黒豹
「出来るのであればどうぞ……返り討ちにしてあげます」
「威勢がいいね……そう言うの嫌いじゃないよ。
でも、それだけ言うに見合った力がアンちゃんにあるかな?」
離れていた魔力が一気に後方から近寄って来る……
もう少し明確に……魔力をもっと感じるんだ!
相手が近付いて来た所為もあり、姿形が正確に解る……手から伸びている爪で切り裂こうとしているのが解る。
相手が接触しようとした瞬間にライトは振り向き、サーベルで爪を受け止める。
相手は爪を防がれると、すれ違う様にライトの横をすり抜けて再び距離をとった。
「確かに……やるねぇアンちゃん。
小手調べだったけど、しっかり防いでくれたね……こりゃ楽しそうだ」
「楽しい……何が楽しいんですか?
種族が違うけれど、人同士が戦争して殺し合いをしているんですよ!」
「そう熱くなんなよ……アンちゃんが言う通りの戦争とか興味ないんだよね。
俺は強い相手が居てくれるだけで十分なんだよ。
お互いが戦い、結果誰かが死ぬ事になっても強い者に喰われたってだけだろ?
それで生き残れるって最高じゃないか!」
「強い者だけが生き残って、弱かった者は死んでもしょうがないと言いたいんですか?」
「その通り!
アンちゃんの言う通りだ……しっかり俺の心の中を感じられてるじゃないか!」
「あなたが言っているのは、相手が小さな子供がそういう目に合っても同じ事を言うんですか!」
「言うよ……それが自然界じゃ当たり前の様に起きてるじゃないか?
それとも人は自然の輪の中から外れた他の生物よりも尊き存在だと?」
「自然で起きてるのはそんな事ではないでしょう……動物達は殺したいから殺すなんて発想で殺しあっていないと思います。
自分が生き抜く為にやっているんです」
「じゃあアンちゃん達はこの戦争が人間族が生き抜く為に行っている戦争だと言ったら、殺された後に納得してくれるのかい?」
「僕達があなた達に何か干渉しましたか?
そんな事は考えてすらいませんし、ずっと接触すらしていません。
あなたが言う根拠が何一つ無いのにどうやって信じろと?
……それに僕は死にません」
「誰がアンちゃん達にって言ったかい?
……まあいいや、言ってもどうにもならないしねぇ……
さっさと決着着けようか!」
気配は探知出来てる……どこから来ても大丈夫です。
後方でわざとらしい物音を立てて、前方から仕掛けてくる……探知が出来る僕は引っかりませんよ!
向かってくる前方にサーベルに水魔法を纏わせ横に振る……寸前で避けられるが、しっかりと反応出来ている。
「いい目をしてんだな……じゃあこれならどうだい?」
さっきよりも加速している……そのくらいならまだまだ大丈夫です。
探知で追い続けていると、急に反応が2つに増える……
どっちが本体なのかは魔力量で判るけど、この速さで2体同時には追えないかもしれない……
魔力量の少ない方が攻撃を仕掛けてくる……水の魔法剣から土の魔法剣に変えて、攻撃が当たる様に攻撃の範囲を広げる。
攻撃範囲が広がった事をバレない様に突き体勢のままで変更し、突っ込んで来た偽物に刺突で攻撃を行うと、見事に命中するが感触がない……
実体じゃない?
良く見てみるとただの霧だ……するとすぐ後ろから本体の方が接近してくる。
急いで体を反らして攻撃を回避する。
「これも避けちゃったか……どうも見てる訳じゃなさそうだ…な?」
「教える訳ないでしょう!
そんな軽い聞き方されても言うわけないでしょう」
「そうかいそうかい……」
すれ違いに僕の正面に移動して動いてないね……今度はこっちからいこうかな。
魔法剣を風に変えて斬撃を飛ばしていく……大きく移動して回避されてしまうが好機だ……このまま押し切ってみせます。
何度も斬撃を飛ばすと全て回避されてしまうが、攻撃を仕掛けられない様にしておく。
「アンちゃんの魔法はえぇな……避けるので精一杯になっちまう」
魔法剣の大きな利点だ……ただ魔法で発動して斬撃を飛ばすのと、魔法剣で攻撃するのでは大きく速さと消費量が違う。
斬撃の速さが元々ある分速さを増すのも魔法よりも初速が違う。
それと、魔法と同じ速さにするのに少ない魔力で攻撃出来るんだ。
「これだと狙い撃ちだねぇ……」
そう言うと一気に駆け寄って来る……正面からの魔法剣を避けて近づいた。
そして、目の前まで来て接近戦を開始される……サーベルで何とか応戦するが、相手の武器は双剣を持っている。
回転率でどんどん押されていく……
「接近戦は苦手かい?
まだまだ速く出来るんだけど」
これ以上このままは厳しい……ちょっと奥の手を使わせてもらうよ。
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