魔獣使い
敵本隊にこっちの騒動は伝わっている筈だが、一向に増援が来る様子がない……
おかしい……本隊から偵察だけでも来そうな気がするんだが、来たのはさっきの大砲を守っていた兵士達だけなんだよな。
あれだけ派手に爆発したんだからバレてそうな気はするんだけど……
ショウを向かわせても良いんだが、何があるか解らないから止めとこう。
何かが起こってからでは遅いから……
あれからしばらくたったが、報告に行った兵士達の所からも襲ってきやしない。
ただただ待つだけの時間が続いていた……
―――――――――――――――――――――――――――――――
一方、魔法使い達はようやく山岳部分の制圧を終わらせていた。
上に何とかたどり着いた4人と、したから登って来た部隊のメンバーで挟み撃ちに成功し、少し休んでいた。
「皆さん怪我は大丈夫ですか?」
少し疲れた顔のリレイが皆に声を掛けた。
最初に返事を返したのはタニアだった……
「私が相手をしていたのは全て雑兵でしたから問題ありません。
リレイ様は大変な輩の相手をしていらっしゃったでしょう?
リレイ様こそお怪我はありませんでしたか?」
「師匠を差し置いて他の者の心配をするとは……」
「い、いえ…そんな事は……」
「冗談よ…しかし、敵が多かったの……」
「これで終わりにして欲しいんですけどぉ……」
「そんな事言っても、ケインは生き生きと戦っておったではないか。
教わったものを思いっ切り使えたのが嬉しかったのか?」
「……確かに少しそうでしたけど、ほとんど魔力切れ状態になるまでの戦闘は辛いですよぉ」
「何が起こるか解らんから、回復薬は飲んでおくのよ。
しばらくは周囲の索敵をしながら、負傷者は待機して休ませるわ」
「では、私は周囲を見回って来ます」
「先程ので立場が悪くなったからと言って、タニアが行かなくても良いのだぞ」
「そ、そんな事ではありません!
体力に自身がある私が行った方が良いかと思ったからです!」
「冗談の通じんやつめ……確かにタニアになら任せられる。
何人かに別れて索敵を頼むぞ」
「はい…それでは失礼致します」
「タニアさん元気ですね……」
「リレイは休むのだぞ、お前さんは先程の戦闘で体を痛めておったからな」
「でも……」
「死んだら誰も喜ばん……生きて帰ってこそ喜んでくれるのよ。
自分だけじゃなく、回りの人の気持ちも大事にするのよ」
「ありがとうございます」
「各員の状態を見て指示を頼む、妾も見回って来るからここを頼むぞ」
「解りました。
では、サンドラ様お気を付けて」
そう言うとサンドラは飛び上がり、上空から周囲を確認しに行った。
リレイとキャメロは皆に指示を出しに回って行った。
リレイは全員の状態を確認し終わって、回復薬を飲みながらゆっくりと休んでいた……
するとサンドラが急降下してきた。
「リレイ、戦闘の準備をさせよ!」
「何があったんですか?」
「敵がまだおったのだ……しかも…」
話しが終わる前にその存在を確認出来た……相手は魔獣使い、しかも相当な数だ。
中には巨大な魔獣を使役している者までいる。
「あんな数がいったい今までどこに隠れていたんですか?」
「それは後で考えれば良い。
今はあヤツらを片付けなければなるまい、急いで準備させよ」
サンドラ様が焦っていた……人間兵には恐れるどころか向かって行ったのに、何かがあるのだろうかと思ってしまう。
気にはなっていたが、最優先で部隊を整えた……
「準備終わりました!」
「うむ……それでは少し状況を説明するぞ。
あの中におる魔獣は様々なのだが、問題なのが数体おる。
まずは飛行型の魔獣が確認出来ると思うのだが、そやつはとにかく速い……魔法で攻撃する際に的を絞らせてくれん。
そのせいで広範囲魔法を使わなければならなくなり、多大な魔力消費をしてしまう。
それと白いローブを纏った魔獣がおるのだが、そやつは魔法の威力を防ぐ魔法を使う、その所為で通常よりも威力を高めて攻撃せねばならなくなる。
そして最後に、陽の光にあたって輝いている魔獣がおるのだが、あやつには魔法が効かん……なので必ず接近戦を挑まねばならなきなってしまう。
とりあえず確認出来ている厄介な魔獣の数がおるから気をつけるのだぞ」
「魔力消費の燃費が悪い戦い方を強いれられるんですね……」
「正解だ……出会った場合の事を想定しておくのだよ」
理解出来た……魔法使いには厳しい条件が重なった魔獣使いが不得手な相手と戦闘を回避しなければ、魔力消費が激しくなると言うのですね。
しかし、当然ながら選んで戦っていたとしても必ず遭遇してしまう……
倒す術を考慮していなければならないか……
今回もお読みいただきありがとうございます。
ご意見ご感想お待ちしております。
次回もよろしくお願い致します。