技術部隊試験その2
次々と試験を行っていくが、俺の採点出来る様な人物は来ない……試験応募の内容から考えても当たり前なのかもしれない。
魔力以外の凄さなんて判断もつかないし、どうしたもんだろうな……
昼休憩の後、午後の試験を始める。
昼からも技術者達の面接が続く……とはいえ、実際に面接までいった人は最初の1人を含めても5人程度だ。
その全員が、自分達で店を持つなりしていた……毎日の鍛錬で培ったものだけあって、馴れた手つきで安心して見れる特技だった。
ひたすら試験を行っていくと、今日最年少であろう女の子が入って来た。
まだ10歳そこらだろうか?背が小さい所為か、腰まである髪が目を引く……その若さでどんな事を見せてくれるのか少し期待してしまう。
「では名前からどうぞ」
「は、はい……名前ミリーと申します」
「ミリーちゃんだね……ここでは最初に特技を見せてもらう事になってるんだ。
あらかじめ用意する様になっていたと思うんだけど、大丈夫かな?」
「持って来ています。
大丈夫です!」
明らかに緊張している……人目で緊張してしまうのか、目線を合わせずに部屋の壁の高い位置を見ていた。
「ミリーちゃん、そんなに緊張しなくて良いよ。
何かして怒ったりする事もないし、むしろどんな事をしてくれるのか楽しみにしてるからさ」
緊張していたのを見透かされたと思ったのか、そう言った瞬間に若干ビクッとしていた。
そして、話し終わった後にようやく目を合わせてくれた。
「ありがとうございます。
大した特技ではないんですけど、よろしくお願いします」
そう言って、ミリーちゃんが取り出したのは小さな黒い石だ。
この世界に来て始めて見る石で何の石かが気になって他の3人に尋ねて見る事にした。
「あれを見た事あるか?」
回り見て確認すると、バズが答えを知っていて教えてくれた。
「ありゃあ魔骨石って言ってな、魔獣の体ん中にある石だ。
魔獣の生態に大きく関わるもんでな、あれのお陰で火を吹いたり出来んだ。
鍛冶では良く使うもんでな、お前さんに造った武器にも入ってるぞ」
パイルバンカーにも入ってる……確かに少量の爆破魔法でも、威力が増幅されたな気がする。
それがあの石のお陰って事なのか……
「その魔骨石で何を見せてくれるのかな?」
「見てもらった方が解りやすいと思いますので、最初に実演しますね」
そう言うと、その石を上に放った……投げられた石に若干の魔力を感じる。
すると急に魔骨石から水が溢れ出てくる……だけど、ミリーちゃんから魔力を発生してはいないし、魔力も繋がっていない。
「水の魔骨石ってぇ事か……」
「いえ……そうじゃないんです。
もう一度いきますから見てて下さい」
落ちた石を拾い上げて、再度上に放る……すると次は砂が飛び出してくる。
複数の属性を持っているって事なのか?
「なんで違う魔法が発動すんだ!?
魔骨石の属性は1つだけだぞ!」
「そうです。
通常であれば、魔骨石の属性は1つだけなんですけど、ある加工で造った魔骨石は複数の属性に対応するんです」
「ある加工で造るってぇと!」
「ここで見せれないんですけど、魔獣を使って行うんです」
「いやいや、すまん……興奮してついつい聞いちまったな。
そっから先は採用してから聞かなきゃなんねぇ……今はまだ聞いちゃいけねぇよ。
本採用になったら教えてくれよな」
「はい!よろしくお願いします!」
「水を差す訳じゃないんだけど、まだまだ面接の続きがあるからね。
とりあえずはそれを終わらせよう」
「すいません……続きをお願いします」
まだまだ後も控えてるから、一通り面接の続きを行った。
「じゃあ、採用か不採用の通知を送るから、それまで待っててね」
「はい!
今日はありがとうございました。
皆様よろしくお願い致します」
元気よく部屋を出て行った……心の中じゃ皆が採用すると思っているだろう……特にバズは絶対採用だろうな。
その後、数名の試験を終わらせて初日の試験を終了した。
皆で選定の時間を少しもうけて話し合ったが、どこからを採用のラインでするかを決めるには早計じゃないかとなり、試験が終了してから選定を行う事になった。
人員の関係上、採用出来る人数も決まっているから多すぎてもいけないし、少な過ぎても作業がはかどらなくなってしまうからだ。
明日も早くから試験開始と言う事で早目に解散した……
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