不穏
俺も部屋に戻り装備を取る。
外に出るとライトが待ってくれていた……急いで馬に乗り、明かりが見えた方角に向かって馬を走らせる。
かなり遠くで光ったが、急げば往復でも朝には帰れるだろう……何も無ければの話しだが。
暗くて何があるか判らないので、ショウを呼び出して前を行かせる……闇属性の精霊だけあって、夜でも視界は確保出来るらしい。
明かりが見えた場所まではまだまだ距離があるが、向かっている途中に何かがぶつかった様な音が聞こえた。
場所はそんなに遠くないが、暗くて何が起こっているかは判らない……すると、いくつもの音がこちらに響いてくる。
「ジンさん近いですよ」
「だけど、前も見えなくてサッパリだ……」
『ショウ、解るか?』
『まだなんともです〜。
でも、土煙みたいなのが上がってる気がします』
土煙?まさか魔法を使っているのか?
もしそうであれば、人である可能性が高い……音のする方向に魔力探知を行うと、魔法の発動を確認出来た。
という事は、誰かが戦っているって事だ……もっと急がないと。
「ライト、誰かが戦っているのは間違いない様だ。
もう少し急ぐぞ……それと、魔力探知は行っておけよ」
「解りました!」
道を進みながら、警戒を強める……視界に頼れないから、探知が無ければ戦闘自体出来ないかもしれない。
道が軽くカーブしていて、そこを曲がった瞬間に理解出来た。
こっちに向かっている1人を追うようにして10人程がその背後を来ている。
「ライト準備は良いか?」
「はい!行きましょう!」
視覚は頼れない……魔力探知のみでの戦闘になる。
追われていた者とすれ違い、一直線に敵と思われる者へと突っ込む……向かっている途中、相手から魔法攻撃が飛んでくる。
魔法自体の威力は恐れる程ではない……ショーテルに魔力を通して弾く。
ライトの方も魔法剣で上手く弾いていた……これくらいの相手なら問題ないだろう。
殺してしまえば情報を得る事も出来ないだろう、ショーテルを鞘に戻し格闘戦に切り替える。
それでも加減しないと殺してしまう可能性は高い為、出力を抑えて攻撃を行う様にする。
確認出来る魔法の属性自体を目で確認出来ないし、魔力探知のみでは属性の判断は難しい。
いくら魔力で腕を覆っているとは言っても素手で弾くには危険過ぎる……これからは回避を最優先に行動していく。
相手は足を止めての戦闘を行う様子だ。
それなら好都合……わざわざ接近せずに狙い撃ちするだけ、距離を置けば格闘魔の威力は落ちてしまうが、殺傷能力が低くなり加減する事もなくなるだろう。
相手は暗闇で俺らを把握出来ていないのか魔法の数も少なくなり、撃ったとしても明後日の方角だ。
腕に魔力を込めて広範囲に狙える衝撃波の風魔法を放つと、見事に命中……それで体勢を崩している相手に対し、ライトは一気に距離を詰めて斬撃で3人を倒す。
ライトに相手が気を取られている状態で、俺に対して警戒が薄れた瞬間に上空へと跳び上がり拳に土魔法を纏い、巨大な岩石を完成させる。
そのまま拳を振り上げ、一気に残りの相手を押し潰す……相手と接触する音よりも、地面に岩石が当たり陥没させる音が大きく聴こえた。
いや……完全にやり過ぎた。
これは生きていないのかもしれないな……魔力探知で確認すると、直撃した者は4人だ。
残りの者は衝撃で吹っ飛ばされているだけの様だった。
まぁ、直撃した4人は魔力も微力に感じれるだけになっているから、瀕死なのかもしれないが……
残った3人はまだ動いている……立ち上がり剣を握っている様で、俺に対して向いている。
そんな事すればまたライトが……思った瞬間に切り伏せていた。
「これで全員だな……ライト大丈夫か?」
「全く問題ありません。
訓練の成果ですね……こんなに動ける様になっているなんて、驚きました」
確かにライトの動きは以前と比べても比較出来ない程だ……魔力探知を駆使する様になって動きに迷いがないし、攻撃のタイミングもバッチリだ……俺に気を取られている瞬間を見逃さないなんて、この暗闇で体の向きまで正確に判断している証拠だ。
「俺の方がもっと驚いているよ……それよりさっきすれ違った者は?」
『大丈夫だよー。
ここで休んでるよー』
ショウからの返事が聞こえた。
その場ライトに任せて、急いでそっちへと向かう。
「大丈夫か?」
「その声はジンさん……じゃなくてジン隊長ですね。
2度も同じ様な状態を助けて頂けるなんて申し訳ないです」
2度も助けたって言うと……
「アーチか?」
「そうです。
本当に助かりました……でも、まだ本隊が危ないんです!」
「何があったんだ?
ドワーフ領土からの移送中に何かあったのか?」
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