侵攻
「我々がドワーフ領土に着いてすぐの事です……皆が集まり、移動を開始しようとした時に事は起きました……
最初は私も後方に居たので、何があったのか解らなかったのですが……」
「人間が攻めて来たのか……」
「そうです。
しかも、300人以上はいたでしょう……我々の部隊は約100程でも、半分以上は後方部隊です。
戦闘を主とした部隊ではありません……前線で我々憲兵部隊が戦っていても、数で圧倒されて追い込まれていました……
そこで、ウィリアム様の命で救援を呼びに行く事になり、私が選ばれました。
ですが、人間達からの追っ手が来たんです」
「そして今に至るって事か……」
しかし早過ぎる気がする……俺らが去ってそんなに時間が経っている訳じゃない。
考えられるのは、武具の回収を行いながら侵略を開始していたか……それなら早い遅いの問題ではなく、時期をみて侵攻していただけの事だ。
それ以外を考えると……いや止めよう、推測ばかりしていても侵攻を止められやしない。
今は最優先事項として救出を考えなければならないんだ。
「アーチ疲れているところすまないが、このまま城まで救援を頼めるか?」
「解りました。
ではジン隊長はいかがなさるのですか?」
「俺はこのままドワーフ領に向かう。
少しづでも人手が必要だろうから、なんとかやってみるさ。
一刻を争うかもしれない、じゃあ頼んだぞ」
「はい…ジン隊長もご武運を」
アーチは再び城に向かって移動を開始する。
俺はライトのところに行って、今の話しを行った……
「そうですか……私に戻れとおっしゃらないところをみると、私も同行すると言う事ですね」
「そうだ……俺は先に移動するから、後を追って来てくれ。
後はお前の判断に任せる。
それと、生きてるやつから何か情報は聞けたか?」
「情報を聞き出す前に自害しました……失敗した際には自害する様に薬を持たされていた様でした」
「そうか……今回の侵攻はそれだけ重要な事なんだな。
それなら尚更急がないとヤバイな」
「ですね。
では急ぎましょう!」
ライトは馬に乗り移動の準備をするが、俺は馬にも乗らずに立っていた。
「行かないんですか?」
「行くよ……だけど、馬には乗らない。
上を飛んで行くのさ」
その言葉の後に融合を行い、上空へと跳び上がる……
「先に行って待ってるぞ……」
そう言って一瞬でその場から立ち去る……このスピードなら10分も掛からないだろう……
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ドワーフの村の位置が見えた……上空から確認してみると、確かに言われた通りの大軍だ。
この状態なら一気に片付けてやれるか……融合状態のまま、大軍の後方から突っ込む。
そしてそのまま爆破魔法を準備して地面へと蹴りを放ち、接触した瞬間に俺を中心に大きな爆発を起こす。
爆発の衝撃は凄まじく、50m位の範囲をクレーターと化す。
爆発の威力で後方で纏まっていた軍は一気に姿を消してしまった。
もう一度上空へと跳び上がり、状況を確認……すると、約4分の1は消え去ってしまっている。
そのまま前線の敵も片付けたいが、味方にも当たってしまうかもしれないと考え、下へと降り立つ。
ここから先は格闘戦だ……一体一体倒せば時間も掛かる。
それなら味方に影響が出ないくらいの広範囲で攻撃を行えばいい、爆破魔法を準備して大軍の中に突っ込むと、中にいた人間に対して爆破魔法をセットして離れを繰り返し、1度後方に下がった後に複数に付着させた爆破魔法を起爆させる。
轟音と共に大きな爆発が起きる……多くを巻き込み吹き飛ばしていく。
まだまだ敵は大勢いる……もう少しペースを上げないと……
いくらかは特訓のお陰で融合状態の継続時間は長くなったが、制限時間はそんなに長くない。
先程の攻撃と最初の奇襲のお陰か、相手は怯んでくれている。
それならば都合が良い……そのまま追い込んでやる。
『ブラッド…気合い入れるぞ』
『あぁ…最近の特訓の成果を見せてやろうじゃないか』
距離を詰めて再び攻撃を開始する。
土魔法で巨大な岩を形成し、上空から振り下ろす……岩の衝突により纏まって倒す。
追撃として風魔法の斬撃を複数飛ばし、岩の攻撃を免れた相手を倒していく。
再度上空へと跳び上がり水魔法の弾丸をブラッドに形成してもらい、マシンガンの様に連射して近くの人間から倒す。
次々に人間を倒していくと隊列が大きく乱れ、中には隊から逃げ出す者もいる……こうなると纏めて倒す事は難しくなるが、危険度が大きく下がる筈だ。
前線の部隊までこうやっていけば戦局はこっちに傾く……そして、残った敵を全員で潰せばこっちの勝ちだ。
まだまだ魔力の残量はある……水魔法を撃ち続けるのは大丈夫だ。
反撃は全くない……どんどん離散していく、それでも手を抜かずに倒す…倒す……倒す………
残るは半分以下……広範囲に散り散りになった人間達を倒すには、このままの水魔法では効率が悪い……ショーテルを持ち、土魔法で今までで1番の長さの剣を形成した。
魔法剣を横に振り、散り散りになった者を残らず倒す……剣の重さは感じないが、さすがに長く造り過ぎた。
空気抵抗が大きい……ただし1度重さを感じてしまえば腕輪でそれを軽く振るイメージを固めて効力を駆使して攻撃出来る。
後はこの調子で始末していけばいい。
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