考察
人間族が火薬を使った攻撃が可能……どこまでの武器が出来上がっているのか次第で、今後の対応が変わってくる。
「ケイン、火薬を使った物は爆弾ぐらいなのか?
それとも、兵器的な物が他に存在しているのか?」
「そうですね……大きな鉄の筒を使って玉を飛ばしたりしてましたね。
昔の勇者様から教えられた物だとは言ってましたが、戦闘になった時に威力を見ましたが頑丈そうな門を1発で破壊してましたね」
大砲が存在しているのか……余計な知識を伝えて行きやがって……
これによって一気に人数以上の戦力差が浮き彫りになる。
でも、前回の戦争では使ってこなかったのはなんでだ?
「ところで前の戦の時にはそんな物無かったよな……どうしてなんだ?」
「前回は冒険者達を主軸に戦争を考えていましたからね。
それに、あれを運ぶとなると時間と労力を大きく消費するからでしょう。
要はダークエルフの戦力を下に見ていたからだと思います」
使ってこなかったと言うより、使う必要すらなかったと思っていたと言う事か……
前回の戦で負けたもんだから、今回は全力で仕掛けてくるのか。
「今回は大砲まで持ち出している可能性があると思うか?」
「大砲?」
「さっき言ってた鉄の筒のやつだ。
俺がいた世界ではそう呼んでいるんだ」
「なるほど、大砲と言うのですね。
多分今回は持ってきているでしょうね……教団から勇者を出してくる様ですし」
勇者は確定な訳ね……身体の調子が不完全な中でどこまで戦えるのか
「大砲は少なくて何個ぐらい存在しているんだ?」
「そこまでの事は解りませんが、前の戦争の時に出されたのは記憶している限りで8個はあったと思います」
8個もあるのか……遠距離での戦いで固まって行動すれば、狙い撃たれて戦力の大幅削減なんて事もありうる。
けど、射程距離なんかも不明で先に見つけて壊さないと進軍出来ないじゃないか……
「すまないがどうなっているのか説明してもらえないかな?
状況が2人以外は把握出来ていない」
確かにそうだ……2人で話して、みんなが付いてきていない事に気付く。
国王の言う通りで皆で共有しなきゃいけない情報だった。
今までの話しの説明と今後起こり得る事象を説明した。
説明をしていても信じられないという様な顔で見る者もいたが、信じようが信じまいが理解さえしてくれればいい。
「というわけで、先ずは大砲の破壊が最優先事項になります。
なので大砲の発見の為に一帯を捜索してもらわなきゃいけません」
「それはうちの工作部隊で行いましょうか?」
「そうだな……それが良いかもしれん。
他の部隊で行えば戦力を分散してしまう事になる。
戦力を城に残したままで捜索出来るのであれば、それが好ましいと思うが他の者も良いか?」
国王からの言葉に皆が頷く……既に大軍が迫っているかもしれないが、ただいたずらに大砲によって戦力を減らされるよりも妥当な判断だと思う。
「異議も無いようなので決定とする。
だが、それまでの守りはいかがする?
急に攻め込んで来るやもしれんのだろう?」
「多分ですが大砲の射程範囲は城まで至っていないと思います。
もし有効範囲内であれば監視台を狙わずに直接城を狙って、混乱に乗じて攻めて来ると思います。
それを行わなかった理由としては大砲をその範囲内まで運べなかったのではないかと思います」
「では、外で部隊を待機させる分は被害をうけないと?」
「おそらく……森の中を移動するには相当な時間が掛かるでしょうし、それだと穏便に進軍しているなんて不可能です」
「確かにそうですね。
あの大きさで森を進もうものなら絶対にバレます。
私が見た物もかなりの大きさだったので間違いないと思います」
「ならば木々の少ない場所を移動しているが、大砲の射程範囲は城までは届かない」
「絶対ではないですが、それで合っていると思われます」
「だけど、よくそんな巨大物がそこまで接近するのを発見されなかったものだな……」
確かにそうだ……ケインもかなりの大きさだと言った。
それならどこかで発見されてもおかしくない……でも、今も見付かっていないとなると……
「今まで仕掛けてきたのが全て囮とか……」
「まさか……そんな事はなかろう、前回の戦で大多数の被害を受けた筈だ!それが囮などと……」
国王の言うのは理解出来るが……
「被害ですね……確かに一個大隊を倒しましたが、それ以外で戦闘した相手は……」
「冒険者達とダークエルフ軍の離反者達……」
リュードも少しづつ理解してきているようだ。
「我々より圧倒的な数で勝る人間族にはさほど痛くないのか……それ以上に我々ダークエルフ軍より離反させて戦力を削った」
ウィリアム様も同じ考えに至ったのか……
「その所為で一般の者から応募を集い戦力を補う結果になりました」
ライトも不安そうに声を発する。
「そして、ダークエルフの戦力になる全てがここに集まっている。
つまりここを潰せばダークエルフは抵抗出来る戦力を失うという事ですね」
ケインの言葉を最後に静かになる……
ここまで全てが人間達の手のひらの上で踊らされていたと気付く……
「つまりはここまで全てが下準備でこれから侵略を開始すると言う事なのか?」
国王の呆然としながらの言葉が静かになった会議室に響く、誰も言葉を発しない……
「だが、以前よりも軍事力は増しておるだろう?
前回よりも人も揃っておる。
それならば殲滅なんて事にはなるまい、あヤツらの思い描いた結果にはなるまい」
確かに戦力は整いつつあるが今回は多分、軍だけではなく教団からも仕掛けてくる筈だ。
それは人間達の兵士にも告げていないだろう……どこからも情報が漏れない様にしていると思う。
「私達は既に包囲されている可能性が高い……
城までは大砲が届かないにしても、少し離れた場所で戦闘を行えば範囲に入り、敵味方関係無く撃ってくるでしょう」
「しかし……負ける訳にはいかぬのだ。
国を守らねばなぬ……」
こうやって話している間にも敵は攻めて来ているだろう……何か手はないのか?
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