炎
今まで喋っていた少女が再び魔獣化する。
体から炎を撒き散らし、猫の様な容姿に変わっていく……そして最終的に実体を持たない存在へとなってしまう。
変化が終わった瞬間に走り出してきた……衝撃波を放ち前進を止めようとするのだが、相手が放つ爆発に掻き消されてしまう。
「無駄な抵抗ですよ……」
「やってみなければ解らないでしょう?」
そのまま斬撃を飛ばすのだが、実体を持たない彼女を斬る事は出来ずに通過してしまう。
「魔力の無駄遣いです」
更に加速して少女は右手に炎で鉤爪を創り、その手でケインを引っ掻いた……
当たる瞬間に少しだけ後方に飛んだのだが間に合わずに、胸に長い引っかき傷を負わされてしまった。
「足を怪我されてるのに頑張りますね。
しかし、勝算もないでしょうに何故避けるのですか?
理解に苦しみます」
「あなたなんかに理解されようなんて思ってもいません。
それに、どんなに不利な状況でも考え続けていれば光明は見えるんです」
「そうですか……せいぜい頑張って下さい。
私はあなたを殺しますから」
再び距離を詰めてくる……確かにさっきの戦闘で足を怪我してしまった私では、死なない程度に避けるのが精一杯ですね。
でも、どこかに欠点がある筈です……それさえ見つければ。
少女が再び鉤爪で攻撃を仕掛けようとしているのを見て、急いで回避しようと横に避ける。
少女はそれが狙いだったらしく、ケインの顔面に向かって膝を突き出してきた。
なんとか両腕で防ぐ事は出来たが、両腕を高温の炎が遅い焼き付ける。
「ぐっ……」
勢いを殺しきれずに吹き飛ばされてしまう。
すると少女は飛び上がり、倒れ込んでいたケインに向かって鉤爪を突き立てようと降りてくる。
あれに刺されれば流石に絶命してしまうでしょうが、この状況での回避は難しい……ここまでなんでしょうか……
そう思っていた時に鉤爪が腹部を突き刺さろうとした刹那、少女めがけて光が放たれた。
直撃する事はなかったが、鉤爪がケインの腹部を貫通する事もなかった。
「兄様……大丈夫?」
「レインのお陰でな……生きてはいる」
「お代わりします」
「妹に頼める内容ではないですが……頼みましたよ」
こっちの会話が少女に聞こえていたらしく、私達に向かって話しかけてきた。
「あなたが私の相手をするんですか?
どうせみんな死ぬんですから、順番を守ってくれれば良いのに」
「させません……」
「では頑張ってみて下さい」
少女がレインに向かって突進していく、ケインを襲った時の様に鉤爪を振りかぶって……
レインは避ける様子がない、臆したのかと思い少女はそのまま振りかぶった鉤爪で攻撃を行う。
すると攻撃がすり抜けてしまう……そして光線が少女に向かって放たれると脇腹をえぐっていった。
少女がレインを探すと、元々立っていた場所よりも後方に位置していた。
「油断しました……光属性の魔法使いならば残像を使う事なんか造作もないでしょうに…だけどあなたの攻撃では私を倒す事も出来ない様ですよ」
えぐれた脇腹が復元された……
「レイン、彼女の体の中にある核を探しなさい」
「核ですか?」
「彼女は斬撃の魔法は避けませんでしたが、衝撃波は爆風でかき消していました……それは、どこかにある核に当たってしまう可能性があるからでしょう」
「解りました……努力します」
「私を無視しての相談は終わりましたか?」
無視されたのが余程頭に来ていたのか、少女はリレイ目掛けて炎を放っていた。
ケインが風を送りレインの体を動かす……ケインのお陰でなんとか回避出来たが、着ていたローブの裾に炎が触れてしまい一瞬で燃え尽きた。
「運の良い方ですね……もう少しで消し炭になれましたのに」
「そうはさせませんよ」
そう言ってゆっくりとケインが立ち上がる……
「レイン、いきますよ」
「はい、兄様」
ケインは風を纏うと、レインは光を纏った。
「お二人共纏いが使えるんですか……厄介ではありますが、それくらいで勝てるつもりですか?」
「やってみれば解りますよ」
ケインは少女の回りに強い風を巻き起こす……すると少女が爆発を起こし風を掻き消そうとするが、風が収まる気配がない。
1回で駄目ならと連続して爆発を起こすが、それでも風は止まない……逆に風は強まるばかりだ。
ケインは1度の風を起こすのではなく何回もの風を起こし、何重にもして風を強めていた。
少女は暴風の中で身動きが取れなくなっていた……そして、風の所為で四肢の末端からどんどん維持出来なくなってきている。
そこにレインが先程とは比較にならない程の大きさの光線を準備しているのが目に入った。
さすがにあれが当たればマズいと思い風から脱出を図るが、体の形成すらままならない状況では身動きも出来ない。
「準備が終われば何時でも大丈夫ですよ」
レインは頷くと少女目掛けて光線を放った。
ケインの風を消し去る程高威力の魔力を込められた光線が少女に浴びせられた。
攻撃を受けた少女は、大砲の土台まで吹き飛ばされて大の字になってうち当てられた。
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