開戦
陸路を駆け抜けて行く……本隊に戻って救援をお願いしないと、時間が過ぎれば過ぎる程死者が増えてしまう。
交代の為に向かっていた部隊もその場で手伝いをするしかない現状に魔法部隊への連絡が滞ってしまう……そのままだとウィリアム様が言っていた通り、戦力をカバーする事が出来ないままで戦わなければならなくなる為、ショウにお願いして向かってもらう事にした。
出来る限りの速度で移動するのだが上空を移動するのと違い、陸路では時間が掛かってしまう……
既に本隊は戦闘に入ってはいないだろうかと不安になりながら、焦る気持ちを抑えて移動を続ける。
本隊手前の大砲の位置にようやくたどり着くと、まだ戦闘までは始まっていない状況に少し安堵するが、敵の本隊が視認出来る様な場所まで来ていて、圧倒的な人数差が明白になる。
軽く十倍程は差があるだろう……そのまま戦闘になったのであれば、敗戦は免れない。
しかも、相手の策士は明らかに俺より格上……元々こういう戦争に対しての知識が多い訳ではない俺が旗振りをしている時点で、戦略的に負けているのだろうけど……
とりあえず大砲の回りから中から急いで皆で水をかけて湿らせてしまっておく。
6ヶ所は爆発せずに済んだが、次も防げるとは限らない……起こり得る可能性が少しでもあれば摘んでおかなければいけない。
既に相手のペースに飲み込まれているのだから……
十分に水をかけてしまった後、すぐにその場を後にして本隊へと合流する為に急ぐ……
敵が到着するまでそんなに時間は残っていないし、残りの大砲が爆発されないように伝達する必要もある。
ようやく本隊の見える位置まで来た時だった……敵本隊から突出して走って来ている複数の人間を確認出来る。
あれだけ人数がいるのに、十人にも満たない数で突っ込むなんて余程功績でも挙げたいのか……
考えている場合じゃなかったんだ……急いで合流しないと。
そう思い近付いて行くと、本隊も先程の特攻隊に気付いたらしく弓を使い相当な数の矢が降り注いでいる。
それに対して1人の魔法使いが杖を振りかざし、地面を盛り上げて矢を凌ぐ……矢の雨が終わった瞬間に土が砕けて、再び走り出している。
近付いてきたお陰で人数が6人いるのが解った……6人ってまさか……
『ブラッド、俺の探知がまだ届かないけどもしかして……』
『思っている通りかもしれない……さっき魔法を使ったやつもサンドラってやつと変わらないぐらいの魔力を保持しているし』
『そんな最初から勇者一行が突っ込んで来るなんて……』
『マズいな……魔法使い達もまだ来ていない状況で、あれだけの魔力を持つ者がそれなりに力を使って魔法を放てば防げないだろうな……』
『融合は?』
『もう少し待ってくれ……時間きたら教える。
それまではそのままで戦ってくれ』
『解った……死なない様に頑張ってみる』
もうすぐ合流出来るが、話しをしている暇がない……そのまま勇者一行に向かって行くしかない。
本隊から魔法剣部隊が攻撃の準備をしている……物理攻撃が駄目ならば今度は魔法でって感じなんだろう。
魔法剣で攻撃を放とうと合図を待っているが、射程距離に差し掛かる前に先頭にいた男が魔法を発動させ、腕から大きな雷を発生させる。
あんなどデカイ魔法に対して、沢山いる魔法剣で対抗しようとしているが止める事すら厳しいだろうな……
ようやく自分も本隊に合流する事出来、高威力の雷に向かって魔法剣部隊の面々と一緒に魔法を放つ。
そして、相手からの雷がこちらに向かって放たれると、簡単にいくつもの魔法剣が消滅させられてしまった……
最低本隊に当てさせる訳にはいかない……
1枚物の土壁を作成するのではなく、何重にも及ぶ魔法攻撃でも耐えれるように二つの板を創り出し、形状を矢印の三角形に仕上げる。
後は相手の最初の攻撃をいつまで耐えれるか解らないが、周りの皆に指示を出して一緒に雷を防ぐ様に魔力を込める。
「ジンさんどこに行っていたんですか?
いなくなったと思ったら遠くで爆発が起こるし、急に敵の本隊が進軍を始めて攻めて来るしで」
「ライト、話しは後だ!
今は俺が出した壁に対して魔力を込めろ……壁が崩れてきたらすぐに補修する様にするんだ」
ライトも相手の魔力の大きさを感じ取ったのか、急いで一緒に魔力を込める。
何とか耐えてくれよ……
今回もお読みいただきありがとうございます。
ご意見ご感想お待ちしております。
次回もよろしくお願い致します。