再会その4
「シュート!後ろに跳ぶんだ!」
響が大声で叫ぶ……気付いたシュートは戸惑いながらも後ろへと跳んだ。
「どうしたんです?」
「シュートには見えないみたいだけど、ルカから出ている魔力が2人を操ってるらしいんだ……」
「ルカ様が!?」
「俺はその所為でマーニャに蹴りを喰らわせられたんだ……とりあえずルカから離れてくれ」
信じ難い表情をしているシュートだが、響との信頼関係は厚いらしい。
響の言う通りにこっちへと移動して来た。
「キョウさんには見えるんですね……しかし、どうして私の能力まで解ったんですか?」
ルカがこちらを睨みつけながら疑問を投げかける。
すくみ上がる程のプレッシャーを放ちながら……
「それはな親父が……」
急いで響の口を塞ぐが遅かったみたいだ……
「あなたですね……本当に邪魔なのはやっぱりあなたみたいです。
絶対に死んでもらいます」
そう言われて今の状況を思い出させられる……ルカの後ろから大勢の人間が行進して来ている。
後方で控えているダークエルフ達を前に進ませればルカの能力で操られてしまう可能性が高い……だからこそ後方の仲間に助けを求めなかったのに……
だけど、このままあの人数まで戦う事は不可能だ。
良い考えが全く浮かばない……判断が少しでも遅れれば状況はどんどん悪くなっていくのに……
頭をフル回転させて考えている時、敵陣に向かって大量の魔法が放たれている。
「何を絶望的な顔をしておる?」
「サンドラ様!」
「妾が来たのをそんなに喜ぶなど、余程危なかったのか?」
「リレイは居ますか?」
「居ます……どうしたんですか?」
「奥の少女から伸びている魔力が探知で見えるか?」
「ちょっと待って……見えたよ」
「あれに触れると操られてしまうんだ。
それをみんなに教えてくれ……そして、それに触れない様にしながら遠距離で人間の進軍を止めてくれ」
リレイは頷き、サンドラ様に最初説明した後にみんなに指示してくれた。
「厄介な人達が増えますね……それでも、あなた達が負けるのは変わりはありませんけど」
「お父さん……」
「大丈夫だ……だけどどうしたものか」
『ジン、ルカってやつの能力を防ぐ事は可能だと思うぞ』
『どうやって!?』
『チェーンの効力を常時使えば、お前さんだけは操られずに済む』
『なるほどな……だけど、どんな代償が待っているか……』
『確かにそれは俺にも解らん……が、それしか接近して倒す方法はなさそうだぞ』
『接近か……じゃあ操られている魔術師をどうにかしないと近づく事すら出来ないな……任せられるのはこの2人だけか』
だけど、少しでも触れれば操られてしまう……危険だけど頼むしかないのか……
「2人にお願いがある……奥にいる魔術師を抑えていてくれないか?
俺はルカを止める……」
「でも、お父さんが近づいて操られてしまったならどうすれば……」
「大丈夫……それはなんとかなりそうだから、彼女の相手だけ頼む」
「解りました……僕達で抑えます。
良いよなキョウ?」
「解ったよ……絶対に操られるないでよね」
「もちろんだとも、それじゃあ魔術師を頼んだぞ」
2人が納得してくれた……後はチェーンの力を絶やさない様にしないとな。
力を発動させ、強く地面を蹴りルカに向かって走り始めると、その後を続いて2人が動いた……
「ん?私の能力を知っていて突っ込んで来るなんて頭が悪いのね……
だけど、近づく事が出来るかしら?」
クレアから魔力を感じる……発動する前に衝撃波で邪魔をするが、ルカから放たれた風によって掻き消される。
邪魔をする事が出来ずに炎がクレアの手元に発動すると、後ろから叫び声が聞こえる……
「させるかぁーーー」
響が雷をクレアの足元に向かって飛ばすと、流石にルカが防ぐ事が出来ずに雷が地面に接触……クレアを後方に吹き飛ばし、ルカへの道が開ける。
一気に距離を詰めようとすると、ルカの魔力が俺に向かって来る……
再度チェーンの力で何も起こらなかった事にする為にイメージを送り込む。
「残念ね……遠くから攻撃すれば良いのに、わざわざ操られに来てくれるなんて……」
体に魔力が触れようとした瞬間……直前で魔力が消え去る。
ブラッドの言う通り上手くいった……ルカが油断してくれている今がチャンスだ。
なんとか一撃で決めてやる。
余裕に満ちていたルカの表情が歪む……右腕のパイルバンカーに魔力を通し、ルカに向かって突き出した……
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