見えない勝機
真っ暗な中でルカに一撃を見舞う為の準備を行う。
疑われない様に、感覚を開けずに魔法攻撃を多方向から放つ。
「そろそろ無駄な事が解ったなら、終わりにしませんか?
流石に退屈です」
返答はしない、ひたすら準備を行うだけだ。
もう少しで準備を終わる……絶対に一撃喰らわしてギャフンと言わしてやるんだ。
「これ以上何もないようですね……」
そう言うとルカは両手魔力を集めている……かなりの込めているんだが、どうするっていうんだ?
「返事も無いようですので勝手に終わらせてしまいますよ」
そう言うと、両手に込めた魔力を光に変換し一気に周囲を明るく照らす。
俺の闇が一瞬のうちに解かれてしまったが、俺も準備が終わっている。
「さて、そろそろお開きに……」
そう言った瞬間に周囲の異変に気付いた。
闇を払ってしまったのだが、再び視界が邪魔される。
「もしかしてこれは霧?」
気付いても遅い、俺はすぐ側まで既に接近している。
「こんな霧なんて……」
風を巻き起こして霧を吹き飛ばそうとしている……その眼前に水弾が現れる。
だけど、直前で相殺されてしまうが……背中に思いっきり突きつけた拳がめり込んだ。
「とりあえず1発お返しだ」
殴った衝撃でルカが吹っ飛ばされる……空中でなんとか静止すると、俺を睨みつけてくる。
「汚い手で殴りましたね……もう絶対に許しませんよ」
「許そうが許すまいが関係ない……それにこれからもっとヒドい怪我を負う事になるんだ。
それくらいなんでもなくなるさ」
「出来もしない事を……」
「出来なくもないさ、実際に1発喰らって吹っ飛んでるじゃないか」
「まだ、たったの1回じゃないですか……私の方が動きも上ですし、騙す事でしか攻撃出来ないのに……」
話している途中に拳を突き出したまま一気に詰め寄る……ルカは避ける隙がなく拳を寸前で両手をクロスさせてガードした。
「騙せば当てれるって事だったら、何度だって騙し討ちしてやるさ」
そのまま何度も殴りつける。
全てガードされてしまうが、お構い無しにガードの上から殴る。
すると堪らなくなったのかルカがガードしている手を広げる。
チャンスとばかりに今までよりも拳に力を込めて殴りつけると手応えあった……しかし、自分の腹部に痛みが……
ルカは殴られるのを覚悟し、相打ちを狙ってきた。
だけどダメージを負わせられる時だ……手を止める訳にはいかない。
2人の殴り合いが続く……ダメージを少しでも軽減させる為にチェーンの力を使うが、どんどん魔力が減っていく。
何度も何度も激しい痛みが続く、それでも止めない……ルカも苦痛な表情だ……効いている。
もっとだ……もっと喰らわせれば……倒せる。
『ジン、無茶だ!』
『うるさい!
ここでやらなきゃ……』
『違う、魔力が無くなれば……操られてしまうんだぞ』
ハッと我に返る……俺は知らぬ間にルカに乗せられていたのかもしれない。
すぐに後方へと跳び、距離を置く。
後少しで魔力も底をつきそうになっている……危なかった……
「もう終わりですか?
倒すんじゃなかったんですか?」
ルカの体にかなりの打撃の後だが、笑っている。
回復薬を飲ませてくれるか?
そんな隙を与えてくれそうにはないよな……闇魔法を使おうにも、魔力が足りない。
追い詰めているつもりが、逆に追い詰められていたのか……
『ジン、これ以上は無理だ……融合するぞ』
『だけど今やっても……』
『まんま戦っても勝機が見えない……それなら負けてしまう前に融合するぞ』
確かにこれ以上の戦闘は無理だろう……ならば……
『解った……融合しよう』
「どうしたんですの?
来ないであれば……」
「いや……本気でやらせてもらうよ」
「……プッ……アハハハァ……ここまできて冗談を言うなんてね」
「冗談かどうかは確かめてみれば良いさ……融合!」
体覆う衣服が一気に変わり、背中から翼を出現させる……
「ここからが本番だ」
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