不可視
リレイさんを助けたつもりだった……
だけど結果として助けられたのは僕だった……
何が起こったのか全く理解出来なかった。
僕の後ろに飛び込んで来たリレイさんが急に吹き飛ばされていった……僕は必死に彼女を空中で受け止めるのが精一杯で、またも周囲の確認すら出来ていなかった。
抱き抱えたリレイさんが風を起こし、何かから僕を再び守ってくれた。
「何がどうなっているんですか?」
「キャメロ君には……見えていないのね」
「何かから攻撃を受けているのだけは解りましたけど、何から攻撃を受けているのか全く見えていません」
「敵の能力だけ伝えるわ、相手は姿を消してるの……多分光属性の魔法でしょうね。
私自身も攻撃が飛んで来るまで、接近された事すら気付いていなかったもの……解った瞬間には囲まれてしまっていたの」
「相手が見えないって……どうやって戦うんです?
「キャメロ君は探知は出来ないのよね……
なら、下の兵士達をお願い……私が見えないヤツを倒すから」
そう言って僕から離れて、何もない場所に向かって飛んで行った……リレイさんは見えているから戦いに行ったのか。
僕も言われた通りに下にいる大勢の兵士達を相手する為に近づいて行った。
魔力消費量を気にして戦ってる場合じゃないよね……魔力を敵の足元に送り込み、その場の土を敵の外に集めてそれを一気にをひっくり返す。
ほとんどの敵が土で埋もれてしまったが、中心部分に残った敵がいる。
くぼんでいてるし、回りは土砂で囲まれてる……逃げ場の無くなった敵に向かって水弾に仕留める。
かなり魔力消費しちゃったけど、これでリレイさんを助けに行ける。
周囲を見回してリレイさんを確認すると、まだ戦っているみたいだ。
助けに行っても僕じゃ見えないし、足で纏いになるかなぁ……
リレイさんの戦闘を少し見ていると、リレイさんを何も無いところを攻撃している様にしか見えないけど……
相手は光魔法を使ってるって言ってたよね……それなら、僕は魔力の線を辿れば見つけれるんじゃないかな?
集中して魔力の線を探す……うっすらと線を見つける事が出来た。
でも、リレイさんは別の場所を攻撃しているけど何でだろう?
リレイさんが攻撃しているのは相手が出している魔力の先だ。
確かに発している場所よりも大きな魔力を感じられるけど……試しにこっちから攻撃してみようかな。
水弾を構えて発射する……魔力を発している場所は全く動いていないから、真っ直ぐ正確に狙った。
「グ……」
すると見事に命中、こっちを見ていなかったのか避ける様な動作もしていなかった。
相手の姿が一瞬見える……相手は人間だと思っていたんだけど、トカゲの様な魔獣の姿をしていた。
すぐに姿を消して、僕には見つけれなくなった。
「キャメロ君ありがとう……相手の場所がよく解ったね」
「魔法を使っていましたから……でも、リレイさんは何でアイツが発していた魔力を攻撃していたんですか?」
「そう言う事だったの……何度も攻撃を繰り返すけど、全く手応えがなかった理由が解ったわ。
私は少しだけど魔力を探知出来るの、お陰で相手を追っていたつもりだったんだけど、それを上手く利用されていたのね」
魔力を探知出来るって……魔法使いもリレイさんぐらいになると、そんな事出来るんだ。
今度色々と教えてもらおう……って先にここをどうにかしないとね。
「リレイさん、一気に2人で倒しましょう。
相手が魔法を使ってくれれば、僕も居場所が判りますから」
「そうね、先を急がなきゃいけないしね。
私が攻撃した後にどっちに行ったのか言うから、どんどんそっちに魔法を撃っていって」
「解りました。
じゃあ、よろしくお願いします!」
リレイさんの指示通りに魔法を放っていく……相手は逃げ回っているようで、未だに反撃してこない。
これだと埒が明かないんじゃないかなぁ……それなら
「リレイさん、攻撃を続けてて下さい。
僕に少し考えがあります」
「解ったけど、無茶はしないでよ」
「はい…では行きます!」
はいとは言ったものの、無茶せずに勝てそうもない……しかも時間まで限られてるから、急がないといけないんだ。
リレイさんの攻撃している方向に向かって急降下する……僕にはまだ場所が解らない、けどおおよそ移動している方向ぐらいはリレイさんのお陰で解る。
途中で止まり、リレイさんの攻撃がこっちに向かって来る……つまり僕を狙いに来たんだ。
「キャメロ君危ないよ!」
「そのまま攻撃を続けて下さい!」
見えなくても、敵が来る位置さえ解れば良いんだ……リレイさんの攻撃が僕の横を通り過ぎていく。
来たかな……コツコツと背後で創った氷魔法の大きな剣山を目の目に向かって放つ。
すると、剣山から大量の血が滴る……
それと同時に敵の姿が視覚で確認出来る様になる。
胸部から腹部にかけて剣山で貫かれている……さっき見た通りトカゲの魔獣だった。
「……何で俺のいる場所が解ったんだ……」
「喋れるの!?魔獣だよね?」
すると、魔獣の姿がどんどん人間に変わっていく。
魔獣か人間なのか……どう言う事なんだ?
「……ちくしょう…………」
その一言を最後に息を引き取った……直後、後ろからリレイさんが近づいて来た。
「無茶はしないでって言ったよね〜」
「すいません!
これだったら僕でも攻撃を当てられるかなって思ったので」
「無事だったから良かったものの、死ぬかもしれないでしょ。
でも、よく敵の位置が解ったわね」
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