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フラグを無視して逢いに行こう  作者: 竜胆千歳
第七章 愛のために戦え
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4話 本気で遊ぼう夏休み

 何とか美伶が考え出した譲歩案は、言う事を聞く権利を賭けてゲームをし、勝ったら負けたチームの権利をもらえるというもので、絶対数を減らすのを諦め、信用出来る人に多くされた方がマシと美伶が判断した結果だ。


「イジる側が何回も言う事を聞くだけでもキツイだろうから、まあ良いかな。戦力が均等になるように決めて、3-3で対決。水球の様なゲームで斐文君や僕がキーパーをするか、フィールド選手でゴールすれば得点3倍ってすれば良いと思うけど反対意見は?」

「手が大事だから相手の接触禁止にして、パスも直接出さないで完全に止まってからじゃないと触れないって追加ルールにしてくれ」


 これは全員一致で採用された、ケガをする程激しい事をするメリットが無かったからだ。


「はい、じゃあミーさんは除外すると男女比が4対2なので、体力的に近い人同士でじゃんけんして決めようか。──ぶっちゃけるとヒデちゃんと玲央さん、僕と斐文君、サクランと飛鳥さんでじゃんけんしてください、──僕の認識は間違って無いと思うけど異論は?」

「「「「じゃんけんポン!」」」」


 異論が出ず、海と斐文以外いきなりじゃんけんをし、チームが決まった。


「はい、白のヒデちゃんサクラン斐文君チーム対青の玲央さん飛鳥さん僕チームで試合だね。審判は虎太郎さんにお願いします」

「分かった、お前らケガしたら練習出来ない分勉強をしてもらうからな、絶対にケガをしないように。キーパーはポジションについて、最初は白チームから、前後半5分合計10分で後半は青チームからのボール。ボールはゴムボールだが油断するな。──それでは試合開始!」


 プールは足が付いて胸元まで水が浸かる程の深さ、さくらと海がキーパーで残りはフィールドプレイヤーという布陣で、秀章がボールを手渡され試合が始まった。


「アヤ、ゴール近くまで行ってくれ!!」

「呼び捨てで命令するなんて良い根性しているね、──まあ勝負に負けたくないから付きやってあげるよ」


 斐文がゴールまで行っている間に玲央がチャージをかけてきた。


「30秒まで持っとったらこっちのボールだもんで、投げさせんからな」

「三河出身だろ? 絶対負けないからな」


 ケガしないように拳を握ってプレッシャーをかける玲央に、秀章は動きに緩急をつけて抜き去った。


「えっ、嘘!?」


 慌てて追いかける玲央に見向きもせず、余裕で斐文の目の前にボールを投げてパスを成功させた。


「ホントに良い仕事するね、決めさせてもらうよ」

「待ってもらいましょか、アヤだけには負けへんよ」

「──うわっ!」


 飛鳥が水をかけて斐文をひるませた隙に、ボールを奪い玲央にパスをする。──が、秀章が上手くカットしボールを奪い返した。


「この距離なら余裕だ」


 秀章はコートの真ん中付近からややコントロール重視で投げ、海がボールに触れるもそれをはじき、ゴールを決めた。


「キーパー、グーして防がんとあの肩だったらはじかれるからだちゃかん、ケガするに」

「すいません、頑張ります」


 玲央のアドバイスを受けた海はその後なかなか良いセーブを連発し、その後の得点を許さず試合は膠着状態に入り前半を終えた。


 そして後半に入ると、玲央が猛攻撃を仕掛けてきた。


「ここでアヤのメンツをぶっ潰すチャンスら、サク、退いてくんないとどえらい怒るかんな!」

「わたしだって、美伶ちゃんに言う事を聞かせるチャンスをむざむざ逃しません!」


 さくらも必死にゴールを守るが、何度もシュートされ、3点取られてしまった。


「残り1分! ケガするなよ!!」


 秀章は自分のゴール前に来て、さくらに耳打ちをした。


「さくら、斐文のハンデを利用した作戦を言うぞ……頼むな」

「ええっ……でも、このままじゃどっちみち負けますよね……分かりました」


 時間が少なくなり、秀章はハンデで得点3倍の斐文に決めてもらうべく、瞬時に動き出した。


「レオは守備も出来ないからライオンじゃなくて、猫野郎だな。悔しかったら俺を止めてみろ」

「そこまでおちょけた事こかれたら、オレやって容赦せんからな」


 秀章の挑発に玲央が乗ってしまい、ゴール左側ががら空きになった。


「獅子を誘い込んだらまずは上出来だな──ほらさくら!」


 秀章が玲央を誘い込んでいる内にさくらが一気に左側へ移動し、パスを受け取った。


「1点取られても勝てるからあんきしてれば良いんよ!」


 飛鳥は斐文のマークを外さず、1点は捨てる覚悟で叫んだ。


「マークの邪魔をしてはダメってルールは無かったから、別に良いですよね?」

「なっ……邪魔しないでどいてや!」


 玲央のマークを振り切り、斐文のマークを外させる手伝いをした秀章に飛鳥は驚いている隙に、斐文はマークを外し、玲央が戻り切らない内にさくらからパスをもらった。


「甘く見るなよ、モヤシ君!」


 斐文のシュートはネットを揺らし、鮮やかに逆転を決めた。


「ピィーッ!! 白チームの勝利!」


 直後に虎太郎が笛を吹いて試合終了を告げた、鮮やかな逆転勝利に青チームは脱帽した。


「ヒデちゃんにやられた……」

「挑発に乗って負けたん、どえらい腹立つわー」

「向こうの作戦勝ちや、そこまでされたら勝てられへんな」

「どっちみち負けるなら、やれる事はやってから負けた方がスカッとしますからね」


 秀章は何食わぬ顔で言ってのけ、青チームに握手を交わした。


「よし、このまま良い感じで終わったから帰ろっと」

「景品は勝手に帰らないぞ、ここで待ってろ」

「見逃してよオジサン!」

「オジサンだけどそれがどうした?」

「この鬼! 悪魔! パワハラ親父!!」

「大人になると悪口も聞こえないから楽チンだ」


 こっそりいなくなろうとしたのが虎太郎にバレて、動きを封じられた美伶は悪態をつきながら抵抗を諦めた。

 そして、着替え終わった後に勝利チームの3人に約束の命令権の書類を渡されたら、斐文が海に突き出してきた。


「アイツに勝ったので十分だから、割と頑張ったモヤシ君にあげるよ、ボクが持ってても使わないし」

「ありがとう、──やっぱり実の姉に勝ちたいのって、どこの家庭でも一緒だね」

「!!」


 海は頭を下げて受け取り、珍しくニヤリとした笑い方で斐文にカマを掛けた。


「……やっぱりね、さすが服部さん。良い仕事するね」

「はぁ……どこまで知っている?」


 諦めて両手を上げた斐文に海が答える。


「関西の有名旅館の主人さんが、子供が生まれて間もないのに東京で浮気をしてゴダゴダした結果生まれた子供の話を聞いただけだよ。非公式の話で噂程度に思っていたけど、確信したのは顔の雰囲気と──1番は耳だね、そこは特に似ていた」

「耳まで見ているなんて良い趣味だね、探偵でもあるまいし」

「これでも観察眼は父親にがっつり鍛えられているからね、プロスポーツの司令塔だったからなおさら凄かったよ」


 あきれながらも毒を吐いた斐文に、海は丁寧に頭を下げる。


「──で、何が言いたいかと言うと、虎太郎さん程じゃないけど裏話があったら出来る範囲で教えてあげるよって話だね、その代わりさくらの事をよろしく、彼氏が不安がっていたから。後、情報屋って口の堅さが重要だから、この情報は公になるまで黙っておくよ」

「……同年代で姉貴程喰えない人はいないと思ったけど、考えを改めるよ」

「褒め言葉として受け取っておくよ、我が家の家訓は『狡猾な人格者たれ』だからね」

「家訓を実践している訳だ」


 海の家訓に思わず苦笑いした斐文は、さくらの交友と人柄に評価を積み重ね、したたかな協力者を手に入れた。


 

玲央のセリフの訳

澪に言ったアドバイス

「キーパー、グーをして防がないとあの肩だったらはじかれるからしてはいけないよ、ケガするから」

玲央がさくらに言った言葉

「ここでアヤのメンツを潰すチャンスだ、サク、退いてくれないとものすごく怒るからね」

秀章の挑発に乗った時

「そこまでふざけた事いわれたらオレだって容赦しないからな」

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