光明
サンドラ様と別れてジンさんが治療されている客間へと向かった。
ガルフさんから聞いた話しだと、医務室でジンさんの様態を見せてしまうと今後の士気に関わるなんて言い方で、客間を利用して治療にあたっているとの事だった。
特別待遇だというふうに思わせない為の言い回しなのかな……
部屋の前まで来ると、ドアを開けてアリさんとサリさんが出てきていた。
「アリさん、サリさん、僕の治療ありがとうございます。
お陰様でようやく動ける様になりました」
「「キャメローーー!!」」
「ようやく起きたなーー」
「いつまでも起きてこないから心配してたぞーーー」
「色々とありがとうございます……助かりました。
お2人は今からどこかへ行くんですか?」
「少し休憩かな……」
「色々と魔法を試していたから、魔力切れそうなんですっ」
「戻ってから毎日ずっとやっているんですか?」
「そだね〜……キャメロを回復し終わってからはずっとかなぁ……」
「だってジンさんを助けなくちゃいけないからぁ……」
「そうなんですね……僕はそんな時に倒れてしまって、今も何も出来ないなんて情けないです……」
「しょうがないって〜、みんなにはみんなの役割があるの!」
「私達はこれが与えられた役割でキャメロにもある……」
「サリさん!!」
話しの途中でサリさんがフラついて倒れそうになる。
寸前でなんとか支える事が出来た。
「あらぁ……ごめん……ちょっと本当に休憩しないと無理そうだよ〜」
「大丈夫ですか?
休める場所までおぶって行きますよ」
「大丈夫……近くだから心配しないで」
「サリは私が連れて行くから良いよー。
ジンに会ってきなよー」
「解りました……いってきます」
不甲斐ないなぁ……ちょっと前まで…戦争に巻き込まれるまで…ジンさんと出会うまでこんな風に思う事すらなかったのに……
うまい事逃げて生きていければ良かったんだ。
でも……ジンさんの仕業でサンドラ様に力の使い方や戦い方を教えてもらって、誰かを守れるんだって思ったら守らなきゃって思って、でもジンさんを助けられなくて、今だって何にも出来ないんだ。
悔しい…………
そしてようやく部屋のドアを開いた……横たわっているジンさんの姿が見えると、隣にそっと座っている女性の後ろ姿が目に入った。
あれは……
「ライラさん?」
「キャメロ……あなた起きて大丈夫だったの?」
変わった……以前のライラさんと違いやつれてる。
綺麗な印象だけど、今のライラさんは少し怖い……
「ライラさんこそ大丈夫なんですか?
体調が優れないんじゃないですか?」
「……そうね…でも、私はどうでも良いのよ。
ジンが起きてくれれば……」
「その前にライラさんが倒れてしまうじゃないですか!」
「そんなのどうでも……」
「良くないですよ!
ジンさんが目を覚ました時にライラさんがそんな状態だったら喜ぶと思いますか?
少なくとも少しでも元気なライラさんを見たいんじゃないですか?」
「……」
「ご、ごめんなさい!
言いすぎました……」
「良いの……その通りだと思うから。
でも、今は無理よ……少しだけそう思える様になるには時間が欲しいの」
「そうですね。
僕も同じなのに、ライラさんに言う権利なんてないですね」
お互いが下を向き、黙ってしまった……
暫く沈黙の時間が過ぎる……ジンさんの近くに行く事も出来ずに立ちすくんでいた。
このままじゃいけないと謝ろうとした瞬間……
「入るぞぉい!!」
大きな音を立ててドワーフの人が入って来た……
「やっぱり寝てやがるなぁ……」
「俺らはお前さんが倒れてる間は何も出来ねぇんだ。
早く起きて俺らに指示をくれよぉ……寂しいじゃぁねぇかよ。
お陰で酒を飲み過ぎてらぁ」
あれ……酔っ払ってませんかね……
「ダグさんにバズさん、今日も飲んでたんですか……」
「だってよぉ試験もそのままで、オイラの仕事はねぇんだってよ」
「そうですけど……」
「いつまでも起きねぇもんだな……
体の事には詳しくねぇしなぁ、何かねぇのかよ……」
「そういやぁ小人達なら何か知らねぇか?」
「小人って、妖精ですか?」
「いやいや小人っつったら単純にちっちゃい一族だよ」
「そんな一族がいるなんて聞いた事ないですよ……」
「それがいるんだよ……だって昔は色々と取り引きをやってたんだからよぉ。
細かい作業だって意外と俺等は上手いんだからよ」
バズさんから意外な発言……
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