変化
いい加減キツいわね……守って戦わなきゃならないし、操られちゃうしで……
でも、私の準備もそろそろ終わる頃かしら……
「ジッと動かなくなったのは、ようやく諦めてくれたって思って良いのかしら?」
「いいえ……ようやく私も本気で戦えるかなって思ってたところよ。
諦めてなくて悪かったわね」
「口では何とでも言えるのよ……結果を出してみなさいよ!結果を!」
離れた位置から炎を放ってくる……水を放ち相殺する。
すると一気に距離を詰めて来た。
槍を両手で持ち突きを何度も放つ……剣で弾き盾で止める。
そして接近して視界から外した尻尾を後方から叩きつけようとしてくる……前方からの槍の攻撃で挟み込もうとするが、槍を避けて前に回避する。
抜けきったと思った瞬間に、相手は槍を地面に刺してそれを軸に体を捻らせ、尻尾の真ん中辺りで払いにくる。
それを飛び越えて相手に接近して剣で突いて顔面を狙うが、ギリギリで回避され尻尾で体を引き寄せて再び距離を置く様な形で2人は離れた……
「アンタ……回りにダークエルフが居ないけど、何をしたの?」
「魅了での追撃が出来なくなったのに気づいたのね。
あなたの攻撃だけなら避けるのは問題ないわ……問題だったのはダークエルフが急に攻撃を仕掛けてきた事だったのよ。
だから、魔獣達に近くから追い払ってもらったの」
お陰で相手は今回フューリーに傷を負わせる事が出来なかった……それどころか反撃までされてしまっている。
「それに、あなたが操れるのは男性だけよね?
だから魔獣達も女性だけ集まってもらったの」
「……それが本気で戦える状況って事?それで勝てるつもりなの?
1回も私に攻撃を当てていないのに?」
「まだ私が本気で戦ってるなんて一言も言ってないわよ……本気を出すのは今からかな」
「冗談は程々になさい!」
相手は地面に両手をつき尻尾を高く振り上げ、それをフューリーに向かって振り下ろす。
フューリーは全く避ける様子もない、観念したのかと思い尻尾叩きつけた……
が、結果ダメージを負ったのは魔獣化ラミアの方だった。
自分の尻尾からいくつもの穴があき、そこから流血してしまっていたのだ。
「痛いっ……私の尻尾に傷を負わせるなんて……」
「私の尾の方が頑丈だったみたいね」
フューリーの人間の姿から白い尾が出てきている。
「何なのそれは?アンタも魔獣化出来るの?」
「魔獣化?違うわよ……私自身が……マジュウナノヨ……」
全身が白狐の姿に変わる……
「何?何?どう言う事なの?」
「セツメイスルノガメンドウダカラシナイワ……ドウセシヌンダシシテモイミガナイジャナイ」
相手は一時も目を離していない……いないのだが、そこからフューリーがいなくなってしまった。
周囲を見渡そうとした時に、自分の横っ腹に大きな衝撃と鈍い痛みが襲いかかった。
目の前から消え去ったフューリーがラミアの横っ腹を蹴り飛ばしたのだ。
「……うぅ…何よこの屈辱……アンタなんかに吹っ飛ばされるなんて……絶対殺す!」
怒りに任せフューリーに向かって真っ直ぐに突っ込んで来る……槍を構え全力で突き出すが、当たらない……当たらないどころか急に自分の視界が上空を見上げ、どんどん後ろに向かって視界が変わる。
回避した後にフューリーから顎を蹴り上げられたのだ……確実に顎の骨は砕かれてしまっているが、一瞬の出来事でまだ痛みを感じていないだろう。
相手が地面で後頭部を打ちつけられる……その後から視界も何もかもが消え去ってしまった。
蹴り上げた後に追撃すべくフューリーは飛び上がり、地面に打ちつけられた後に顔面から尾で串刺しにしたのだ。
変化を解いてからたったの3回の攻撃で魔獣化した相手を倒してしまった……単純な戦闘力の差が大きかったという結果が残った。
フューリーは尾を顔面から引き抜き、再び人間の姿に変化する……
元に戻ればなんて事なかったわね……早く変化を解いて倒しとけば良かったかしら……でも最近は人間の姿で居たし、ダークエルフ達に見られるのも嫌だったからね。
見られたら後で変な目で見られそうだから……
それはそうと、さっさと終わらせてジンのところに向かわなきゃいけないわね。
1人で無茶してなければ良いけど……
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その頃ダークエルフの城の外で、人知れず戦闘が行われていた……
そこに居たのはパンサーウォーリアと呼ばれる、黒豹の魔獣の姿になった人間とライトだった。
周囲には既に大多数の人間の死体が広がっていた。
ジンさんの言った通りでしたよ……
どこかから繋がっているダークエルフ領土まで続く抜け穴がある筈で、そこから侵入してくる敵がいるから魔力探知で周囲を警戒しておく事と言われて出て行かれましたけど、正解でしたよ……本当に現れたました。
後残ったのはパンサーウォーリアだけなんですが、早いですね……探知を使わないと居場所が解らない程です……
「そんなにジッとしていて良いのかい?
身体中を切り刻んじゃうよ」
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