勇者一行
強大な電撃を皆の魔力で強化した壁で防ごうと備える……
十分な魔力が壁に注がれている。
これだけの魔力があれば防ぎきるには十分な強度に達しているだろう。
そして遂に電撃が衝突……凄まじい音が響き渡る。
皆に強度を上げる様にお願いをしている為、破壊された部分の補修は自分1人で行っていく……壊されては補修を行う、補強に関しては皆が行ってくれるから問題ない。
ようやく電撃が止むと壁を乗り越えて1人の女の子が飛び出してきた。
武器を持たず鎧も着ていない、ただ真紅のガントレットを装備している。
凄まじいスピードで本隊へと突っ込んで来る……それを見たフューリーが飛び出し横から蹴りを放つ……躱されてしまうが前進を止める。
その背後からナイフを持った女性が現れ、フューリーを躱し前に出る。
女の子がその女性に対して文句を言い放った。
「テリー隊長ズルいーーー」
「ずるくないし、私はあなたみたいな戦闘狂でもないから戦っても楽しくないわ」
急ぎ止めようと動こうとするがライトが先に飛び出した。
「僕が行きます……」
ライトの言葉に頷ずく……そして相手に斬りかかり相手を止めた。
「邪魔ね……」
「すいません……でも先に行かせる訳にはいきませんので」
2人が止めてくれたので本隊に被害を及ぶ事なく済ませる事ができた…が、まだまだ危機は続く……壁の横から白く重厚な鎧を纏った少年が現れたかと思うと、背中から2m程の長さで異様に太い剣を構えて飛び出した。
あんな重量の鎧と大剣を持っているとは思えない程の突進だ……先程の2人よりも動きは直線的だが速い。
「勝手に飛び出さないで下さい」
大剣を構えライトに向かって近付いている。
俺からそこまで離れていないが、この距離は間に合うか微妙だ……だけど行かなければ……
そう思った瞬間にライトとの間に割って入ってくる人物が目に入った。
大剣の振りの速さと恐ろしい移動スピードで一撃の威力は計り知れない、まともに受ける事すら出来ないだろう攻撃を細いサーベルで流してしまう……
「ライト、もう少し周囲を警戒しなさい。
戦いで正面の敵ばかりを想定していると怪我じゃ済まないぞ」
間に割って入った人物はリュードだった。
流された大剣が地面に接触し土が爆発したかの様に凹み、その回りが隆起してしまった。
「違和感を感じる事なく攻撃をずらされるなんて始めてですね……」
「そうか……君の攻撃は直線的で読みやすかったものでな。
捌くのも簡単だったよ」
2人が目を合わせて睨み合っている……リュードの剣技をちゃんと見るのは初めてだったが、滑らかという印象だ。
流動的な動きをしていたと言う方が解り易いかもしれない。
3人が現れたという事は残り3人が壁の裏に居る……次に仕掛けられた際に対処出来る様になるべく前に出る。
すると、前に出た瞬間に壁を乗り越えて魔法が本隊に向かって炎が広範囲に仕掛けられる。
しまった…前に出過ぎた。
前進していた為に魔法を防げない……だけど威力を落とす事なら出来る。
水の膜を魔法で形成し炎が当たろうかとした時に、突風が吹き炎を小さくした。
お陰で水の膜で防ぎきる事が出来た……
「ジンさん、俺らが本隊は守ってみせるから本隊は気にせずに最初に決まった通り勇者の相手を任せる」
「「そーそー、気にせずに行きなさーーい!」」
現れたのはアリとサリの姉妹と魔獣化したブランの姿だった。
「すまないな恩に着る……本隊への防御は頼むぞ3人共」
3人に任せて再び前に行こうとした時にブラッドから声が掛かる。
『この壁の裏にいる人物の1人が先程感じた巨大な魔力の持ち主だ。
絶対無茶するな』
やっぱり魔力の持ち主は勇者なんだろうな……正確に現状どちらがそうとは言いきれないのだが。
すると魔法使いらしき黒のローブを纏っていた魔法使いの女の子が顔を出し、こちらを覗いているのが見えた。
だけど、彼女ではない……彼女も大きな魔力を持っているのだが、バケモノじみた魔力量は感じない。
『魔法使いが違うとなると……』
残るは勇者と聖女だけだが、今まで以上に緊張感が増す……
これから戦うの聖女と勇者何をしようとも、焦る事のないように心の準備をする。
そして壁の上から姿を現した男が、光魔法で俺を狙い撃ってきた……
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