再会その3
ルカからドス黒い魔力が蠢いているのを感じる……
『ジン……アイツはヤバい……』
『見るりゃ解る……けど逃げれないだろ』
『近くで感じて解ったんだ……この魔力の感じを俺は知っている』
『でも、相手は人間だぞ』
『そうだが、俺もお前の中にいるだろ』
『もしかして、俺と同じ様に……』
『多分そうだ……だけどアイツは死んだ筈だ』
ブラッドと話している途中、ドス黒い魔力がどんどん広がっていた……
「お父さん……あれはなんなんだ?」
「魔力が見えるのか?」
「いや……何かがモヤのように動いているのは解るけど」
「あれがルカの魔力だ……」
「でもルカはどんなに危なくなってもあんなの魔力を見せた事はないよ」
「何をコソコソ言っているのか解らないんですが、そろそろ殺し合いをして欲しいんですよね……」
ルカの近くにいる魔術師に向かって魔力が近づく……
『あの魔力に触れさせるな!』
『って言われても、こっからじゃ遠すぎて……』
ルカの魔力が魔術師に触れると、膝から崩れ落ちた。
「う…………」
「クレアさん?」
スッとクレアが立ち上がり、こちらに杖を向けて魔法を発動しようとしている……
『何が起こったんだ?』
『あれは、あの能力は……人の感情を操るんだ』
ブラッドと会話している最中に火球が放たれる……込められた魔力量はさほど多くない、これならマントで十分防げる。
そう思いマントで火球を受け止めようとしたその時、こっちに接近して来るのを探知する。
急ぎその方を見ると、先程までは戦闘を行わないと言っていたマーニャがいた……
異様な表情をし、さっきまでとは別人に見える。
「殺す殺す殺す殺す殺すぅうぅ……」
まさか……先に能力に当てられたと言うのか?
『その娘は既に操られてる!』
ブラッドの声が脳内で響く……前方には火球、後方からはマーニャ、既に挟まれてしまっている。
避ければ良いが、避けてしまってはマーニャが火球を喰らってしまう……
そう思っていた矢先に響が俺の背後に移動し、マーニャ目掛けて飛び出す。
マーニャを響へ任せ、前方の火球をマントで受ける……
「マーニャどうしたんだよ!」
「ははっ……キョウ、死んでぇえぇ!」
止めに行った響がまともに蹴りを受けてしまい、吹き飛ばされる……
「響!」
意識を一瞬響に向けたのを見逃さないと、テリーが俺に向かって詰め寄るが、ケインが止めてくれる。
「……兄さん本当に邪魔……」
「あなたこそ……」
そのまま2人でナイフでの応酬が始まり、俺の近くから移動して行った……
急ぎ息子の元へと駆け寄ろうとするが、再び火球が飛んでくる。
受ける事も可能だが今は無事を確認したい気持ちが優先され、回避を選択……火球を回避し前進しようとした瞬間、再びマーニャが突進して来る。
急いで体勢をマーニャに向けると、彼女は俺の首目掛けて蹴りを放ってきた。
ガードしても腕にダメージを負いそうな威力だ……ギリギリだが体を仰け反らせ回避すると、外した蹴りを地面に当てその勢いで俺の方に跳び上がり、腹部目掛けて拳が突き出される。
仰け反った体勢のままで回避は難しく、膝で拳を蹴り上げたがもう1度マーニャから大腿部目掛けて蹴りが襲ってくる。
飛び上がる以外に避ける方法が思い付かず上空へ跳ぶと、クレアから火球が放たれる。
風を操り回避すると、下にいるマーニャが石を投げつけてくる。
飛んできた石に魔力を放ち石をその場で止めるが、マーニャは石を何度も投げつけてくる……最初に投げられた石に魔力を流し込み、石で壁を形成……下からくる石をそれで防ぐが、クレアからの魔法も止まらない。
今度は火球ではなく、炎が生き物のようにウネリながら向かって来る。
下からの攻撃で使っている壁をあれに向けても向きを変えて向かって来るだろうし、そもそもまだ下からの投石は終わっていない……思い切って大きく距離を置いてみるか?
だけど、そうするとケインと息子を置き去りにしてしまう事になってしまう……
「ジンさん手助けします!」
後方から、急変した状況を見てライトが向かってきた。
ライトならば魔力探知出来るから、説明すれば上手く動いてくれるだろう……
「助ける……だけど、奥の少女が放っている魔力には気をつけろ。
あれに触ると操られてしまうぞ!」
「あの異常な魔力ですね……解りました」
そう言うと、俺の下にいたマーニャに向かって仕掛けて行った……
お陰で下からの投石が止み、創った壁に魔力を通すのを止めた。
向かって来る炎に衝撃波を放ち、炎を消す事に成功する。
ようやく攻撃が一瞬止み、息子の元へと移動する事が出来た……
「大丈夫か?」
「……親父……」
「ちゃんとお父さんって言えって……動けるか?」
「何とか……何が起こってるんだ?
急にマーニャがおかしくなるし……」
「ルカってやつから放たれる魔力に触れると操られるみたいなんだ。
お陰でマーニャとクレアって人が既に操られている」
「何でそんな事を……ルカを説得して来る」
「多分無駄だ……彼女はお前等が言う事を聞かなかったらそうするつもりだったんだろう。
仲間を操るのに全く躊躇する様子も見られなかったし……」
「……そんな……シュートは?」
そう言えば彼は操られていないのか、攻撃をして来なかったな……
周りを見渡しシュートを見つけると、ルカの前に立っていた。
「ルカ様止めましょう!
みんなにも止める様に言って下さい……」
マズい……そんなところにいたら操られてしまうぞ……
「無理ですね……あなたも一緒に戦ってきなさい!」
ルカからシュートに向かって魔力が伸びる……
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