兄妹
何度も融合するのは避けたい……しかし時間も勿体ない。
何か手立てがないかと探ってみるが、魔力探知でも弱点が見つからない。
もう一度身体を傷つければ、修復する際に魔力が供給されるかもと思いやってみるが変化はなかった。
むしろ傷つけた場所が更に大きくなっただけだ……
仕方が無いと判断し、融合しようとした時にショウが話しかけてくる。
『ご主人!あれ見てあれ!』
『あれってどこだ?
何か解ったなら教えてくれ』
『えっとねぇ…左肩の部分かな……
他と違う石が混じってなぁい?』
左肩?変わった様子はないんだけどな……
『いや……何か変わった様には見えないが』
『そうかなぁ?
僕には少し光って見えるんだけど』
『ジン…もしかするともしかするかもしれないぞ。
俺達じゃその光が見えないで、ショウにだけ見えてると感じる光って事は考えられる』
『闇の精霊ならではって事か……試してみる価値はあるな。
ショウ、明確に場所を教えてくれ』
聞いては見たもののさっぱり解らない…それでも肩全体を壊せば問題ないだろう。
ひたすら攻撃を躱し続けていたが、相手に向かって体勢を立て直すと一気に距離を詰める。
肩口目掛けてショーテルを土魔法で巨大化させて斬りかかる……
すると、俺の攻撃を全く避けたりガードしたりしなかったやつが横に飛び退く。
『当たっていたらしいな……』
『だけどこれで警戒されてしまったぞ』
『まぁそこら辺はどうにかなるさ』
離れ際に右手首を攻撃して距離をとる。
「なぁ…お前の弱点って肩なんだろ?」
『ジン!何でわざわざ言うんだ?』
「うっすらと光った石が見えるんだけど、それを壊したらどうなるのかな?」
「なっ……どうにもなるものか!」
「解った……じゃあ今から狙い撃ちさせてもらうぞ!
しっかりと防御するんだな」
水弾を多数創り出し、これみよがしに相手に見せ付ける。
「喰らえ!」
そう言うと相手は肩口を両腕でガードする……狙い通りだっ!
固く閉ざされた弱点……外からは傷つけれないけど。
大きな爆発音と共に肩が破壊される。
すると、纏っていた石が崩れ落ちていく……
「何をしたぁあ!?」
「そこまで焦ってるのなら、これでお終いみたいだな。
俺がお前に教える義理なんてないさ……そのまま死ねばいい」
既に殆どの部分が瓦解してしまっていて、最後の腐れ文句を言う事なく顔面も崩れ去ってしまった。
魔力探知を行い生きているかどうかを確認したが、魔力は感じられなかった。
『さて……無事に終わった事だし、残った兵士達を倒してしまおうか』
『待て待て!
何したか教えろよ』
『大体解ってるんじゃないのか?』
『爆破魔法で破壊したのだけしか解ってないぞ。
発動したと思ったら、あいつの肩口が爆発したんだ』
『時間ないから戦いながら教えるぞ。
その石に気付いた後、斬りかかって避けられたよな。
その後の離れ際に右手首を斬りつけたろ、その時に爆破魔法を引っ付けたんだ』
『それが何で弱点の前で……!』
『気付いたか……わざわざ教えたのも、水弾創ったのも防御させる為にしたんだ。
反対側の肩を防御する時に右手首が丁度良い場所にくるからな』
『なるほどな……しかし、良く上手くいったもんだ』
『そりゃあな…あれだけ頭悪けりゃ扱いやすいって事だ。
話しは以上……片付け終わるまで周囲を探知しておいてくれ』
残った兵士達を片付け終わるまではそんなに時間は掛からないだろうが、相手の援軍がいつ来るかが問題だな……
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その頃ケイン達はようやく大砲の近くまで来ていた……
さっきの大きな爆発はジンさんでしょうね……全く派手にやってくれましたね。
お陰で奇襲なんて出来そうもないですよ。
さっきの爆発の所為で敵軍が慌ただしく周囲を警戒している……そう易々と接近出来ない状態になっていた。
でも、時間はあまりありませんね……魔獣達に細かい命令は出来ませんし、こうなったら先に私が仕掛けるしかないでしょうね。
「指示を出します。
ダークエルフと魔族の方々は集まって下さい」
素早く集まってくれた……これからの作戦を皆に伝える。
「私と工作部隊の面々で先に仕掛けます。
その後に魔族の方々は出来るだけ横に広がって合図の後に魔獣と一緒に突撃して下さい。
工作部隊も先に仕掛けると言いましたが、私が先に単独で仕掛けます。
接触したのを確認出来たらすぐに突撃するように……
それと、魔族の方々が突撃する合図は彼女が出す光魔法です。
説明は以上です……皆の武運を祈ります」
これで準備は整いましたね……レインを連れて来たのは正解でしたね。
「では、レイン行ってくる……合図を出す時は任せますよ」
「兄さん……気をつけて下さいね」
ギリギリまで敵兵に気付かれない様に慎重に接近していく……
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