目線
「僕が掛け合ってみます……」
「行動する事自体は悪くないと思うけれど、結果君は身動きが取れなくなる可能性の方が高いよ」
「じゃあ、どうすれば!」
「方法は2つ……ひとつはどんなに時間が掛かっても小人族の存在の確証と、その力の真実を手に入れて上層部を説得する事。
もうひとつは誰にも何も言わずに見つかる事なくここから出発する事だよ。
前者を選べば皆が協力してくれるだろう、後者を選べば……」
「僕は戦争の最中に城から脱走……罪に問われる可能性があるって事ですね」
「そうだね……君がどちらを選ぼうとも反対はしないし、この話しを誰かに言う事もない」
「……だけど、僕1人で行ったとしても小人族を見つけるのは不可能です……ライトさんが一緒なら魔力を見つけて探し出す事も出来るかと思ってお願いしに来たんです。
それが無理なら僕1人で出て行くのは……」
「僕も道連れにってかい?」
「はい!」
「ハッキリ言うよね……昔の君からは想像がつかない程変わったね。
でも答えは決まってる……行かない、いや行けない」
「どうしてですか?」
「僕はここの舞台の役職者だよ。
僕が出て行けば、管轄の部隊を見捨てた事になる……つまりはダークエルフの存亡すらも無視する事になるんだ」
「種族の為に部隊の仲間を育てなきゃいけないって事ですか……」
「僕にはその責任のある立場だ……その責任を軽視する事は出来ない」
「でもジンさんだって大事な人じゃないですか!」
「知ってる……それも、異世界から僕等を助けてもらう為に召喚して怪我をさせてしまった我々が成すべき責任って事もね」
「じゃあ……」
「このまま言い合っても話しは平行線だけど、まだ続けるかな?」
「じゃあ、説得してみせます!
そしたら問題ないんじゃないですか」
「出て行ける時は、もうやってこないと思うけどいいの?」
「絶対説得します。
それで、堂々と探しに行きます」
「それなら僕はもう何も言わない……現状を感じて来ればいいよ」
「待ってて下さい!
必ず許可をもらってきますから」
ライトさんの元を離れ、ウィリアム様に会いに行く……多分今なら近接部隊の訓練中だと思う……
近接部隊の訓練している修練場にたどり着くと、思った通りウィリアム様は居た。
訓練の邪魔にならない様に大回りしてウィリアム様の所に行った。
「ウィリアム様、少しお話しがありますけどお時間頂けますか?」
「キャメロ君、ようやく目覚めたみたいだね。
今朝ガルフに聞いたよ。
それで、話しって何かな?」
「ジンさんの事についてなんですけど……」
「じゃあ、場所を変えようか……今なら会議室が空いてるから、そこに行って話しをしよう」
そう言ってウィリアム様が立ち上がると、会議室に向かって歩き出す。
僕も遅れないように後ろを付いて行った。
会議室に入ると、ウィリアム様はどっしりと椅子に腰掛ける。
「キャメロ君も座ると良い……」
「では、失礼します」
「それで、話しと言うのは?」
「ジンさんの意識を回復させる為の方法があるかもしれないので、少しの間外出の許可を頂きたくて」
「そうか……出来る事なら許可を出してやりたいが、現状では無理かな……」
「どうしてですか?
我々をあんなになってまで助けてくれた人に対して、今度は我々が恩を返す義理があるはずです」
「……君がここを離れるのが無理と言う事で、他の者に向かわせると言うのは駄目なのかな?」
「それは……」
「その情報をもらえれば、人選を行って行動させるが」
「探す為にはライトさんの力が必要なんです。
最低ライトさんが入ってないと不可能なんですけど、それは可能ですか?」
「ライト隊長は向かわせる事が出来ない。
彼には部隊の強化と、何かあった時の為の戦力として城に居てもらわないといけないんだ」
「それでは手掛かりを探せません!」
「そもそも、なぜライト隊長が必要なんだね?
彼は確かに短い間に成長している……けれども、彼にしか出来ない事があるのかな?」
「それは……」
「それに、君が言う話しは確証があるのかな?」
「確証は……ありません……でも、少しでも可能性があるなら行動しなきゃ……」
「確証がないのに隊長や君を出す事は出来ない。
もし君達が居ない間に戦争になり、多大な損害が出た場合はどうやって責任を取るのかな?」
「責任は……」
「取る方法が思いつかないだろう……それに、大きな戦力である君達を罰する事すら我々は出来ない。
出来たとしたら、この城から絶対に出さないと言うだけだ。
それで、死んでしまったりした者達やその仲間は許してくれると思うか?」
「…………」
「許してくれないだろうし、そんな者を行動制限だけで済ませた国家に対してどう思うだろうか……多分許してくれないと思う。
そして、今ある規律を守ってくれるかな?
つまり、君達が出て行ってもしもの事があれば全て悪い方向に事が向かっていく可能性の方が高いと言う事だよ」
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