失望
「小人って治療に詳しいんですか?」
「オイラ達が病気になったりした時には世話になってたんだぁ。
色んな事を知ってたからなぁ、最近はなかなか合わなくなっちまったけど」
「会えたりとか出来るんですか?」
「いやぁ……無理かもなぁ……基本的に同じ場所に留まる事がなくて、ずっとねぐらを変えて生活してんだ」
「つまり、その時によって生活してる拠点が違うって事ですか……」
「だな…オイラが会ったのも子供の頃と息子が産まれた時だったなぁ、自分達が必要な物がある時だけしか来ないからなぁ。
しかも、絶対うちの村に来なくてもドワーフの村はいくつもあったからな。
こっちが助けて欲しくて探してもよぉ、小さくて見つかんねぇんだ」
それはもう無理でしょう……でも、もしかしたら……
「バズさん、小人族の人は魔法を使ったりするんですか?」
「ん……使ってたっけなぁ……」
「使ってたじゃねぇか、お前が高熱出して治してもらった時は魔法と何ぞ知らん薬を飲ませて回復させてたろぉが」
「いやいや、オイラが倒れてた時の記憶がある訳ねぇだろぉが……
でも確かに戻って行く時は浮いてたもんなぁ…って事で使うみたいだ」
「魔力を持っているのなら探せるかも……ちょっと相談したい人がいますから一緒に来てもらえませんか?」
「良いけどよぉ、オイラ達が行っても役に立たねぇぞ」
「でも、らしき所まででも僕達だけじゃ行けませんから……お願いします」
「解った。
でも、ひとつお願いがあんだ……戦争が終わって、城に持ち込まれたあの大きな大砲ってやつがあるだろ。
あれを調べさせて欲しいんだが、頼んでも断られちまってなぁ……ちょっと興味があって見てみてぇんだ。
出来るか?」
「解りました……交渉してきます。
じゃあ一旦宿舎で待ってて下さい。
結果が出次第向かいますから」
「キャメロ君……お願いします」
「任せて下さい……頑張って来ます。
ライラさんもジンさんの近くに居て見守って下さいね」
そう言って客間から走りながら出て行く……急いであの人に伝えないと……
走って向かった先に居るのはライトさんの元だった。
「ライトさん、僕と一緒に行って欲しい場所があるんですけど……」
「どうしたんです?」
「ジンさんの状態を改善出来る可能性があるんです……」
バズさん達から聞いた話しを一通り説明すると、ライトさんは考え込んでいる……
「キャメロ君……小人族が本当だとしても、ジンさんの意識を回復させれる根拠はないよね」
「ですけど……」
「君の言いたい事も解るし、出来る事なら手伝いたい……でもね、戦争は終わってないんだ。
さっきサンドラ様が魔族領に一時戻るって話しを聞いたよ…しかもリレイ様を連れてね」
「つまり、城に残る戦力が低下してしまっていると?」
「そうです……そんな状況の中で、根拠もない情報で僕達は動けるかな?」
「確かにそうですけど……」
「ジンさんの様態が悪化しているならば、どんな手を使ってでも動けって命令が出るだろうけど、状態を維持していている……」
「でも、次に戦争が始まった時にジンさんがいなきゃどうなるか判らないじゃないですか!」
「……この前の戦争で出た負傷者は?」
「ジンさんと僕が一番だって聞いてますけど、他に大きな怪我をした人がいるんですか?」
「いや、君とジンさんだけだ……」
「それがどうかしたんです?」
「解らないかな?
あれだけ危機的な戦争だったけど、たった2人の重傷者で済んだんだよ」
「……もしかして、人間達との戦力の問題で……」
「そう……人数だけの人間達に対して一人一人の戦闘力の差が明白になったんだ。
どれだけいようとも、今の部隊が出来上がった状態で戦ってみれば圧勝……つまりこれからもっと修練を積めば負ける事はないだろうって思ってしまってるんだよ」
「でも、あの聖女とか言われていた女の子の魔力に対してはどうもならないじゃないですか!」
「そうかな……相手が逃亡している途中に、君は何をしたか覚えてるかい?」
「魔力を束ねて弾きましたけど……もしかして」
「正解だね……君がいれば対抗出来るんだよ。
ジンさんだけが対抗出来るならば差し迫った問題なんどろうけど、君が対抗策としているとなれば話しは別だよ。
だから、僕以上に君はここから出る事を許されないだろうね」
「そんな事って……」
「実際考えたらそうなるんじゃないかな……戦力も整っているし、対抗策もあるとなるとジンさんの事は戦争が終わるまで後回しになってしまうって……」
「ジンさんのお陰で勝てた様なものじゃないんですか?
ジンさんがいなかったら僕達は……」
「解ってる!」
急にライトさんが声を張り上げる……
「解ってるよ……あの人のお陰でここまで生きてこれた様なものなのに……」
悔しいんだ……何も出来ないのが、今朝会った時もリレイさんとすごい剣幕で戦闘訓練していたのは、上の考え方に失望していたからなのかもしれない……
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