を見た……
「トール逃げなさい!」
「……君達がやったの?」
「やったと言うより襲われて……」
「襲われた?
それに母さんも逃げろってどう言う事なの?」
「それは……」
「君が魔族で、しかも王族の血筋だから僕達に捕まる前に逃げなさいって事みたいだよ」
「黙って!」
「母さん……じゃあ、母さん達が彼等を襲ったって事なの?」
「僕等は外に出てるからお母さんとやらに説明してもらえばいい……その結果ここから逃げても僕達は何も言わないし追う事だってしない。
彼等は信じてくれないだろうけど、君に聞く権利はあるよ。
もし、教えてくれないんだったら……」
「私が話します!」
メロ君のやり取りに僕は追いつけないでいた……何か重要な話しと言う事だけは解った。
「じゃあキャメロ君、僕達は外で待っていよう」
言われた通りにメロ君と店から出る。
けれど、僕がこの現状を引き起こしてしまった事だけは理解出来た……
「メロ君ごめん……」
「良いよ……けれど、こんな所で出会うなんてね……」
「どう言う事か教えてくれない?」
種族間の問題だから聞いてはいけない事かもしれないとは思ったが、気になってしまったものでダメ元で問いかけてみた……
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