反撃に次ぐ反撃
「な……なんであなたが融合出来るのですか……
これは選ばられ者だけが出来るんです!
あなたなんかが出来ていい筈がありません」
「じゃあ答えは簡単じゃないか……俺も選ばられ者ってだけだ」
一気に詰め寄る……会話で時間を割く訳にはいかない。
融合状態の制限時間が解らないのだ。
早急に決着を着けないと、いつリミットがくるか……
融合状態になれば先程よりも速く動いたとしても、ブラッドの眼がしっかりと対応してくれる。
存分に速度を上げる事が可能だ……つまり、ルカが反応出来ない程のスピードで攻撃可能という訳だ。
それに、毎日訓練しておいたお陰もあって十分な動き…反応が出来ている。
勢いに任せた蹴りをルカの腹部に命中させる……ルカの体はくの字に折れ曲がり、その場に崩れていく……
膝を着こうとした瞬間に、俯いた顔面に向かって先程とは逆の足で蹴り上げる。
蹴られた勢いでその場で体が回転する……背中をこちら側に向けた時に力任せに殴打する。
当たった瞬間に骨の砕ける音が体を伝って響く……拳から離れ壁に向かって飛んでいき、大きな激突音が周囲に響いた。
これぐらいで安心出来る相手とは思っていない……激突した場所へ素早く移動し追撃を狙う。
土埃の舞う中、探知でルカの居場所を明確に把握……直前で跳び上がり蹴りを放つが、当たったのは崩壊した壁の部分だ。
蹴りが当たる直前で回避していた……寸前まで探知を行っていたのだが、当たると確信してしまい怠ってしまった。
しかも、土埃を利用して移動までされてしまっている……
見失ったルカを探す為に魔力探知を行おうとするが、それをしなくとも見つける事が出来た。
彼女は怒りに任せ、俺の顔面目掛けて殴りかかってきていたのだ。
難なく躱せる様なスピードだ……
そのまま仰け反り躱すが、肩に衝撃を受けて今度は俺が吹き飛ばされてしまう。
なんとか踏み止まりルカの方を見るが、既にその場に居ない。
再び探知で探している途中に視覚で発見する。
今度はルカの方から今までの鬱憤を晴らさんと言わんばかりの勢いで突っ込んで来ている。
今度は持っていた杖で殴りかかってきている。
だけど狙いも同じ顔への攻撃……今度はしっかりと回避しようと後方にステップするが、顔を横から殴りつけられる……
その後も避けようとするのだが攻撃を何回も同じ様に喰らってしまう。
何度見ても、何度喰らっても何が起こっているのか全く理解出来ない……ガードしても違う部分に攻撃を喰らう。
ブラッドとの意識を共有しているので、ブラッドが理解出来ているのなら答えが解る筈だが、お互いが理解出来ないままで殴り続けられてしまっている。
後方へ大きく距離をとればと当たらないのではと思い、下がってみるが結果は同じ事……
見えているあいつは残像で、後ろに本体がいてそれが攻撃しているとか……でも、探知する限りでは見えているやつに魔力を感じる。
もしくは、見えているのが本体で実体を持たせた分身でもいるのか……しかし、あれ以外に魔力は探知出来ない。
解らない……いくら融合して体や魔力が多少回復しているとは言え、時間が経てば魔力は底をついて操られてしまうし、ダメージで体は十分に動かせなくなる。
勝つための算段が思いつかない……攻撃のタネさえ解れば……
その時だった……ルカに向かって岩石がいくつも放たれ、その場から回避する為に離れていった。
「ジンさん大丈夫ですか!」
援護してくれたのはキャメロだった……
一旦俺もその場から離れ、キャメロの近くへと移動する。
「ありがとう……助かった」
「いえいえ、でも危なそうだったのでサンドラ様が行ってこいって言ってくれたんで」
サンドラ様が……何か解ったんだろうか……
「やつの攻撃が避けても当たってしまうんだ。
仕掛けがどうなっているかも解らない……お陰で攻撃を喰らい続けているんだ」
キャメロは少し首を傾げて考えていた。
俺が言った事に疑問があるかの様に……
「でもジンさんは攻撃されるだいぶ前に動いてましたよ。
だから、何かを恐れている様に見えていたんですけど……」
攻撃が当たるだいぶ前だって?
そんな筈はない、俺は直前で回避していたはずなんだ。
「ちょっと待て……そんなに前に動いていたのか?」
「はい、かなり距離がありましたよ」
おかしい……なんでだ?
俺と見えている物が違うと言うのか?
「俺は直前で避けていた筈だったんだ……どう言う事なんだ……」
「多分ですけど、彼女から放たれている魔力の中に居るからですかねぇ……」
「あいつから放たれている魔力って……キャメロお前見えるのか?」
「はい、そういった訓練をサンドラ様からみっ……ちり受けましたから」
「それで、俺はその魔力の中にいると……」
「ですねぇ……その中で何かが起こっているのかもしれませんね」
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