司教
距離を詰め、ショーテルで敵を薙ぎ払っていく……
誘爆のお陰で倒す敵が少なくなってくれて助かる。
だけど、俺の考えが合っていればこれからが本番だろうな。
戦が開始される時間は解らないが、多分ここから攻め込んで来る可能性が高いからだ。
どれだけの数が居るかは不明……それでもここで少しでも時間を稼ぐ事が出来れば良い。
幸い最初に大多数を倒す事が出来たから少しは楽が出来ると思うんだけどな。
周囲を囲まれないように突っ込んで戦闘せずに、なるだけ横に移動しながら戦う……ショーテルのリーチのお陰で一気に数人倒す事が出来るから素早く制圧出来るだろう。
暫くし戦闘を続けていると、奥から大きな雄叫びが聴こえる。
残った敵兵は僅かになったが、まだまだ戦力として用意しているのがいるのか……
そう思った瞬間……大きな影が俺の上から降りてくる。
危険を悟り後方に移動しながら上空に視野を向けた……
人ではないぞ……かと言って質量のある魔法でもない。
俺が立っていた位置にそれが降りてきた……
「チッ…避けやがったか……」
ゴツゴツとした岩の様な身体をした異様な存在……人のままなのか、それとも魔獣化した人間なのか?
「何で人間が俺らの隊を攻撃してやがんだ?」
「お前こそ何者だよ……」
「俺様を見て誰か解んねぇのか?
って魔獣化したまんまじゃあ誰だか解る筈もないか……」
魔獣化したって言ったな、多分だけどゴーレムかなんかの魔獣と化したってとこか。
「一応名前だけは名乗っててやろう、俺はアーノルド司教……」
「お前みたいなのが司教なのか?
教団の役職は筋肉に比例して偉くなるのか?」
「キサマ…教団を馬鹿にした発言……許さんぞ!
キサマだけではなく、キサマの家族や親族すべてを罰してやる」
「俺の名前すら解らんのにどうやってするんだ?
教団はやっぱり頭が悪くても、筋力さえあれば出世出来るんだな?」
言い放った瞬間、怒りに任せて殴りかかって来る。
再度後方に跳んで回避すると、地面が大きく陥没する……
「罰してやる…………罰してやる……罰してやるぅ!!」
拳を振り回すだけの単調な攻撃が繰り返される……そんな攻撃当たる訳がない。
だけど、こんな馬鹿に時間を費やすのも勿体ない……
右腕に腕輪の力を使い、さっきの攻撃以上の攻撃を繰り出せる様にイメージする。
そして、相手の左拳が突き出されたのを確認しパイルバンカーを拳に突き立てる。
すると奇っ怪な叫び声をあげてヤツの拳が粉砕される……それだけでは終わらせない。
仰け反ったヤツに追撃を喰らわせる……胸部にパイルバンカーを突き刺す。
そしてパイルバンカーの中で爆破魔法を発動……大きな音を立ててパイルバンカーの杭が打ち出される。
先日の死霊使いの土人形と同様に身体を飛び散らせ崩れていく……
魔獣化したとは言え、本人が弱ければこんなもんなんだろうな。
後はベースとなった魔獣の能力もそこまでなければ……
嫌な予感がした……ゴーレムの特徴と言えば……
散り散りになっていた相手の身体が集まってくる……やっぱりそうなのか、面倒な事になってきたな。
瓦解した身体が一気に修復された……気のせいかひと回り大きくなってる気がする。
「おのれぇ……よくも俺様に恥をかかせてくれたな」
「大丈夫だって、バカだって事がバレた時点で恥かいてるんだから。
ただ上塗りになっただけだ」
「許せん……全力で殺してやるぅぅ……」
再び身体が巨大化していく……最初に見た時は2m程だったが、その倍位になってるんじゃないか?
この状況から弱点の部分を見つけ出すのは不可能に近い気がするぞ……
「死ねぃ!」
巨大な拳が振り下ろされる……さっきまでの攻撃とスピードが同じだ。
それなら躱すだけでは危険だ。
大きく飛び退き、距離をとる……すると放たれた拳が地面に衝突。
先程とは比べ物にならない程の衝撃が地面から伝わる……隕石でも落ちたかと思う程のクレーターがその場に出来上がってしまった。
下で戦闘すれば危険度が上がる……一旦上空へと飛び上がり、攻撃のみを回避する様にする。
「ちょこまかと……さっさと死んでしまえぃ!」
何度も拳が出し続けられる……巨大化した所為で回避する距離が大きくなる。
面倒な相手だ……回避し続けても、弱点を見つける事は厳しいしな……どうしたもんだか。
考えている間にも幾度となく攻撃が繰り返される……ただただ時間だけが経過していってしまう。
早くなんとかしないと……
『ブラッド、何か良い方法が思い付かないか?』
『あるにはあるが……』
『なんだ……あるなら早く教えてくれよ』
『魔力消費が大きいからお勧めできないぞ』
まさか……
『爆破魔法で消滅させるって言うのか?』
『正確だ。
融合してやったとしても威力を高めないといけないからな』
『でもそれが一番手っ取り早いか……』
出来るだけ消費は避けておきたかったが仕方が無いのか?
今回もお読みいただきありがとうございます。
ご意見ご感想お待ちしております。
次回もよろしくお願い致します。