NEXTLEVEL序章
とある国にて…
「国王様、客船パーティの準備が整ったようです。」一人の従卒が報告をしてきた。
「うむ。住民の集合は終わっているか?」
「はい。全員揃いました。」「よし。ならば行こう。お前たちも準備を。」
「はい。」
国王は従卒たちに支度をさせている間に、女王の元へ向かった。
「支度はできたかね?」
国王はやさしくたずねます。
「ええ、ばっちりよ。この子も、もう眠ったようだしね…」
女王は息子の顔をさびしそうに見つめた。
「仕方ない。感染の強い病にかかってしまったんだ。客人にうつす訳にはいかんよ。」
国王もまたさびしそうに息子を見つめた。
「断腸の思いだけど…仕方ないわね。さ、行きましょ?」
女王が促します。
「ああそうだな。我ら『ジーザス家』の威光を知らしめるパーティだからな。」そう、国王は得意げに言った。
そして船の出港時間になった。
「パパ、ママ…絶対帰ってきてね?」
「そんな大げさな、絶対帰ってくるさ。」
国王はこの会話を聞き、足を止めてしまう。
「どうしたの?あなた」
女王が心配そうに見つめます。
「あ、ああなんでもない。さ、乗ろうか。」
二人が船に乗り込もうとしたとき、
「やあやあジーザス。あ、今は国王様か。」
後ろから国王を呼び止める者がいた。国王は振り向く。
「おお!ファゴッドではないか。」
「なるほど、今日出港であったか。」
彼は、国王の友人である。国王は、しばらく彼と会話を楽しんでいた。しばらくすると、船の乗組員が国王を呼んだ。
「どうやら行かなくてはならないようだ。ではな。」
国王と女王が船に乗り込む。国王の友人は、その船を見送っていた。
そして船は海の真ん中に来た。
「我々は、マジシア国全域を支配することができた。それは皆様の協力無しには果たせなかったものであり、とても感謝しています。…」
国王が船の乗客に、スピーチを行っている。その態度はとても堂々としていて、国王の威厳を感じさせた。
「それでは、マジシア国の統一を祝って乾杯!!」
「乾杯!!」
今まさに宴が始まろうとしていた…。
しかしその宴は、地獄へと変わった…。
いきなり大きく船が揺れる。そして鳴り響く、警報の音。
「っ!?なんだ!?」
乗客の皆が慌てる。混乱する。そんな中、放送が入る。
「この乗客船は海賊に襲われました!!皆さん安全を確保するために最下層に避難してください!!繰り返します!この乗客船は…ぎゃああああ!!」
プツン、と放送が切れ、乗客たちは先ほどよりも大きな混乱を起こす。
「皆、落ち着け!!」
国王が叫ぶ。
「一刻もはやく、最下層へ避難するのだ!!」
国王の指示通りに動く乗客。皆が最下層へ避難したことを確認するために最後に入ることにした国王。しかし、地獄はもう目の前まで迫っていた。
国王が最下層への階段を踏んだ瞬間、
刹那
背中に激痛が走る。
「ぐわああぁぁぁ!!」
「あなた!?」
国王を抱き抱える女王。国王の後ろには、海賊がいた。
「うそ…」
抱き合ったまま、階段を突き落とされる二人。
「くっ…ファゴッド…あとは…頼んだ…」
国王は、虫の息で呟く。
「ロイよ…たくましく…育てよ…。」
息子の名を呟くと、海賊が階段を飛び降り、その勢いで、二人を刺し殺してしまった。
その後、海賊たちは一気に最下層に押し込んでくる。
「死んじまえ!!」
乗客を切り捨てていく海賊。それを後ろから、15くらいの少年が見つめていた。
「兄貴ぃ〜眠いんだけど…」
「おいおい、ちんちくりん。まだ始まったばっかだぜ?シャキッとしろよ…。」すると、奥から海賊が慌ててやって来た。
「ヤバイですぜ兄貴!!」
「どうした?」
「奥で爆破装置が起動してて、あと一分しかないんでさぁ!」
「なに?急いで、引き上げだ!!」
海賊たちは急いで逃げ出す。しかし、意外に遠く、なかなか上まで上がれない。「ちいっ仕方ねえ…」
兄貴はちんちくりんをつかむ。
「あ、兄貴?」
「おらよっ!!」
ちんちくりんは上に放り投げられた。
「お前だけでもいいからはやく逃げろ!」
「でも…」
「はやく!」
ちんちくりんは、頬に何かが伝うのを感じた。それを拭い、海賊船に乗り込む。「おいおめぇら、はらくくりやがれ。」
そして、
ドオオオォォォォォォン!!
「兄貴いいぃぃぃ!!」
船は大破した。乗客と海賊を丸々。それは港からも見えた。
「あの爆発はっ!?」
その瞬間、国王の友人は全てを悟った。
「ジーザスぅぅぅぅぅぅ!!」
その横で、泣きじゃくる少年。彼は先ほど両親と必ず帰って来ることを約束した少年であった。
…一方城内では、
「国王が…」
いきなりの訃報に沈黙する従卒たち。そこに、王子がやって来る。
「あれ?みんなどうしたの?」
「王子様、気を確かにお持ちください…」
従卒はひとつ呼吸をおき、
「国王様と、女王様が亡くなられました…。」
それを聞いた王子は、その場に倒れこんでしまった。
この事件を皮切りに、この国に混沌が、巻き起こされるようになる…