増援
『まだまだ大砲の場所を制圧するには時間が掛かりそうだな……言っていたやつが来るなら、単独では来ないだろうな。
それまでに制圧が間に合ってくれれば良いんだが……』
『そうだな……だけどその前に他の所から敵が来ているみたいだぞ』
あれだけの爆発を起こせば、そりゃあ他の部隊にもバレているだろうな……他の場所で陣取っている部隊からここに送られて来たんだろう。
とりあえずその場で伏せて様子を見るとしよう。
しばらくすると両脇から人間達が歩いて来た……現場を見て呆気にとられているようだった。
2方向から来たって事は、両隣のヤツらって事か……人数は両方合わせて50人位ってところか。
倒すのは難しくないだろうが、何かを話し合っているようだ。
なんにせよ他の場所が手薄になってくれたのは助かるな……とりあえずは片付けてしまおう。
ゆっくりとその場で立ち上がると、集まった者達が気付く……
「生存者か?ここで何があった?」
「待て!様子がおかしい……兵であれば鎧を着ている筈なのに、アイツはおかしなマントを羽織っているぞ」
「そう言えばそうだ……お前は何者だ!」
「何故俺がお前達に名乗らなければならないんだ?」
「キサマ……死にたいらしいな」
「殺せるのであればどうぞ……」
「ふざけやがってぇ……ここは俺が戦わせてもらうぞ」
「1人で来るのか?
わざわざこんなに人数がいるのに」
「十分だろう?
俺が負ける要素が見つからん」
敵兵の隊長格らしき男が走って来る……接近し、剣を振り上げる。
「死ぬがい…………」
「死にもしないし、お前なんかにやられはしないよ。
まずもって、ここにいる俺が敵と確認したのなら何が行われたのか考えないのか?」
相手の首をショーテルで切断した……
「そんなんだから俺に殺されるんだ……」
そう言い放ち、一気に敵兵に向かって駆け出す。
次々と斬り殺し残りが2人になった時点で止めた……
「あぁあぁ……た、助けてくれ……」
「どうして助ける義務がある?」
「な、何でもするから」
「じゃあ、教えてもらえるかな……お前らの戦略を」
「それを言ったら……」
「じゃあ死ぬか?
お前らに残された選択は2つだけだ……ここで話して逃げるか、話さずに殺されるかだ」
「わ、解りました…話します」
「そうか……じゃあ早速聞くぞ、お前らの本隊はどこに居る?」
「本隊はここからエルフ領との中間ぐらいの位置にいます」
「じゃあ次だ……大砲を守る者で、魔獣化出来るやつは何人いる?」
「知ってる限りでは4人だったと思います」
ここ以外に3人も……ケインやフューリーは大丈夫か?
心配になるが、実力は2人共相当なものだ……大丈夫だと信じよう。
「どこからかダークエルフ領に抜ける道を知っているか?」
「いえ……聞いたことがありません……」
「本当か?」
脅しになればと思い、ショーテルを振りかぶってみせる……
「嘘じゃありません!本当に聞いたことはありません」
ここで問い詰めて本当に知らなかったら、時間を無駄に費やす事になる。
仕方がない……他の質問をしよう。
「勇者は来ているのか?」
「はい…勇者様御一行で来ています」
「御一行って何人いるんだ?」
「勇者様を含めて6人だったと……」
「勇者以外はどんなヤツらだ?」
「正確に答えれませんが……」
「知っている情報を正確に吐き出せ」
「聖騎士のシュート様、魔道士長のクレア様、闘技士のマーニャ様、機動隊長のテリー様、聖女ルカ様と、聖女様に召喚された勇者様です」
多分、ナイト、黒魔道士、格闘家、アサシン、白魔道士、勇者と言った感じか……バランスのとれたパーティーの様だ。
「最後に、ここの戦争を指揮しているやつは誰だ?」
「イライア大司教です」
大司教まで出てきているのか……確か、役職的には3番目に偉いんだったっけか?
「今後の作戦行動は?」
「私達は大砲の守備しか言われていません……他の作戦行動は解りません」
とりあえず聞きたい事は、今思いつく限りではこれくらいか……
「聞きたい事は以上だ……2人別れてここの現状を伝えてこい」
「え?」
「良いから伝えて来い、それでお前らはお役御免だ。
後は好きにすればいい……心配するな、向かう途中に攻撃したりしないから。
たどり着くまで見張ってはいるがな」
そう言うと2人は急いで立ち上がり、別れて逃げて行った。
『良いのか逃がして?』
『伝えてからこっちに来てくれれば、守備の数が減って制圧も楽になるだろ』
『いつ本隊から援軍が来るか解らないのに余裕だな……』
『余裕はないが、何もなくここで立っているよりはマシだろ。
今後の展開も早くなるだろうしな』
『確かにそうだが……お前が死ねばどうなるか考えてるんだろうな』
『あぁ……俺も帰れないし、ダークエルフ達は全滅するかもしれないって事だろ。
十分過ぎるくらいに理解してるよ……』
『それに、俺も一緒に死ぬって事だ!
少しは俺にも気を使えよ』
『解ってるって……死ぬ気も負ける気もないさ。
じゃあ、束の間の休息をさせてもらうよ……見張りを頼んだぞブラッド』
恐怖はずっと続いてる……だけどそれに呑まれてはいけない。
戦っている時間は唯一目の前の敵だけを見ていて、見知らぬ恐怖を感じずに済むんだ。
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