召還者
勇者がいる……俺の他にもこの世界に召還された人間がいる……
しかも相対する立場で……
「なぜ勇者が召還されているんだ?」
「は?あんた達を倒す為に召還されたんだよ。
次の攻略戦にはやってくるから、それであんた達は終わりだよ……」
勇者の子孫なら倒したけど、加護を受けている勇者となれば別物なんだろう……
「そうか……それでもやられる訳にはいかないんでな。
次に来るのだけでも解ればどうとでもしてやるさ」
「はははっ……無理だね、そうやって余裕ぶってればいいよ。
余生を楽しむんだね」
「ケイン、コイツを頼めるか?」
「はい……任せて下さい。
じゃあ、しっかり絞らせてもらいますよ」
少年をケインに渡し、その後ケインの部隊の者が引き連れて行った。
「さて、大きな問題が解ってしまったな……」
椅子にかけていたリュードが口を開いた……その表情は硬い。
「勇者ってそんなに強いのか?
俺は勇者の情報をそんなに持っていないから事態を良く解らないんだが」
「サンドラ様の話しは聞いてるだろう……あの方の父は魔族の中でも類を見ない強さだった。
そして、母は精霊の女王……この世界で最強と言っていい程の夫婦だったでしょう。
確かに数はいたでしょうが、その2人を倒したのも勇者です……今の私達が束になっても不可能と思う事を……」
「妾の両親の話しをする許可は誰が出したのかしら?」
「……!サンドラ様!申し訳ありません」
「何故妾の両親の話しを持ち出してまで勇者の話しになっているのかしら?」
話しの途中から開いていた戸からサンドラ様が入って来ていた。
椅子に座っていたリュードは勢いよく立ち上がった。
それから、今までの経緯を説明する……サンドラ様までが渋い顔をしている。
ちょっとヤバいどころの話じゃなさそうだ。
「まだ向こうも準備は整っていない様じゃない。
いつ来るかはまだまだ時間があるわ……戦力の強化に重点を置いて訓練を進めなさい。
だが、勇者に数は無駄な事かもしれないわね……」
サンドラ様が焦っている……初めて見る。
いつも余裕ありありの大きな態度は欠片も見れない……
「勇者の相手は俺がしますよ」
「ジン!無茶よ!
今までとは相手が違いすぎるの」
「ライラ……でも、同じ世界から来た人間だったら話しが通じるかもしれない」
「でも、でも……」
「おぬしに任せて良いか?」
「サンドラ様!それじゃあジンが……」
「ではどうする?
ジンが言う通りなら、話しが通じて戦闘にならぬかもしれん。
それ以外は全滅を招くぞ」
「大丈夫だ……いつも通りなんとかしてみせるさ。
もしも戦闘になっても殺されない様に頑張ってみるから」
「それでは、今まで以上に訓練を迅速に進めていくと言う事で」
「それで良い……決まった以上、ここで話していても何もならん。
各自解散し、訓練に戻れ」
勇者というワードが出てきただけで大事になったな……でも、それだけ脅威と言う事だろう。
俺もそれに向けて準備しとかないとならないな……まずはブラッドとの融合での能力を……
「ジーーーン!
ちょっと良いかな〜、会わせたい人がいるんだけどね〜」
「あぁ、良いけどどうしたんだ?」
「うーんとねー、行ってから説明するよー」
「話し中すまんな、妾からも話しがあるから後で来い」
アリとサンドラ様から呼ばれた……とりあえずはアリの後を付いて行って、その後サンドラ様のところに向かう様になった。
バズとダグをライトに宿舎へと連れて行ってもらう様にお願いして、後で伺うと言って出て行った。
アリの案内でたどり着いたのは施設の外で、ちょっと前にとある人員との待ち合わせに使っていた場所だ。
そこに待っていたのは、その人物だった……
「ようブラン、体調の方はどうだ?」
「お陰様でな、アリに助けられっぱなしだよ」
魔獣化させられてしまったが、アリのお陰でなんとか戻る事が出来たんだ……その後なんとか制御出来る様になる様に努力すると言っていた。
「呼び出した理由は……」
「まぁまぁ見ててーー」
「じゃあ、いくぞ……」
ブランの体が魔獣化していく……前と同じガルーダの様な姿になった。
「意識は大丈夫なのか?ブラン……」
「大丈夫だ……だけど、アリがいてくれないと魔獣化の最中に意識を失ってしまうのさ」
確かに魔獣化の最中に魔力を送っていた様だった……それで魔獣化の際の魔力をコントロールしているのか
「面白い事しているのね……」
後ろを振り向くとフューリーが後ろに立っていた。
全く気付かなかった……フューリーに見られると少しマズい気がした。
「これはな……」
「私達の姿に変身するなんて……どうなってるの?」
まだ説明していなかったのを少し後悔した……早めに説明すべきだったか……
「彼女は誰だ?それに私達の姿って……」
「お互いに説明しよう、まずはフューリーに伝えなきゃいけない事がある……」
ブランの魔獣化とイルニードの事を話す……理解してくれたのか解らないが、少し考え事をしている様だった。
次にフューリーの事を2人に説明する……冗談で言っている訳ではない事は、すぐに理解してくれた……
「そう……なんだ……イルニードがしている事が彼女に関係していると言う事なんだな……
フューリーさんと言ったな、微力ながら俺も力になる……いや、手伝わせてくれ!」
「ふふっ……あなたが気に病む事ではないわ、でも利用させてもらうわよ……ねぇジン」
「あぁ……そうだな、目的が一緒ならそれで良いと思うさ……」
「ジン、お前って彼女とも取引したのか?」
「そうだな、利害関係の一致ってやつさ」
「お前らしいな……だけどそれに俺も乗っからせてもらうぞ」
「じゃあ、3人で頑張りましょうか……」
「わーたーしーがー、抜けてるーーーー」
「いやいや、確かに俺の魔獣化にはアリが必要だけど、巻き込まなくても……」
「私だって、イルニードには怖い目に合わされてるんだからギャフンと言わせないと気が済まないのーーー」
「良いじゃない、多ければ多い程助かるわ……ね?」
「じゃあ、4人で同盟だな……改めてよろしく」
何か急に変な展開になったが、ブランも無事だったしフューリーにもイルニードの事を話せたし、良かったかな……
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