回復
……これなら上手くいくかもしれない。
ひとつだけ答えが出た……出血多量の場合は確か、脳に血液が回らない時間が長いと危険だと聞いた事がある。
それなら悩んでいる暇はない、すぐにでも実行しないと……
チェーンにイメージを伝える……ライラの傷半分を受けてはいなかった事にする。
イメージが終わり、チェーンが光ると同時に俺の体に激痛が走る……ダメージで換算されている。
力は上手くいっている……そして少しの倦怠感が襲う。
俺の中の血液が奪われていっているのだろう、軽く目眩がした。
これで成功しているのかを確認する為に、メロとサリにもう一度診てもらう様にお願いする……
換算が終わってしばらくその場に座って待っていた。
座って待っているとメロが近づいて来た……どうなったのか急いで答えを聞きたい。
「どうだ?大丈夫なのか?」
「何をされたのか解りませんけど、もう大丈夫です。
サリさんにも確認してもらったんですけど、回復薬を少量与えてしばらくしたら目を覚ますと思いますとの事でした」
「なら良かった……」
けど、俺の体調は良くない様でボロボロだ……いつもなら寝ている時間って事もあり、疲れと眠気で意識を保つのがやっとだ。
「フューリーを呼んでくれないかな……」
「解りました…ちょっと待ってて下さい」
メロが走ってフューリーを呼びに行ってくれた。
なんとかフューリーが来るまでは意識を保たないと……
どうやら近くに居たのか、すぐに連れて来てくれた。
「すまないフューリー…俺が起きるまで、俺の面倒を頼めないか?
もう意識が落ちそうだ」
「良いわよ……ゆっくり休んで、後はなんとかするから」
「頼むよ……この後はウィリアム様の指示で移動を開始して…くれ……」
そこまでが限界だった……そのままそこで意識を失った。
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目を覚まして最初に視界に入ったのは白い天井だ……どこかの部屋に運び込まれていたのだろう。
ゆっくりと起き上がり周囲を確認するとフューリーが横の椅子で座って眠っていた。
窓の外を確認すると、外は暗く夜の様に感じた……寝かされていたベッドから起き上がろうとすると、軽くフラついてしまう。
それでベッドを揺らしてしまうと、椅子で眠っていたフューリーが目を覚ました。
「ようやく目を覚ましたわね……」
「すまない休んでいたのに……ところで今は夜なのか?」
「そうよ。あれから意識が落ちたジンをここまで運んできて、丸々一日は眠っていたのよ」
という事は試験は……ヤバイな…だいぶやってしまった感が……
「今日の試験最終日をすっぽかしてしまったな……ってそれよりもライラは大丈夫なのか?もう目を覚ましたか?」
「ライラなら大丈夫よ。
あなたより早くに目を覚ましたわ…まだ動き回るのは禁止してるけど、明日には少し動ける様になるみたい」
良かった……どうにか成功したんだな……
しかし、本当に万能な力だけど代償が怖い……考えなしに使える力じゃないな……
でも、使わなきゃいけない場面はこれからもあるだろうし、何に対してどういった対価が必要になるのか調べる必要があるだろう。
「とりあえず貴方も安静にしとかなきゃいけないわよ。
朝になってみんなが起きてきたら知らせてあげるから、それから診察してもらいなさい。
それまでまだ時間もあるからゆっくりと眠ってると良いわ」
「色々と助かったよ……本当に余計な事ばかり頼んですまない」
「気にしなくても良いわよ。
だって貴方がいなくなったら、私の本願が遠くなるじゃない。
だから助けてるだけ」
「ありがとうな……じゃあ、言われた通りに休むよ」
「私は別室でゆっくり休ませてもらうわ。
また明日ね……」
そう言うとフューリーはドアに向かって歩いて行った。
「貴方に頼られるのも悪い気はしないの……」
ドアを閉める間際に小声でフューリーが何か言った気がするが、聞き取れなかった。
何か言ったのか聞こうとしたが、そのまま出て行ってしまった……明日も会うんだ明日聞けば良いかな。
再び床につき瞼を下ろした……
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翌朝目が覚めると、アリとサリとメロの3人が部屋に訪れていた。
「「起きたーーー!ジンおはよーーーー!」」
「あぁおはよう……朝から元気だな」
「おはようございます。
体の具合はいかがですか?」
「メロおはよう…昨日一日たっぷり休めたし、だいぶ体の調子は良いみたいだ」
「そうですか、アリさんからも体の魔力の流れも大丈夫との事でしたので安心しました。
一応魔力回復薬を飲んでおいて下さい。
昨日休まれておおよそ回復しているとは思うんですが、念の為にお願いします」
渡された回復薬を口にすると、多少倦怠感がなくなった気がする。
体の調子も割と良くなってる……体を動かす分には問題ないだろう。
「ところでライラは起きてるのか?」
「えぇ、先にライラさんの様子を見に行きましたので…その時起きられましたよ」
「じゃあ、会いに行ってくるよ。
どこにいるのか解らないから、誰か案内を頼めるか?」
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