行方
周囲から放たれた魔法に囲まれ、魔力が尽きて意識を失ったキャメロは死を待つだけの状態だった……
「馬鹿弟子めが……」
キャメロの周囲を囲んでいた魔法が一気に闇に飲まれて消え去る……そして、攻撃していた兵士達が一瞬で氷漬けにされる。
サンドラだった……魔力切れで意識を失うのを待っていた様で、キャメロの真上に浮かんでいたのだ。
「お前まで死ぬ事はなかろう……」
そう言って意識を失ったままのキャメロを風で後方に吹き飛ばす。
遠くに逃げているルカを睨み、キャメロが倒した兵士の武器を何百と風で集め炎で溶解させると、それを一気にルカ達に放った。
それを最後まで見る事なく、後方にいる味方に向けて言い放つ……
「仲間が作った好機を呆けて逃すのか!
皆で攻め立てよ!」
一瞬遅れて声が上がる。
敵に向けてダークエルフ達の連合軍が雪崩込む……サンドラもその場で魔法で攻撃を開始、キャメロの攻撃の所為で陣形を乱された人間達は勢いに押され、次々と倒されていった……
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真っ暗な部屋の中で目が覚める……
ここはどこだろう……体が気怠いや…………
もう一度目を閉じようとした瞬間、キャメロは自分が起きていた時の最後の記憶を思い出す。
ジンさんが刺されてしまった事や、怒りに任せて敵を追ったが魔力が尽きて倒れてしまった事を……
あれからどうなったんだろ……ジンさんは無事なんだろうか?
そして自分はどれくらい眠っていたんだろうかと……
誰かに聞きに行かないと……
そう思いベッドから降りようとするが、体が思う様に動かずにバランスを崩し倒れてしまう……
「イタタ……本当に何に眠っていたんだろう……こんなにも体が動かないなんて」
そう言った瞬間にドアが開いた。
ドアを開けたのはガルフさんだった……
「キャメロ大丈夫か?」
ベッドから落ちているキャメロを気遣い、手を差し伸べてくれた。
「大丈夫ですけど、ガルフさんはどうしてそこに居たんです?」
「サンドラ様からの言いつけでな、お前が目を覚まして暴走して出て行かない様に見張ってろって言われてな」
サンドラ様……言いつけを守らずに鞭を使ったのも怒ってるだろうなぁ……それよりガルフさんに聞かなくちゃ。
「僕が倒れてからどうなったんですか?
それにジンさん……ジンさんは大丈夫なんですか?」
「それも頼まれていたから、順を追って話そう……
先ず今日は、お前が魔力切れで倒れてから4日経ってる。
戦争の結果なんだが、俺達が無事にいるから解ってるかもしれないが、勝った……我々の兵士の死傷者も少なかった。
まさに快勝と言ったところかもしれないな」
「ジンさんは?」
「待てよ……順を追って話すって言ったろ。
心配なのは解るが、話しが前後すると後で説明がややこしくなるから」
「ごめんなさい……じゃあ、続きをお願いします」
「助かるよ……それで勝てる要因になったひとつに、勇者達の中にいた少年が一緒に戦ってくれた部分があって、今はケイン殿から捕虜扱いではなく味方として一緒に前1番隊宿舎に泊まってるよ」
ガルフさんは順を追って話すと言っていたけど、話してる感じがおかしい……わざとジンさんの話題を避けている様だ。
「ガルフさん、言い難いんですか?」
「……バレてるよな……そうだな言い難い。」
「ジンさんは生きているんですか?」
「…………生きてはいるとだけ教えられた。
詳しい事は明日サンドラ様に聞いてくれ……俺からは何とも言えない」
「解りました……」
「ジンさんは、お前が突っ込んで行った後すぐにアリとサリが向かって傷を治していたよ。
お前が敵を追い払ってくれたお陰だってみんな言ってたぞ」
「……僕はただ、目の前で起きた事に我を失ってしまっていただけで……」
「それでもだ……それでも、お前のお陰でと思ってくれている人達がいるんだ」
ガルフさんは元気づけようとしてくれている。
この人の気持ちを無下にする事は出来ない……
「ガルフさんありがとう……ジンさんの事は明日サンドラ様に直接聞いてみます」
「そうだな……今日はもう遅いし、まだまだ魔力が回復しきれていないんだ。
ゆっくり休めよ……」
「ずっと起きててくれたんですね」
アクビを噛み殺して話してくれていた。
「お前が心配だったから起きてただけだ。
落ち着いた姿を見たら安心して眠くなっちまったな」
「遅くに長々とありがとうございました。
明日ですね……今日はおやすみ」
「あぁお休み……また明日な」
ガルフさんは部屋からゆっくりと出て行った。
気になる事は沢山あるけれど、みんなに迷惑を掛けてまで自分を押し通すのは間違ってる。
僕と同じで休んでいる人もいるだろうし、全ては明日だ……明日サンドラ様に聞けばいい……
不安を押し殺しながらゆっくりと瞼を下ろした……
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