閑話2 新たな一歩
遅くなってすいません。機械が苦手なので、予約機能を使って編集していっているんですが、予約解除を忘れてました……。
今回ちょっと深めのキスシーンがあります苦手な方はご注意下さい。
「本当に千榎のレベルも凄く上がってきているよね、どんな声でも思いのままだよ」
「いや、もっと上を目指さないと、声の仕事だけでご飯を食べれる一流の声優になったとしても、その気概をなくしちゃいけないから、ダメな所はどんどん言ってね」
今は千榎の話が終わった所で、本人は全然怖がっていないのだが、せっかく海が来ているのに1人で行くのはもったいないという事で、付き添いを頼んで一緒に来てもらっている状況だ。
「将来的に声優になりたいって言ってたけど、声の技量はプロと遜色が無くなっているレベルには来ているよ、後はその人になり切る心とその切り替え、それはもっと鍛えないといけないと素人目では思う、まだ技術だけで誤魔化している所があるから、気持ちが入れば日本を代表する声優になれると僕は自信を持って言うよ」
「うん、本の読み込みや気持ちの意識も持ってやってみるよ。今度チェックしてね」
「頑張ったらご褒美あげるから、練習ちゃんとしてね」
海は基本人に指摘はしない、相手のプライドがあるし、自分からわざわざ言っても聞かない事が大半だからだ、故にその人をじっくり観察し、相手から教えて欲しいと言ってきた時に自分が観察して感じた事をしっかり言う。これは秀章も同様にチームメイトに行っている。
「ところで千榎って、怖くないのに僕を付き添わせたよね」
「えへへ、ばれちゃった。だって海と一緒に暗い場所で度胸試しとか一緒にしたかったから」
千榎の明るい笑顔は暗い場所でも澪にはしっかりと伝わり、耐えられなくなった澪は深い口づけを千榎に浴びせた。
「んっ……澪……」
「千榎……はぁ……」
すぐ近くの部屋に大勢の人がいる中で、2人はしばらく互いを求めあう様にキスを交わした後、海はやがて口を開いた。
「千榎と関係を進めるのは、もうちょっと大きくなってからにしたい」
「どうして……?」
火照った顔をした千榎が不安がっていると、海がギュッと抱きしめた。
「千榎は大事な人だから、たとえ安全管理をしていても子供が出来たり病気になったりしたら夢を掴むチャンスが減っちゃうから、夢が叶わない辛さは千榎には分かって欲しくない。だから僕は待ってる、千榎が一人前の声優になって僕もプロ野球審判で家族を養えるまでになったら……その時は激しく愛してあげるから」
千榎が更に顔を熱くさせると、海はそれにと付け加える。
「タカ父さんとメグ母さんは10年近く待ってたんだ、その子供の僕がそれ位まで待てない訳がないよ」
「海……。──ウチも一途な父さんと母さんの子供だから、別れようなんて考えないでね」
2人は声を出して笑い、ロウソクを消して皆の元へ戻っていった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
怪談が終わり、ビビっていた五十鈴を怖いからという大義名分で連れ出して内心笑っている春人は、五十鈴に物凄い勢いで睨まれていた。
「先輩、怖い顔しないでくださいよ、俺怖いから先輩を連れ出したんですよ」
「貴方さっき怖い話を喜々として話していたのに、それはないでしょ!」
「ええっ、そうでしたっけ?」
素知らぬ顔をして五十鈴の抗議を無視した春人は、突然悶え始めた。
「ちょ……どうしたの!?」
「お願い……殺さないで……うっ!」
床に倒れた春人を、慌てて抱き起し、脈を調べているが止まっていた。
「嘘……まさか本当に……」
「くくく……若い体に乗り移ってやったぞ──ちょうどいい、うら若き乙女を生贄にしておこう」
「ひっ……!」
突然人が変わった様に襲い掛かった春人に、五十鈴は何も抵抗出来ず身動きを封じられ、声を上げようとした。
「怖かったですか、先輩?」
「…………ふぇ?」
五十鈴は春人の顔を見てみると、イタズラが成功した時の小僧の顔をしていて、それを見た五十鈴は、何かがはじけた。
「ふふふっ……いい加減にしろぉぉぉぉ!」
「!! ちょっ……うわわわわわっ!」
身動きが出来ない状況から、足の甲を踏みつけて相手がひるんだ隙に逆に春人の動きを封じてしまった。
「パンツにメントール入りスプレーを吹きかけて放置するからね!」
「お願いします、許してくださいぃぃぃ!」
調子に乗ってとてつもない反撃にあった春人は、本当にズボンを脱がされ大量にスプレーを吹きかけられた。
「ううぅ、あっ、本当にスース―する……」
「ごめんなさいお姉さまと言って服従するなら、許してあげるわ」
「ぐっ……そんな事……」
しかし、時間が経つにつれて、春人は苦しくなってきた。
「……ごめんなさい、お姉さま……」
「分かったわ、一回部屋に戻って事情を説明して下着を変えてもらいなさい」
春人は拘束を解かれると、すぐさま皆がいる部屋に戻り、事情を説明して海の下着を借りて戻って来た。
「酷いですよ! イジメです、先輩の事見損ないました!」
「何言っているの、貴方こそ人の嫌がる事して! 冗談じゃないわよ」
お互いの不満が爆発し、遂に言い争いになった。そこから10分以上も口論が続き、秀章と美伶が2人を止めに入ってきた。
「2人ともいい加減にしろ、美伶の話がまだ終わって無いのに何時までケンカしているんだ」
2人が抗議の声を上げようとすると、美伶がそれを制す。
「春人の事だから、イタズラして泥沼化しちゃったんだろうけど、やり過ぎるなって何で分からないかな」
「そうよ、怖かったのに酷かったんだから」
「だからと言って反撃もやり過ぎじゃないか?」
五十鈴がここぞとばかりに口撃しようとした所を、秀章が窘める。
「7対3で春人が悪い、だが、戸沢先輩の反撃は客観的に見ても良いものとは言えない。互いに反省するべきだ」
まだ燻りが残っている状態だったが、2人とも聡明なので、ひとまず矛を収めた。
「これからは暗い所ではイタズラは控えますね、先輩」
「分かったわ、アタシも迎撃する事にするわ」
「……仲が良いね〜」
「「全然良く無い!!」」
美伶が茶化したのを、綺麗にハモった辺り相性はそこまで悪くないのではないかと思った秀章だった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「2人とも仲が良かったね〜」
「2人が思っているより仲良しだと思ったな、ケンカするほど仲がいいタイプだな」
最後のロウソクを消しに行く美伶は、全く怖くも何とも無かったのだが、イタズラ好きなので監視の目を付けて欲しいと海が言った時、本人が文句を言いながらも否定しなかったので、付き添いでは無くトイレに行く犯罪者と警官といった感じで2人で行く事になったのだ。
「ペアの時の組み合わせはインチキっぽかったし、今回の百物語は恋愛応援の一環と見たね」
「……それを分かった上で、参加してくれてありがとうな」
「ううん、いいよ別に。秀章と一緒に居ると凄く楽しいからさ」
でもね、と美伶は嬉しそうな秀章に釘を刺す。
「戸沢さんも叶さんも、私以上に綺麗だったり可愛かったりするのに、私が良いなんてまだ信用出来ないよ」
秀章は少し残念な顔をしつつも、何とか笑顔を作る。
「まだ決めないでも良い、でも、嫌いだったらちゃんと言ってくれ。ちゃんと受け止めるから」
「そんな事無いから! 秀章の事を1度も嫌いになんて……」
そこまで言って自分の言った事に顔を真っ赤にした美伶は、秀章を振り切ってロウソクを消しに行った。
「もしかしたら……いや、まさか……」
相思相愛かとほのかな期待を持ちつつ、期待し過ぎないようにと、何とか冷静さを保とうとした秀章だった。




