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至高

落ち着いてから訓練所を離れ、今度は町の方に向かって移動を始めた。

残る場所はここしかないと思い、町中で色んな人に聞いて行く……


しかし、向こうでもなかった情報が町で手に入るなんて考えにくいよなぁ……でも、何でもやってからじゃないと判らないし、やる前から諦めちゃいけないよ!


その後も聞き込みを続けるが、結果の出る事なく時間だけが過ぎていった。

一旦どこかで休憩しようと、ふらりと食事処に入って腰掛ける。


中に入り窓際の席に腰掛けて疲れた足を癒す……


「いらっしゃい、お一人ですか?」


「はい、町で歩き回って疲れてしまって、いい時にここがあったので立ち寄らせてもらいました」


「そうですか、ではゆっくり休んで下さいな。

水をお持ちしますからお待ち下さいね」


綺麗なご婦人だ……店内には数人のお客さん以外に、店員として働いてる様子の人は彼女だけの様だ。


「お水お待たせしました」


「ありがとうございます。

お一人で切り盛りされてるんですか?」


「えぇ、息子がいるんですが夕方まで別の仕事をしてまして。

もうすぐ帰って来て手伝ってくれるんです」


雰囲気の良いお店とご婦人の柔らかい人柄で、ついつい話し掛けてしまった。


「お昼は食事を主に扱ってますが、夜になるとお酒も注文出来る様になって、酒場として利用される方もいらっしゃるので、流石に一人じゃお待たせしてしまいますからね」


「そうなんですね、確かにこんな良いお店なら食事もお酒も美味しいでしょう」


「フフ…まだお水しか出してませんよ。

良かったら当店のオススメの物でもお持ちしましょうか?」


「あ…はい、よろしくお願いします」


こんな所に来るのが初めてで、変な褒め方しちゃったかも……

でも、優しい人で良かったなぁ……オススメもなんだろうな?


切羽詰まっているんだけど、雰囲気の所為か落ち着いてしまっていた。

なんだかんだでちょっと楽しい……




しばらくして料理が運ばれてくる……


「お待たせしました……当店自慢の猪肉のワインソテーです」


無茶苦茶いい匂いが……こんなの食べた事もないよ。


「猪肉って?」


「山に生息しているビッグホーンと言う猪です」


ビッグホーンって……昔死ぬ程追いかけられた記憶があるなぁ、あの時は死ぬかと思ったけど今はあっちが死んで料理になってる。

でも、あんなモンスターが美味しくなるもんなのかなぁ……


「じゃあいただきます……」


食べやすい大きさにあらかじめ切ってあり、フォークを使って口に運ぶ……すると、ビッグホーンとは思えない程の柔らかい食感、噛み切ろうと顎に力を入れたのだが一瞬で肉が切れてしまった。

そして、ワインの酸味が口の中いっぱいに広がると、追いかける様に肉の旨味が口内に幸福感を与える……


「うめぇぇ……こんなの初めてだぁ……」


「ありがとうございます。

ここまで柔らかくする為にはかなりの手間が掛かってます。

だから毎日は出せないんですけど、今日はちょうど出来上がったので」


「こちらこそありがとうございます。

こんな美味い食事は生きてきた中でありませんよ」


「そう言って頂けると作った甲斐がありますね。

一緒に持って来ているパンをソースに付けて食べるのも美味しいので、後で食べて見てくださいね」


「はいっ!

絶対食べます!」


「フフっ……じゃあごゆっくりお過ごし下さい」


ゆっくりと厨房に入って行かれた……

しかし、胃袋を掴まれるってこう言う事を言うんだろうなぁ……毎日でもここの料理を食べにきたくなるよ。






料理を堪能し、まったりとくつろいでいた……

お店の入り口が開き、僕と歳が近いであろう男性が入店して来る。

またお客さんかなと思って見ていると、親しげに婦人と話していた。


もしかしたらさっき聞いた息子さんかな?

そう思って見ていると腰に前掛けを着けて、厨房から出てきた。


「さぁ今からは飲酒大丈夫だよーーーー

じゃんじゃん頼んで楽しんでねーーー」


店内に大きな声が響き渡ると、お客さんも喜んで男性に酒を頼んでいた……

周囲のお客さんが頼まれたお酒を一気にグラスに注いでいる……ざっと二十杯程あるだろうか、一度に持って行ける量じゃないだろうにと思った瞬間、男性から魔力の発動を感じる。


何をする気なんだろう、グラスを運ぶのに魔力を使うなんて……


すると、濃ゆくて強い波動の魔力が彼の手から出現し、グラスの下に魔力が移動し全てのグラスを持ち上げた。

持つだけでのかなりの重さの筈だ……それを、魔法じゃなくて魔力で持ち上げるなんて……


土属性なんかで皿を出現させるのであれば解る……でも魔力で持ち上げるなんて、どうやってるんだ?


店内のお客さんは見慣れた光景なのか、驚きもせずに運ばれてくる酒に喜んでいる。

しかも、彼の魔力を見る事も出来ないであろうお客さんは不思議に思ってもいないのか?

気になって、近くに座っていらっしゃったお客さんに声を掛けて聞いてみる。


「あれってどうやってるのか解ります?」


「いんや……全くわかんねぇよ。

でも、手品みたいで楽しいぞ」


やっぱり見えてないけど……見えてないけど当たり前の受け方だ。


「兄ちゃんはここは初めてなんかい?」


「そうなんですよ……」


「それじゃあ、もう少し楽しいもんが見れるかもしんねぇぞ」





今回もお読みいただきありがとうございます。

ご意見ご感想お待ちしております。


次回もよろしくお願い致します。

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