成長2
キャメロのやつ、あっさりと勝ちやがったな……試験の時はなんとか上手くいったって感じだったのに。
それに、最後に使った水魔法の剣だ……なんであんな形状なのかって思ったけど、使われると納得した。
相手の剣で斬られても、魔法の効果が途切れずに相手を斬る事が可能なんだ……幅が短いと、斬られてしまうとそこで魔法が途切れて斬った先が落ちるが、あの幅あれば斬られた先を修復出来る。
つまりは普通の剣ではガード不可能に近い剣になる……今回みたいにショートソードが相手なら尚更相性が悪い。
これもサンドラ様との特訓の成果って事か……
膂力を強化して医務室までガルフを運ぶ……ベッドの上に寝かせるとすぐに目を覚ました。
「う…………ここは何処だ?
キャ…キャメロはどうしたんだ?」
「もっと早く目を覚ましてくれれば助かったんだがな」
「ジン……さんが運んだのか?」
「そうだ……キャメロにやられた後に気を失ったからな」
「無様だな……あんだけ言って負けるなんて……」
「良いんじゃないか……自分の実力を確認出来ただろうし……
頑張ってんのは自分だけじゃないんだよ……努力の量なんて誰も理解できない。
だけど、それを見てもいないヤツが否定したり批難したりする事なんかしちゃいけないんだよ。
今回はお前よりキャメロの方が頑張ってたんだ……次があれば、お前が負けない様に力をつけるんだ」
「今のままじゃ勝てないって事……ですか?」
「そうだな。
特に冷静さを欠いて戦っている様じゃあな……後の方で使っていた魔法剣を上手く使えば、少しは善戦出来たんじゃないか?」
「魔法剣……近接部隊に入ってからは全く練習していませんでした……」
「今はまだ時間もあるだろ?
練習してみたらどうだ?勝ちたい相手もいるからイメージもしやすいだろうし」
「そう……ですね。
次は負ける訳にはいきませんから!
今日は付き合わせてしまってすいません」
その後医務室を後にし、食堂へと向かった。
まだ食事を済ませていない事を思い出したのだ……と、言うより腹が鳴ったからだ。
食堂に着くと、まだ飯を食っているキャメロと出会う。
少し聞きたい事もあったので、正面の席に座った。
「快勝だったな」
「ジンさん!
えらい事になったと思いましたけど、特訓のお陰で勝てましたよ〜」
「全然本気出してもないだろうけどな……」
「味方相手に本気出して戦えませんって……と言うか戦うのも好きじゃないのにぃ」
「そうだな……
ところで、お前の特訓って何やってんだ?」
「思い出したくない事が……」
「そんなにキツいのか?」
「そうですねぇ……サンドラ様の当たり前が凄すぎて、それをやれと言われましても……
それに、出来ないと攻撃が飛んできますし」
なんとなく解る気がする……絶対無理な事をやらせようとはしていないと思う。
それだけキャメロに期待してくれてるんだろう……
「サンドラ様と戦闘訓練なんかするのか?」
「戦闘訓練と言うより、ただ一方的に攻撃されて終わりますけどねぇ……こっちが仕掛ける暇なんて与えてくれませんもん」
「そうだよなぁ……魔法の威力も数も桁違いに強いもんな」
「ですです……ってジンさんはサンドラ様と戦った事があるんですか!?」
「俺も一方的にやられて終わったけどな……溶岩とか反則だぞ、あんなの勝てっこない」
「溶岩って……僕はまだ使われた事ないですねぇ……
って事はまだまだ手を抜いて頂いていてあの強さですか……先が長いですねぇ」
「急にお前がそんなになったらビビるって……
とりあえずはサンドラ様の特訓をきちんとやっていけば、お前はかなりの戦力になる筈だ。
戦の際には仲間を守る為に必要な力だ……頑張れよ」
「期待に応えられるまでになれるか解らないけど、みんなの為に頑張ってみます」
良い面構えになってるじゃないか……以前とは全く違う。
昔のなよなよしい感じは全く見られない、それだけ自分に自信がついてきているって事かもな。
「そう言えば、もう一個聞きたい事があったんだった。
あの魔法の剣は自分で考えたのか?
それとも、サンドラ様から教えてもらったのか?」
「あれは自分で考えました。
サンドラ様と戦闘訓練している時に、火魔法を防ぐ為に考えた剣です。
完成したのは最近ですけどね」
「防御を主として作った魔法の剣か……」
「そうです。
風魔法とか土魔法で防いでも、単純に分裂させてしまって逆に自分を追い詰めるハメになってしまってですね……それならと水魔法で無効化しようとしたんですけど、打ち消す前に他の魔法で消されてしまってたんです。
それで最初は剣の形で対抗していたんですが、風魔法の斬撃と相性が悪く、斬られてしまっていたんですよねぇ……
そこで、幅を広げて斬られた後をすぐに修復出来るようにしたんです」
「戦闘中に考えた魔法か……あれは俺も良い発送だと思ったぞ」
「ありがとうございます!」
発送の転換と、殺されない為の知恵を使って作られたものって事だよな……もしかしたら、技術部隊でも1番役に立つ様な脳力かもしれないな。
「何か魔法で困った事があったならいつでも相談してくれ。
現場に活かせる魔法なんかを創る事が出来るかもしれないからな」
「お願いしますね〜、意見がまとまったら色々と相談させて下さいね」
お互い食事も終わったから、椅子から立上り部屋へと別れた。
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