技術部隊試験その3
技術部隊試験の2日目、今日も3人の担当の面接が続く……既に俺は進行役となっている。
だけど、受験者達のスキルを見ているのは楽しくなってきた。
特異なものを行う受験者は昨日のミリー以降見ないが、それでも匠の技を持った受験者がいる……見ていて関心する様な手裁きや機械の様な精密動作、現実世界でも見た事ない始めて見る薬の調合……数々の特技を披露される。
その中でも目を引く者だけを追加審査していく……今日は昨日と違い、数多くの者を追加審査している。
その中、高齢の受験者で気になった者がいた。
その女性の名前はメイルと言っていた……その者の特技が装飾品に魔法の加護を付与するといった感じだ。
この世界では珍しい技術だった様で、ダグもリレイも食いついていた。
装飾品以外にも付与する事は可能だが、それだけの魔法に耐えられる素材が無いと難しいって言っていたな……つまりは素材さえあれば加護付きの武器防具が造れると言う事だ。
昨日のミリーと似た様な特技だが、魔骨石を使わずに精製可能なところでは利点があるけど、最初からその属性を調べて準備しなきゃいけないといったところを考えれば、どちらかはそのシーンに合わせて使い分ける様な感じになるのか……
そして、今日一日で1番気になったのがガモンと言った男だ……見せてもらったのは、ただの木材を一瞬にしてロープの様に柔らかくした。
みんなもどういった仕組みになっているかは全く理解不能だった様で、全員で軽くパニックを起こしていた。
軽く説明を聞いたが、魔法を使ってやっているって事は理解出来た……リレイもしっかりと聞いたが、完全に理解出来なかった様だった。
似たような事をキャメロもやっているが、あれは伸ばしたり曲げたりといった魔法を使った操作だが、これは完全に木の性質が変わっている。
とりあえずタネ明かしは入隊してもらってからになるだろうけど、解るまで気になってしょうがないな……
今日気になったのはこの2人だろう……採用する人員は他にもいるが、こういった者は多く欲しい。
考えても出てこない様な技術を持つ者を集めて、戦闘や生活を更に飛躍させる事を第一に考えて造る部隊なのだから……
今日の試験も一通り終了……まだもう少し残っているらしく、明日が最終日になるだろうという話しだった。
この日は皆で夕食を頂こうと言う話しになり、4人で食堂へと向かう。
今日の出来事を話し合いながらの夕食だけど、楽しい時間だった……これで戦争なんか起こってなかったらと深々と思ってしまう。
でも、そうじゃなきゃ俺はこの人達に会うこともなかった……これを良い思い出に出来るように絶対勝たないといけない。
夕食を終えて裏山に入る……ブラッドを呼び出して融合状態での特訓だ。
昨日よりも動きが良い……集中も切れずに特訓を行えた。
『なんか吹っ切れたのか?』
『そうだな……今まで目標がずっと遠くて、しかも答えが見えてなかったんだ。
やる事は明確なんだけど、その犠牲には誰もなって欲しくなかった……だから俺が頑張って守らなきゃって思ってた。
でも、みんなで協力して結果に向かう事も出来るんじゃないかって思ってな。
いつも何かあれば誰かに助けてもらおうとするのに変だよな』
『人の手を借りるのは得意だもんな』
『そう言うなよ……でも、身近な目標をひとつひとつみんなで達成していって、尚且つそれで答えを出していければ良いのかもな。
それで、ここに来て良かったって思える様になれば最高だな』
『そういう考えもあるのかもな……俺もお前さんと一緒に存在出来て良かったと思える様に、協力させてもらうさ』
『頼むな……ブラッドのお陰で今を生きてるって現実もあるからさ』
ブラッドも俺も気が楽になっていた……気持ちは2つでも、体は共有している。
頭ん中は読めてしまう分、俺が落ち込めばブラッドも同じ様に感じて落ち込んでしまうのかもしれない……
気持ちひとつで戦闘に影響が出てしまうのは駄目だ……もっと前を向いてポジティブにいこう。
特訓を終えて部屋へと戻る途中に気になる場所で明かりを見つける。
方向的にはドワーフ領土の方なんだけど……
その場所に向かうのは良いんだが、1人で行くとまた入り口が判らずに迷ってしまう可能性がある為、付き添いをお願いしに行こうとすると、丁度いい所にライトを発見する。
「ライト、今から少し時間を良いか?」
「大丈夫ですけど、どうにかしたんですk?」
「向こうで明かりを見つけてな、何もなければ良いんだけど……何かあった時は問題だから見に行く」
「そう言う事ならば構いませんよ。
では馬を用意して……」
「解ったけど急いでくれ。
嫌な予感がしてきた」
危険を知らせるかの様に、冷や汗が背中を伝う……