技術部隊
食堂へと着くと、またも嬉しそうに食事している2人の姿を見かける。
「またえらく食べてるな……朝食でそうとうおかわりして満腹じゃないのか?」
「いやぁ、ここの飯はどんだけでも食えるんだ。
朝昼夜以外にもオヤツを作ってもらおうか」
「食い過ぎだって……食べ終わったらすぐに国王様のとこに行くんだから、食い過ぎて動けないとか止めてくれよ……」
「大丈夫だってんだ!オイラの胃はそんじょそこらのヤツとは違うってぇ事を見せてやんよ」
まだまだ食い続けている……全くどんだけ食うんだよ……
30分程食い続けた後、ようやく箸が止まった。
結局5人前以上は食ったぞ……
「もう満足だろ?
さぁ行くぞ、時間も限られているんだから早く行かないと」
「あぁ…ゲプッ……行くと……するか……」
食い過ぎて相撲取りの様な声になってるじゃないか……忠告を聞かないからそうなるんだ。
2人は急ぎたいが、ゆっくりと歩いている……胃が苦しいらしい。
ようやく謁見の間にたどり着き、国王の前に並び深々とお辞儀をする。
お腹がつっかえて2人は浅いお辞儀をしていた……
「ジン殿、待っておったぞ……それと、ドワーフの方々。
遠いところようこそお越し頂きありがとうございます」
バズ達は緊張しながら、膨れた胃を押さえながら一礼する。
「そう言えばジン殿、前から言っておった技術部隊の件なのだが、明後日から試験かを始めようと思っているが、依存はないな?」
「はい、それで問題ありません。
試験の監督として、2人も協力してもらおうと思っています」
「うむ……私は問題ないぞ、試験に関しては全てそちらに任せておく」
「ありがとうございます。
では明後日の朝から開始するという事でお願い致します」
「了解した。
それでは試験の事はそれでよしとして、兄がまだ帰って来ていない理由を教えてくれぬか?」
「かしこまりました。
それでは少し長くなりますが……」
ドワーフ領土で起こった出来事を細かく説明する……そして、これから協力してもらわなければならない、移住の件や護衛の事を話した。
「なるほどな……それでは兄の自宅の近くに避難してもらう為に、施設や移動の手筈をこちらで用意せねばならぬな。
それでは急ぎ行う様に指示を任せても良いか?適切な人選はジン殿にお任せする」
「解りました。
それではさっそく私は準備に取り掛かります」
「頼んだぞ……ドワーフのお二人とはもう少し話しをしておきたいから、先に向かってくれ」
「はい、それでは失礼致します……」
バズ達を残し、謁見の間から先に出る。
とりあえずリュードのとこに行って、国王の話しをして人選を始めるとしよう……
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リュードのとこに着き説明を終えた後、人選を行う……憲兵部隊と後方部隊の二つの部隊を行かせる様にする。
それに、ライラとフューリーの2名を同行させる。
この2人は前回の件で色々と理解している事が多いし、ドワーフ達が顔を知っているから手間が省ける。
リュードからこのふたつの部隊には説明すると言う事で、俺は明後日からの試験の準備に取り掛かる。
採用したい人物は、手先が器用な者や魔法に対しての知識や理解の高い者、武器や防具の取り扱いに詳しい者といった感じか……
バズ達には一緒にそれを見てもらいながら、鍛冶職人としての意見をもらえる様にする。
それと、魔法の事に詳しい人物を1名起用して、魔法の使いならではの見解も欲しいところだ……それはリレイにお願い出来ないか後で頼む様に段取りしておこう。
とりあえずは面接で確認しておきたい内容を箇条書きして用意する。
後は面接時のパフォーマンスを見て、どうなのかを選定すればいいだけかな……
ある程度まとまったところでリレイの元へと移動する。
今はまだ魔法部隊の訓練中だろうから、そこへ向かっていた……
訓練場に着くと、中で魔法の操作訓練を行っていた。
魔力を使いながら細かな動きをさせている……遠距離での攻撃の正確性の向上の訓練だろう。
奥で眺めながら指示をしているサンドラ様と、リレイの姿を確認する。
先にサンドラ様に断りを入れてからリレイに説明する様にした。
「サンドラ様、訓練中すいません。
ちょっとお話しを良いですか?」
「構わんが、その話しはここで大丈夫か?」
「はい、問題ありません」
「それでは少し壁際まで行こうか」
訓練の邪魔にならぬ様に訓練場の角に移動する。
それから今度の試験にリレイを借りたいと説明を行った……
「妾は大丈夫だ。リレイにもそう伝えると良い」
「ありがとうございます。
では、さっそくリレイに伝えますね」
サンドラ様にお辞儀をして、リレイの元に向かう。
そして、先程の説明を行って可否の確認すると二つ返事で了解してくれた。
それから、2人に一礼して訓練場から出て行った。
とりあえず明後日の準備としては以上かな……後は何人来るだろうか?
前回程の人は来ないだろうから、そこまで日数は掛からないだろう。
だけど、戦闘等の判り易いものと比べ、今回の選定は難航しそうだ……なにせ質疑応答とパフォーマンスで見極めなければならないからだ。
だけど、今後の戦力強化の為に絶対必要な人材を確保する為の試験……適当に人数だけ確保して、烏合の衆では話しにならない。
質がを見極めるのが大きな問題だろうな……
そんな事を考えながら、憲兵部隊の訓練場に戻って来ると、見た顔がこちらに向かって来ている。
「ジンさん……いえ、ジン隊長…助けてもらって以来ですね」
「確かに……アーチだったよな?」
「はいそうです。覚えて頂いて光栄です。
ジン隊長の名前を出したら、試験を我々だけの為にリュード副隊長がやってくれまして、お陰で私は憲兵部隊に採用して頂きました。
本当にありがとうございます」
「いや……良かったな。
他の者も無事に入隊出来たのか?」
「はい、お陰様で皆が入隊する事が出来ました。
それもこれもジン隊長が助けて頂いたからです。
今後は何かあれば何でも言って下さい、いつでも協力させて頂きます」
「そう言ってもらうと嬉しいな。
じゃあ、何かあったら頼む……」
「何でも遠慮なさらずご命令下さい。
それでは私は訓練に戻ります。失礼致しました」
良かった……アーチ達も全員が入隊出来たのか……
あれだけの魔獣との戦闘で誰ひとりとして死者も出さずに、後退していたぐらいだ。
俺が心配する事もなかったな……
その後、憲兵部隊の訓練を視察しながら夕方まで過ごした。
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