基礎
タニアさんの本気状態が止まらない、どうにか正気に戻って欲しいが、声を掛けても無駄だった。
凄い勢いで突っ込んでくる彼女に対し再び壁を出現させて突進を防ごうとするが、すぐにひび割れて周囲に拡散していってしまう。
再度距離を置く為に後方へと下がるが、一瞬で砕けた壁の向こうから詰め寄られる。
どうしたら正気に戻ってくれるんだよぉ……
いっその事わざと負けてしまえば……思った瞬間に魔力の込められた拳が顔の横を通過する。
頬が裂けて出血どころか、頬の肉がエグられた感じがする。
いやいや冗談じゃないぞ!
あんなのまともに喰らったらヤバいって!
完全に彼女の間合いに入ってしまい、何度も拳が僕の体目掛けて振り続けられる。
後手に回ってしまい、反撃の暇すら与えられない……
一発一発が命の危険を感じる程の攻撃で、一瞬の油断も許されない状況……少しづつ後退しながら避け続けるが、遂に踵が壁に当たり逃げ場が無くなった。
しまった……これ以上は……
逃げる事が不可能になった以上、防ぐか反撃するしかない。
反撃しようにも暇を与えてもらえないし、防ぐにも壁を創る空間もない。
こうなったら禁じ手だ……サンドラ様に怒られるより、この一発を喰らう方が怖いよ。
魔力を体全体にたぎらせて、一気に帯電させ直接攻撃を防ぐ……
さすがに危険を感じたのか、タニアさんは後ろに下がる。
正気を失っていても冷静さは欠いていない……尚の事厄介だよね。
すると、拳に込められていた魔力の量が更に増えると、いくつもの石が浮かんでいる。
あれを拳と一緒に打ち放ってくるつもりなのかな……さすがにあれを消す程の威力は雷に備えていない。
となると、こちらも反撃しなきゃ危ないって事だね……
またも接近してくるタニアさんに対して、鞭を発動させる……すると、体中に痛みを感じる。
さすがにあの時程の痛みじゃないけど、全体がピリピリとしてきてしまう。
まだまだ練習を積まなきゃ自在に操れないや……だけど、この程度の痛みなら耐えれる。
あれを喰らうと思えば、これくらい何でもない筈。
接近してくるタニアさんに対して軽く腕を振ると、一瞬にしてタニアさんに鞭が襲い掛かる。
跳び上がり回避され、どんどんこちらに向かって近づいて来ている。
もう一度鞭で攻撃を仕掛けるが、跳んで避けられる……だけど、それが狙いだった。
もう片腕に鞭を出現、飛び上がって回避出来なくなったタニアさんに、もう一本の鞭が直撃……空中で体を痺らせ崩れ落ちた。
これで正気に戻ってくれれば……
「タニアさん大丈夫ですか?」
「えぇ……」
良かったぁ……会話が成立しているよぉ……
「すいません…声を掛けても反応がなくて、どんどんタニアさんが本気になっていくのが怖くて、つい雷を使ってしまいました」
「私こそすいませんでしたね……戦いになると、見境がつかなくなってしまって」
「そうなんですね……確かに怖かったです」
「訓練なのに本当にすいませんでした。
では、次は冷静になって訓練しますので、継続して良いですか?」
「……いやいやいや!
今日はもう勘弁…じゃなくて、予定があるので失礼します。
人を待たせていますから」
「そうですか……では、次の機会にお願いしますね」
急いで訓練所を後にした。
もうあんな怖い目に合うのは丁重にお断りしたいです……申し訳ないですけど、金輪際ご遠慮願いたい限りです。
しばらくしてフューリーさんと落ち合い、ライトさんの元へと急いで向かった。
ライトさんは訓練所で待ってくれるとの事だったから、魔法剣部隊の訓練所に入った。
中を見渡すと、ライトさんが一人で待ってくれていた。
「遅くなってすいませんでした」
「良いですよ……私達の訓練は今終わったので丁度良かった」
「なら良かったです。
それじゃあ早速ですけど、魔力を見る方法を教えてもらえますか?」
「解りました……まずはこの能力は魔力探知と言って、キャメロ君が言う通りの能力で魔力を見る事が出来ます。
後は視界に入らない様な魔法発動を検知する事も可能です」
「凄いですね……それを覚えれば死角でさえも見張る事が出来るんですね」
「そうです。
だけど、覚えるのには教えれる人が居ないと無理でしょうね。
ジンさんが誰から教わったのかは解りませんが」
それからしばらく探知の基本について学び、実際に行うのは夕食を済ませた後にと言う事になった……
今回もお読みいただきありがとうございます。
ご意見ご感想お待ちしております。
次回もよろしくお願い致します。