考慮
ライラの気持ちは解っているつもりだ……だけど俺が応えれないんだ。
俺はやるべき事を終わらせたら元の世界へと帰る……それは絶対変わらない気持ちで、その為に努力し続けている。
仮にライラの気持ちに応えて関係を持ってしまった場合、家族への裏切りになってしまうのではないか……
確かにこの世界に家族はいない、だからバレたりする事はないからセーフで、誰かを悲しませる事はない……それでも良いんじゃないかと思う気持ちもある。
それがライラみたいな綺麗な女性であれば喜んで受け入れてしまうのが、男の性なのかもしれない。
けど、そう思ってそう言う関係になれば別の問題がある。
俺は事が終われば元の世界に戻る……それは彼女を捨てるのと同意義じゃないのか?
どのみち良い結果は残らない……むしろ悪い。
だから彼女とは最終的な答えを出さずに、ただ曖昧な距離感をとってきたんだ……
前に言ってくれた事を忘れてはいない、この世界にいる間はって言われたので自分にそう言い聞かせた。
けど、彼女はそれでも良いから一緒にいたい……俺も応えてあげたいが、悲しませるのは明白。
「ライラ……俺はお前とそう言う関係になれば、結果誰も良い思いをしないんじゃないかって思ってる……」
「それは私も含まれてる様な言い方じゃない?」
「そういう意味で言ったつもりだ。
先で必ず別れてしまう事が解って付き合うのは辛くないのか?
もしそうなったら俺は辛い……愛した者を残して戻る事を考えたら特に」
「私はそうは思わないし、結果が全てじゃないって思ってるわ。
だって、最後に離れ離れになってしまっても、貴方と過ごした時間や経験が私をずっと助けてくれる。
思い出に支えられてずっと生きていける!」
「でも……」
「貴方が思ってる程、私は弱くないし強くもない。
私のこれからずっと先の人生の全ては貴方との関係と、そうなった時からの時間なの……そうなれば私は幸せよ。
貴方と別れたとしても、貴方を引きずって生きる程弱くない。
でも、貴方と一緒になれない人生を生きて、貴方とは一緒に居れなかったから他の人とって思える程強くないの」
彼女は今まで以上に心の中をさらけ出している……俺が考えている彼女とは少しの相違があった。
確かに彼女の将来は彼女の物だ……俺が勝手に決めつける物じゃない、彼女自身の問題なんだ。
だからと言って、家族をないがしろにする様な行為は決して良い事じゃないのは間違いない。
「ライラの気持ちは解った……けど、向こうに残してきた家族に対しての想いがある。
それを裏切る結果になるのは心苦しいんだ……それもあって今まで答えを出さなかったって事もある」
「それに対しては私が決めれる事じゃないから……ジンの気持ちに任せます。
でも、ジンが帰ってしまうまでの時間はいくらあるか解らないでしょ?
それにさっき言った通り、私が死んじゃう可能性だってあるわ。
卑怯な言い方だけど、その時になって後悔したくない……出来るだけ貴方と繋がっていたいの」
確かに今回ライラは死にかけた……もし次に俺が助ける事も出来ないままで死ぬ事になったら……彼女は何も出来なかった事の方が後悔してしまうと言う事……
絶対助けるとか言っても責任を持てないのが現状で、少しでも一緒にいる時間を作ってあげる事の方が彼女は幸せ……なのか。
「ライラ、お前が城に戻って来るまで考えて良いか?
すぐには答えを出す事は出来ない……考える時間が欲しいんだ」
「……うん」
「それまでにはしっかりと決めておく……だから待っててくれ」
「帰ったらすぐに聞きに……行く」
「解った……じゃあまたな。
早く結果を聞きたいからって無茶するなよ。
しっかりと良くなってから帰って来なきゃダメだぞ」
「う…うん、解ってるよ」
いや……今の感じは動ける様になったらすぐにでも来そうだったな。
念押して誰か見張っててもらわないと怪しい……
そう思いながら部屋を後にする…ライラは笑顔で手を振ってくれた。
しかし、悩み事が増えてしまった。
兎にも角にも答えを出す為に考えないといけない……でも今は城に戻れる様に体をどうにかしないといけない。
自然治癒が1番だけど、そうも言っていられない……今回戦闘になったのが武具を回収して、どこかにいる部隊と合流する様な感じだと思う。
それならば近くまで来ている可能性が高い……しかも、その部隊が来ないとなるとどう動くのかを考えないといけないだろう。
武具が足りないのであれば、攻め込むのを躊躇して留まっているか
武具の補充が目的だったら、攻めるだけの準備は出来ていて何時でも行動開始出来る。
後者だったらマズいな……今攻められたら危険極まりない。
だって俺たちは城とは違う場所にいるんだから。
体の状態を気にしている場合じゃないか……一刻も早く戻らないと危険だ。
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