再会その2
「戦いを楽しみたいから一緒に戦うのか……」
「そだね。
それで悪い人をやっつけれれば一石二鳥だって言われたよ」
「悪い人か……じゃあ、人間と戦ってるオジさんも悪い人な訳だ」
「う〜んと……そうなっちゃうのかなぁ」
「おや……お父さんはダークエルフの仲間なのか?」
「状況見て解るだろ……俺が戦争の最前線にいるんだ。
俺はダークエルフ達を助ける為に戦ってる」
「何でなんだ?だって人間をむやみやたらに殺す様なヤツらだぞ!」
「それはお前が見たのか?」
「いや……聞いただけだけど……」
「ならば軽率にものを言うんじゃない。
俺はここに来てからずっとダークエルフ達を見ているが、一切そんな事をしていないし、逆に平和に暮らしたいと思う者ばかりだ」
「ですが、先の戦争では大勢の人間が殺されています。
それは間違いなくダークエルフがやった事ではないですか!」
シュートが否定してくる……真っ直ぐで良い少年の様だが、騙されているとは全く思ってもいないのだろう……
「そうだな……俺もその戦争に参加したから間違いない」
「でしたら……」
「先に仕掛けてきたのは人間達だ……外界との縁を切ってまで静かに暮らしていた彼らの平和を壊そうと来たんだ。
必死で戦ったよ……彼等に生きて欲しくて」
「ですが、私が聞いた話しと全く違います……」
「そうです!
あの人が言っているのは嘘です!」
最後尾にいた少女が口を開いた。
「私達は残虐なダークエルフ達を倒す為にここまで来たんです。
静かに暮らしていたなんて事はありません。
私達は人間から、エルフ達から聞いたじゃないですか……彼等が何をやったのかを」
「ルカ様……」
「私達が助けてあげなければ誰が救うと言うのです?
皆はそれを待っているのですよ」
「真実を話されると都合の悪い人が居たか……」
「あなたが誰で何を言おうと行われた事には変わりありません」
「凄い否定の仕方だな……」
「親父……どうなんだよ……」
「お父さんだ!
お前以外のみんなの信用度はあっちがあるだろ?
そんな中俺が何を言っても聞いてくれるのか?」
「シュートなら信じてくれるよな?」
「キョウ……解りません。
私は確かにキョウを信じて付いてきましたが、ルカ様や今まで出会った人々が嘘をついているとは思えません……
だけど、キョウのお父さんが嘘を言っているのかも判断出来ません」
「そんな……」
「当たり前の事だ……俺達がここに居た時間よりも、彼等はずっと長く教団に連れ添ってきたんだ。
どうする事も出来ないさ……出来れば戦いに参加してくれなければ良いぐらいで話したんだからな」
「ルカ、戦争を止めよう……」
「駄目です……」
「何で……」
「彼等を殺さない限り、人々の平和なんて有り得ないからです。
まずはあなたから死んでもらいましょうか」
「死人に口なしってか……ただでは死なないぞ」
「そうですね……嘘を吐き続ける人を生かしておくわけにはいきませんので。
皆で戦いましょう!そして人々に平和を!」
皆が動かないでいてくれればと思ったのだが、ただ1人突っ込んで来る。
「テリー隊長!」
シュートが叫ぶが止まる事はない……話しが出来るのはここまでか。
相手のナイフをマントで受けようとした瞬間に、俺の前に割って入る人物が……
「あなたにこの人を傷つけさせませんよ」
「ケイン!」
ケインのナイフがテリーの攻撃を止めている。
「遅れてすいません……少し回復に時間が掛かりました」
「……どうして邪魔をするんです?」
「邪魔をしているのはあなたでしょうテリー」
「……私はルカ様の命令に従っただけです。
退いて下さい……この人を殺せないじゃないですか……」
「だからさせませんよ。
特に私の弟であればなおの事です」
弟……見た目は女性なんだが、弟なのか?
「……勝手に家から出て行った人を兄と思うと思いますか?」
「そうですか……なら弟とは思いません。
それでもこの人に傷つける様な事はさせませんよ……覚悟して来なさい」
お互いが一旦距離を置く……こっちも話し合いは決裂した様だ。
「助かったよ……」
「とんでもないです。
しかし、遅れて来たのが良かったのかもしれませんね。
あの状態で戦えばジンさんを守れなかったでしょうから」
「そんなに強いんだ……」
「昔の彼しか知りませんが、本気を出さずに勝てるとは思えませんので……」
勇者の仲間で隊長を務めるぐらいだ……弱い訳はないか。
「私の言葉を聞いてくれるのはテリー隊長だけですか?」
ルカが話し始める……皆に言ったのに動いたのは1人だけというのが気に食わなかったらしい。
「他の皆は人々を救う気が無いようですね……残念です」
「考えたんだけど〜私は気が乗らな〜いから止める〜」
「僕もキョウのお父さんと戦いたくはありません……」
「…………怖いから……」
マーニャ、シュートと未だに壁の後ろから少しだけ顔を覗かせているクレアは戦う事を否定してくれた。
「こういう状況だ……止めないか?」
「残念です……残念です…残念です!」
その時に感じていた巨大な魔力が彼女から感じる……キョウの魔力ではなくルカがその人物だった様だ。
「仕方がありませんね……では……」
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